『かむなぎ 不死に神代の花の咲く』読了
『かむなぎ 不不死に神代の花の咲く』(沖垣淳/GA文庫)読了。
主人公が伝奇的な異能の血族で、まだ技量は未熟なれど潜在力は高いという設定が、近年における伝奇小説流行と言えるヘタレ一点豪華主義の中において逆に新鮮味を感じてしまった自分が不思議だった。おそらく作者は女性なのだろうと感じる部分と無関係ではないのかもしれない。例えば主人公が無鉄砲でひたむき、そして熱血とあまりにまっとうに少年的である部分は、このような少年らしさは現代の男オタクにとっては許容しやすいものではなく、感情移入の妨げになりかねなく、あまり(ライトノベルでは)見かけない。おそらくさわやかな少年らしさというものは、現代ではノスタルジーか女性の妄想の中でしか生き延びられないわけで、現状、ライトノベルにおいては男性主人公の受け身、すなわちお姫様化を歩んでいることを実感したりもする。まあそのあたりはややこしい問題っぽいので棚に挙げておくが。ともあれこの作品は明らかに女性的な妄想の中の少年らしさをかもし出していると感じたのだが、それに対し僕自身にとって少年らしさというものはノスタルジーの領域に入りつつあるわけで、少年らしさという一点に僕が反応をしたと言うことなのかも知れない。少年らしさというのは、いうなれば自らの男性的なマッチョさと女性的なナイーブさがかみ合うことで生まれるものなので、この作品においては主人公が異能の血族の跡継ぎと言う”家”に属する点と、少女に対しては異能によって不幸を強制されている点に反発を覚える割り切れなさにそれぞれが代表されている。その意味においてこの作品は”少年”と言うものを見事に描き出していると言え、最近読んだライトノベルとしてはひどく珍しさを覚えたのだった。
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