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2006.11.08

『ROOM NO.1301 #8 妹さんはオプティミスティック!』読了

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ROOMNO.1301#8 妹さんはオプティミスティック!』(新井輝/富士見ミステリー文庫)読了。

エロゲー的シチュエーションとキャラクターを配置しながら、描かれるのはどうしようもない人間の、どうしようもなさ、そして主人公健一の魂の彷徨を描く『ROOMNO.1301』もはや8巻目と相成った。そして、おそらくはこの物語における転換点となる地点となるのでもあろう。なぜなら自分の求めているものすらも分からず、ただその場の状況に流され続け、そして今、自分がそこにいる意味を問い続けていた健一が、ついに自分がなぜそこにいるのかという問いに対する一つの答えを出さんとしている巻だからである。常に”問う者”である健一は、逆に言えば”行動する者”ではなく、それゆえ己の思索の中に埋没していく傾向にあった。実感の持てない人生、関心を持てない世界に対して、途方に暮れているのが健一であった。しかし、健一とは真逆に位置するシーナの存在が、ついに健一を行動させていく。シーナと出会ってからも、それでもなお世界に対してしり込みをしていた健一が、シーナと佳奈の関係や、冴子たちとの関わりを経て、ついに思索を捨てて、無心でハーモニカを吹いた。それは健一のそれまでの世界への決別を意味しているのかも知れない。あるいは健一で世界に向けて叩き付けた宣戦布告であるのかもしれない。しかし、どのような意図を持っているにせよ健一は”始める”事を選んだのであり、そして始まりとは終わりに通ずるものである。それは物語の終幕、つまり1301号室における永遠とも言える幸福な擬似家族関係の終焉そのものに向けて、物語は動き出していくのだろう。そして彼らは選択を迫られていく。永遠を求め続けるのか?あるいは手放すのか?彼らが選ぶ決着を、読者は、僕はすでに知っている。想像をしている。その瞬間に向けて、物語は今しばらくの時間を費やしていく事を、今の僕は願ってやまない。焦らないで、ゆっくりとやればいいのだから。

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