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2007.01.17

『DDD1 Decoration Disorder Disconnection』読了

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DDD1 Decoration Disorder Disconnection』(奈須きのこ/講談社BOX)読了。

奈須きのこ待望の新作である。待ちに待ったと言っても過言ではないほどの奈須きのこ信者である吉兆さんとしては、この作品をなめるように味わいつくし、大変に面白がることが出来、堪能させていただいた。謝謝。

まあ信者としての発言は冒頭だけにして内容を客観的に判断させてもらうと、相変わらず小説としては無茶苦茶なことをやっていてびっくりしてしまった。いやはや、連載が始まったころは、奈須きのこもまともな小説を書くようになったもんだな、とその読み易さに感心したものだがさにあらず。改めて読んでみたらとてつもなく読みにくい上に分かりにくい伏線を張り巡らされたケッタイな小説が出来上がっておりましたよ。

なんと言うか、一読しただけでは何を騙されたのかさえ分からないと言うのは小説としてはどーなんだ。たとえば第一話は時系列を意図的にバラバラにして分かり難くしており、様々な伏線を張り巡らされているのは分かるのだが、その伏線がどこにつながっているのかを理解させるのを妨げている。ユキオとアリカの関係やアリカの症状など、”作中できちんと語られていない設定を読み取っていないと理解できない”展開を平然と行うところが奈須きのこの恐ろしいところだよなあ。行間を読まないとオチが分からない小説なんて良く書けるもんだぜ…。奈須きのこは読者の知性を信用しすぎていると思うのだが、正直なところなんでこんな作家が幅広い支持を受けているのか理解に苦しむ…。僕は大好きなんだが、およそ一般受けはしそうもない作家性である事を改めて実感した思いだ。これは武内崇が偉かったということなのかもしれない。

しかし、奈須きのこの凄いところと言うのは、まさしくその点であるとも思う。と言うのは、奈須きのこはおよそエンターテインメントとは真逆の性質を持つ作家であり、明らかに読者に対して不親切さと同時に過剰なオレ様設定(パピヨンと言ってもいい)と描写もへったくれも無い説明台詞など”小説”としてはやってはならないことを山ほどやっておきながら、それらが組み合わさると何故か小説として成立してしまっているところにある。本当に読むたびに不思議に思うのだが、なんでこれで面白いのか読んでいる自分こそが一番不可解である。奈須きのこの作品を読んでいると、フォームもペース配分も出鱈目な素人が持って生まれた身体能力だけで世界新記録を出してしまったか場面を見てしまったかのような理不尽さを感じるのだった。

さて、話はまったく変わるのだが、第二話にあたる「HandS(R)」(このタイトルも2回読み返して初めて分かった…。頭悪いなあ…自分)だけど…これおかしくねえ?えーと何がおかしいのか具体的に指摘するとネタバレになってしまうので言えないのだが、要するに義手が左手用じゃん?ね?おかしいでしょ?(これ以上はとても言えない…)(追記)ん?…いや、左手用と書いているだけだから、おかしいわけじゃない…のか?あれえ?(混乱)

さてさて、またまた話は違うのだが、個人的には書き下ろしにあたる第4話が一番好きですね。例によってまたしても何を語ってもネタバレなのでなにも話せないのだけど、これって要するにエピローグのマトさんの台詞がすべての作品なんだよなあ。はっきり言って、そのマトさんの台詞以外は全部おまけみたいなもので、その台詞を言わせるためだけにこの作品があるといってもいいと思う。しかしながら、それ以外がすべて無駄なのかと言うとそうではなく、ただ一言(行数にしてもほんの3行)を言わせるためだけに短編一つを費やすと言う行為そのものが、その一言の重みに繋がっているおり、奈須きのこにとってその一言を描写するためには必要なことだったのだと言うことがわかる点が大変に素晴らしいのだが、何よりもそれだけの言葉を費やせると言う作者のエネルギー(情熱と言い換えてもいい)そのものに僕は圧倒されるのであった。

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