『マリア様がみてる 大きな扉小さな鍵』読了

『マリア様がみてる 大きな扉小さな鍵』(今野緒雪/コバルト文庫)読了。
相変わらず話が進みそうで進まないのだが、少女たちの危うく揺れ動く心を丁寧に描いているので引き伸ばしていると言う感覚は強いものではない。むしろ、彼女たちの認識する美しく整った世界と、その世界を揺らがす”秘密”の描き方のあまりの繊細さには、どこか恐ろしいような気持ちにさえさせられるのだった。彼女たちの悩みと言うのは、世間一般に見れば格別に不幸な出来事と言うわけではなく、それなりにありふれた出来事に過ぎないのだけど、だからと言ってそれが作品の傷になっているかと言えば、そんなことは全く無い。日常の細やかな出来事に悩み、傷つき、あるいは乗り越える彼女らの姿には、どこか現実の存在とは思えぬ儚さと、その裏腹のたくましさのようなものが感じられる。そして、そのたくましさすら内包する幻想めいた神聖さがあって、ますます手を触れてはいけないような罪悪感すら感じられる無防備さがあって、僕はただ、彼女らの日常を、息を詰めて見守ることしか出来ないのだ。
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