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2007.06.28

『龍族 創世の契約(1)』読了

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龍族 創世の契約(1)』(花田一三六/C・NOVELS Fantasia)読了。

おおお、これは良い花田一三六だ!龍族を頂点とした厳密なヒエラルキーが確立されている世界における、ある街を舞台にした連作短編集になっている。短編ごとに主人公が異なりながらも、それぞれの登場人物たちは時には密接に、あるいはそこはかとないつながりを持ちつつ、さまざまな事件が語られているのだけど、やはり花田一三六は短編がムチャクチャうめえ!と言うことを再認識させられた次第だった。花田一三六の作品における登場人物の格好良さと言うのは、実のところいわゆる”ヒロイック”な物ではなくて、むしろ日常に根ざした、地に足がついた人間の持つ誇りを描いているところが特徴だと思う。まさにこの話はそれが十全に表われていて、何しろそれぞれの主人公が、出国審査官だったり、酒場の親父だったり、やり手の女銀行員とその執事だったり、若手新聞記者だったりするのだ。しかも、決して超人的な能力も持っているわけでもなく、普通の意味で有能でこそあれ、単なる一般人でしかない。そんな一般人の物語がまた大変面白いのである。それぞれに自分の仕事に誇りを持ち、信念を持って生きていた職業人たちが、さまざまに事件に巻き込まれたり、時に自分から事件に飛び込んで行きながらも、事件を通じて得た痛み、実感、思い出などを受け止めていく姿を描いているのだが、その過程における自らの信念、それも別段大袈裟な葛藤を経て得たものではなく、日常を生きる中で培ってきた信念で立ち向かう姿がたまらない。決して偉大でもなければ格好良くもなく、むしろ泥臭いそれらを、花田一三六は完結に、無造作にさえ見える無骨さで持って切り出している。そこには荒削りで不恰好な、しかし、たまらない美しさに満ちている豊かさがあると思うのだ。

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