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2006.12.13

『家守綺譚』読了

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家守綺譚』(梨木果歩/新潮文庫)読了。

相変わらず綺麗な話なんだけど、時折ゾッとするほどの冷たさがあって、その冷たさに幻想的でさえあるというあたりが完璧。次から次に不思議な出来事が起こるのだけど、その捉え方が一風変わっていて、ほのぼのとしたユーモアがあるかと思えば投げっぱなしで何のオチもつかないような話もある。異世界の考え方が非常に美しくて、でもそれはやはり異世界でしかなくて、現実の幻想の揺らぎの中に確固たる線引きがされていることに、作者のあまりにも冷徹とさえ言える視線があると思う。これは同様に現実に対して相容れないものを感じていた二人の男が、一人は現実に見切りをつけて幻想に向かい、一人はそれでもなお現実に生きる事を決意する物語であって、実のところ作者はそのどちらかが間違っているとも言っておらず、どちらにしても捨て去らなければならないものがあること、その捨てるものに対するスタンスことが重要であることを語っている。この作家の不思議な点は(まあ読むたびに思うのだが)、この上なく美しい幻想を描きながら、その幻想に耽溺する事を良しとしないところだと思う。結局、幻想に生きると言うことは、突き詰めれば人ではいられないと言うことでもあり、人外の住人になると言うこと。だが、それ自体は別に忌避するものではなく、人知の及ばぬ領域への敬意にも通じる距離感を持って幻想を扱うところに梨木果歩の幻想作家としての特異性であると思った。いや、本当に梨木果歩は凄いよ。

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