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2007.07.12

『忌憶』読了

02761124
忌憶』(小林泰三/角川ホラー文庫)読了。

洋伝社文庫で刊行された『奇憶』に書き下ろし2編を加えた中短編集…でよいのかな。ホラーのくせに量子力学バリバリで理系的な想像力を駆使しつつ悪趣味な結論に落ち着くと言うまさに小林泰三らしい作品でございます。いやんいやん(←バカ)。とにかくやたらと面白い。小林泰三を読まないのは、人生の何分の一を損していると思うね。

「奇憶」
再読。相変わらず主人公の駄目人間ぶりのあまりのリアルさに驚愕。現実を拒否しようとする心が生み出す幻想譚…のように見えて、平行世界と量子力学的な領域につっこんで語られ、なぜかそこにクトゥルー神話が挿入されつつ驚愕のラストを迎えていく。いやー相変わらず素晴らしく厭な小説だなおい。


「器憶」
まーこれまた駄目人間の描き方が完璧でありますけれども、まあそこはあまり主題にはなっておりませんなあ。結局、自分が自分であると言うことを証明する手段と言うのは多くはなくて、それが失われていくと言うのは恐怖なんだけど、それ以前にこいつら(主人公と恋人)はいろいろなことに無頓着過ぎると言うか、悟りを開きすぎだ!い、いや、確かに彼が彼であると言うことを証明する手段が無い以上、人間なんてどんな姿をしていても、その人ではないと言うこともまた証明できないわけだけど。しかしなんと言うハッピーエンド…。

「垝憶」
あー。えーとね。これ傑作でございます。こうやって傑作傑作と連呼するとありがたみがなくなっちゃうけど、これを読んでしまっては言わざるをえない。これはいわゆる前向性健忘症(長期記憶が出来ず、数分間しか記憶が持たないと言う映画にもなった例のアレ)をモチーフにされていて、これまた人間を人間たらしめるのは、その人間の残してきた足跡、言い換えれば存在意義と呼べるものであると言うことにまつわる哲学的な考察を、小林泰三の悪趣味で邪悪で残酷な筆致でサスペンスフルに描きぬいたこの作品を傑作と呼ばなくてなんだと言うのか。なんだと言うのか!(2回も言うな)

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