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2007.01.14

『アンダカの怪造学Ⅴ 嘘つき魔女の見つめる未来』読了。

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アンダカの怪造学Ⅴ 嘘つき魔女の見つめる未来』(日日日/角川スニーカー文庫)読了。

…日日日のライトノベルが全然面白くない理由が分かったような気がする(いきなりなんだ)。

僕が感じるところ、日日日の書くお話には、根本的にビルドゥンクスロマンが欠けている、と思う。アンダカの怪造学というお話は、「怪造生物と人間は友達」という理想を掲げた主人公が、いろいろな現実にぶつかり合いながらもその理想を貫こうと言う話であり、そこには必然的に現実と理想とすり合わせがあり、葛藤が生まれ、主人公の成長を促していくと言う流れがあるはずなのだ。ところがどういうわけか日日日の書くキャラクターは“成長”と言うものが全く見受けられないのである。主人公の衣依は、その「怪造生物と友達」という理想を阻む現実(たとえば「怪造生物を道具だとみなす怪造学者」や「実際に人間に危害を加える怪造生物」など)と遭遇しているのだが、彼女が事件に遭遇し、いろいろと迷い、その事件を遭遇した後になにが残ったのかと言うと…これが何にも残っていない。少なくとも、彼女の行動原理に事件前、事件後を通じて変化は全く生じておらず、ただ大変な事件があった、と言うだけでしかない。理想を実現するための現実的問題を克服するでもなく、彼女自身の成長が僕には見えないのだ。成長、と言うのもいろいろと定義が難しい言葉ではあるが、少なくとも彼女の理想を現実的手段としての妥当性を獲得していくことが、物語の要請として不可欠なものであると思う…と言うのは僕の価値観でしかないのだけどね。ただ今回の話では、まさに彼女がその現実的な手段を模索していく話であったのだが、だからこそ主人公の変わらなさがはっきりと目立ってしまうように感じられるのだった。

そもそもこの主人公は怪造生物は友達と言っておきながら、その友達を使役することに何一つ罪悪感を感じて入る様子は無く、これでは本当に単なる偽善者でしかない。厳しい言い方だが、悪意無く建前を信じ込んでいるがゆえに性質が悪いとさえ言える(結局彼女のやっていることは単なる言葉に過ぎず、それで何かをした気になってしまうのはあまりにも無責任すぎると言うものだ)。

この作品を単なる萌え小説として消費するのはかまわないけれど、差別とその融和の物語としてはあまりにも幼稚であり、その意味では僕はこの作品を全く評価出来ない、と言うことだけはここに述べておく。独りよがりな意見はやっぱりいけないと思うので、偉そうな言い方で恐縮ではるが、日日日には真の意味で自分以外との『対話』と言うものを行って欲しいと思う。

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