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2006.11.26

『メイズプリズンの迷宮回帰 ソウルドロップ虜囚録』読了

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メイズプリズンの迷宮回帰 ソウルドロップ虜囚録』(上遠野浩平/ノン・ノベル)読了。

ブギーポップでもあったけど、上遠野浩平って「俺達に明日はない」系のロードストーリー、あるいは巨大にして卑小なるなにかからのエスケープストーリーを好んでいるのだろうなと思った。まあここで登場するのが父親がつまらない詐欺で刑務所にぶち込まれてしまって、いろいろと嫌になってしまった女の子と不思議な脱獄囚のおじいさんなんだけど。この二人が出会って詐欺を仕掛けたり逃亡したり交流を深めたりする話なんだけど、上遠野浩平ってのは、”ここではないどこか”の描写がたまらないわけで、不思議なおじいさん、双季蓮生のこの世のすべてを諦めきったような恬淡さが恐ろしく魅力的で、そして悲しくて、寂しさに満ちている。これはすべてが終わってしまった一人の老人の、最後の旅に同行することになった少女の話なのだが、その背景では、人間の生命に匹敵するものを盗む怪盗、ペイパーカットのすべてを観察する眼差しがある。その怪盗をめぐり様々な人間の意図があるのだけど、ぺイパーカットは事態の中心でありながらその姿を現さず、巨大な空白の目となり人々を翻弄する。あるいは導く。そこにあるのは一つの現象であり、現象に名前をつけるのはめぐりまわる人々個人に任せられる。それはおそらくそれぞれの人生そのものの選択であり、ペイパーカットはそれらをすべて俯瞰しつつ、一人の人生が終わるのを見守るのだった。その死はある老人が最後に見た夢であって、一人の少女がそれを受け取ったことにより、その人生は、たとえ受け取った側には何なのかは分からなくても、何かを残したことになるのだろう。少女は何が起こったのかは全然わからないなりも新しい道を歩んでいくのだ。一期一会。そんな陳腐な言葉も、この一瞬だけは意味を持つ。

あるいは持てると夢想するのだ。

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