『夜は短し歩けよ乙女』読了

『夜は短し歩けよ乙女』(森見登見彦/角川書店)読了。
まあはっきり言って駄目駄目ですねこれ。もう何が駄目って全般的に駄目なんですが、もっとも駄目な点をあえて上げるとすると、読む前から傑作だと分かっていて、実際に読み終えた後にやっぱり傑作だった点がもっとも駄目。意外性が全然ありません。この作品が傑作ではないなんてことはありえないことなので、仕方がないといえば仕方がないのだけどね。ちなみに一番駄目なのは読み終えた後のオレ。人間として回復不可能なほどぐにゃぐにゃになっております。
なおこの作品がどれくらい傑作なのかについては、なぜか角川のHPに特集が組まれているので覗いてみるとわかるかと(ここです)。やたらと理屈っぽい先輩の妄想でヒネクレまくった純情と、超マイペースな愛に満ち溢れた黒髪の乙女のコラボレートを見よ。これをキュートと言わずしてなんと言う?
なんかこの本、とっくの昔に感想を書いているような気がしていたんだけど、まだ書いていなかったことを今頃思い出したんで、本当に今更なんだけど書いておこう。以下各話感想。
「夜は短し歩けよ乙女」
表題作であり、かつて恋愛短編集「Sweet Blue Age」にも収録されていた作品。感想も書いているので我ながら今更何を語ればよいのかと言う気がするのだが、とりあえずこの話は傑作であることには違いはありません。愛に満ちた”おともだちパンチ”を奥の手に、偽電気ブランと言う幻の酒を求めて夜の町を歩き続ける黒髪の乙女と、彼女の後姿の世界的権威である先輩がその後を追う過程で出会う不思議怪々摩訶不思議な出来事と人々が実にファンタジック。どえらいファンタジーじゃぜ、これは。
「深海魚たち」
言うまでもないことですがこの話も傑作です。古本市は良いとこ一度はおいで、と言う感じで古本市のお話です。あの喧騒と古い紙の香りに郷愁を感じつつ、先輩が求めるのは黒髪の乙女。彼女にええかっこを見せてあわよくばラブラブになりたい、否、なって見せようとあまりにも男らしすぎる決意をした先輩が求めるのは一冊の絵本であって、絵本を求めて学者や天狗や仙人や神様さえも巻き込んで(巻き込まれて)七転八倒七転び八起き。駆けずり回ってたどり着いたところにいるのは黒髪の乙女。かくして物語はあるべき人のところへ届いたのであった。
「ご都合主義者かく語りき」
言ってもしょうがないことですけどこの話は傑作です。ええ、こればかりは物理現象なのでどうしようもないんですよ。諦めてください。どれくらい傑作かと言うと偏屈王とパンツ総番長と韋駄天コタツが出てきて演劇テロと逃亡者で純情とラブのお話と言うぐらいに傑作です。いつものように彼女と言う名の城の外堀を埋める日々を送っていた先輩が相変わらずに妄想と言う名の純情をきらめかせ、黒髪の乙女は緋鯉を背負いたゆまず歩き、どこかの誰かが演ずるあまりにもご都合主義劇場の幕は開く。超キュート、グレイトにピュアなお話です。
…ふう、この作品を要約するのも大変だぜ。
「魔風邪恋風邪」
誰もが言っていることですけどこの話は傑作です。トゥー・ピュア・ピュア・ボーイアンドガールが風邪によって滅亡の危機に瀕した京都のために立ち上がる!ボーイはあっさりと風邪に倒れ熱に浮かされ偲び泣く。「ひとりある身はなんとせう!」。ガールはいつものようにたゆまず歩き、風邪の神様なんのその。風邪の神様だって彼女のキュートさには恐れを抱く。「ひとりある身はなんとせう!」。彼と彼女はそれぞれに在り、それぞれを思う。妄想と下心と熱に翻弄される先輩を残し、黒髪の乙女は本の神様からもらった潤肺露を手に事態の中心に雄雄しく挑む。「合点承知でございます」。かくしてかくして彼と彼女は、事態のクライマックスで、世界の中心で出会っちゃうのである。とんでもなく劇的で、とんでもなくバカバカしいその中で彼女は言う。「奇遇ですね」。熱に浮かされながら彼は言う。「たまたま通りかかったものだから」。ビバ!ピュアボーイ、ピュアガール!
まあ、そんな普通のおはなしです。
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