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2007.07.07

『GOSICKs Ⅲ 秋の花の思い出』読了

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GOSICKs Ⅲ 秋の花の思い出』(桜庭一樹/富士見ミステリー文庫)読了。

相変わらず武田日向氏のイラストが素晴らしい。思うに武田日向の絵は単に可愛らしいというだけではなく、濃密で奥行きのある空間の描写が深く、思わず目が引き込まれる力があるように感じられる。ライトノベルの挿絵をやっているイラストレーターで背景が素晴らしく描ける人ってほとんどいないけど、武田日向は数少ない例外であると思う。

それはともかく。

少年が花にまつわる物語を少女に聞かせ、少女がその物語の隠喩を読み解き、そうして生まれた感慨を二人で共有する。その様式があまりにも美しくて、少年に恋するもう一人の別の少女が、その二人の世界に入り込もうとしようとしても、どうしても入り込めずに排除されてしまう姿にすら象徴的な美を感じずにはいられない。かようにこの作品は、一つ一つの挿話ではなく、それら挿話を語り語られる少年と少女が生み出す世界こそが主眼であろう。どこまでも細緻に、まったき美に支配されたその空間は何者の進入も許さないのだが、しかし、その世界は外部の侵攻による危機もまた迫っている。それはアブリルによるものもあるが、何よりもコルデリア・ギャロの存在が大きい。彼女の存在は、その好悪に関わらず、二人の世界からは明らかな異物として存在し、外界の象徴である。彼女の登場により、おとぎ話めいた二人の休暇は終わり、再び現実に帰還することが実感として感じられるのだった。二人のバカンスはこうして終わりを迎え、再び、彼らは大いなる嵐に直面していかなくてはならないのだ。幸福なおとぎ話と、その裏側に存在する冷たい現実。彼岸と此岸の交流を軽やかに、そして美しく描かれたこの作品は、素晴らしい幻想小説の片鱗すら伺える。読み終えた僕はただ嘆息をつき、現実に帰還するしかないのだった。

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受信: 2007.07.08 10:51

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