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2007.06.12

『セカイのスキマ(3)』読了

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セカイのスキマ(3)』(田代裕彦/富士見ミステリー文庫)読了。

今回は怪異そのものへのアプローチは控えめで、どちらかと言うと主人公とヒロインの関係に視点があたっている。相変わらず”他者”への無関心さ(未熟さ?)を抱えた主人公と、過去の出来事ゆえに他者と言うものを恐れるようになったヒロインは、言わば同じカードの表裏であろう。違いがあるとすれば、彼女は”誤って”、彼は”誤らなかった”だけなのだ。同類であるがゆえにお互いを求めるが、しかし、求める方向性がまったく異なる二人はいつまでもすれ違う。周囲の人間はそのすれ違いに気がついていても、本質的な部分が理解できず、二人の世界は孤独のままだ。そのすれ違いがある以上、おそらくはこのラストは不可避のものであったのだろう。物語を解決すること。事件に決着をつけること。それは一体誰のためで、何のために行うのか。すべてに”正解”をもたらす主人公は、最後の最後についに”誤る”。それは”己”のみで”他”を振り返らなかったものと、そうでないものの差であるのだろう。ついに彼は彼女を失うその瞬間まで”他者”を理解しようとしなかったのだ。すべてを失った彼は、自己に埋没するのをやめ、周囲に目を向けるようになる。それは単に社会性を獲得する行為であるだけに留まらず、彼女の為そうとしていたことを引き継ごうと言う行為であり、彼女の存在を風化させないために必要なこと。”己”のみで存在するのではなく、”他者”と繋がって行くと言うこと。それこそが、彼が”彼女”を決して失わないための決意であり、希望そのもののように、僕には思えるのだ。

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