『空色ヒッチハイカー』読了

『空色ヒッチハイカー』(橋本紡/新潮社)読了。
世間の事なんて何にも分かっていない少年が、旅に出るお話。すげー健全極まりない話だなこれ。文部省認定小説にしてしまってもいいくらいだ。でも教導小説にありがちな説教臭さが全然なくって、旅の過程で主人公の中に自然に積みあがっていくところがいいよなー。こういう旅ってのは、旅をするべき時があって、いい加減、無駄に年を食ってくると分かってくることがあるんだけど、主人公の彰二がこの時に旅だ出来たということそのものが実に素晴らしいことなんだなあ、とか思った。何にも分かっていないからこそ、行き先も見えない旅は未知なるものへの期待と不安があって、旅の途中で色々な出来事に出会っていくことの喜びや痛みが非常に貴重なものに思える。出来事そのものは全然劇的でもなければロマンティックなものでもないけど、少年が引かれたレールを歩くだけじゃなくて、自分の意思で、判断して、決断をすると言う行為を学んでいく、と言うか実践していく過程を描いているんだよなー。まあ、自分の人生を生きましょう、と言うものすごい陳腐な言葉に集約されるんだけど。その過程の描き方がものすごく上手いんで、読んでいてすげー爽やかな気分になれる。読書に没入し、嘘っぱちのはずの人生を追体験させられるっつーか。いやーすげえ作家だなー橋本紡。
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