« 『ブール・ノアゼット 世界一孤独なボクとキミ』読了 | トップページ | 目に付いた瞬間に「買おう」とかそういう思考を行う暇も無く手に取っていた »

2006.10.27

『凍りのクジラ』読了

026109840000
凍りのくじら』(辻村深月/講談社ノベルス)読了。

なんて良質のだめんず小説なんだ!びっくりした!

自意識過剰で肥大化した自我と自尊心にのた打ち回り、他人に対する虚栄と現実逃避に生きるという、男から見ると(いや一般的に見てもそうだが)紛れもないクズ野郎(美形)と、そんな人間のゴミ(おっとゴミに失礼だったな)に幻滅しながらも、それでもずるずるの関係を続けてしまうヒロインの描写のあまりの生々しさと克明な感情模様の説得力には驚愕した。この作者すげええええ。本来、ここまで(僕にとっては)共感を呼ばないであろうヒロインの感情を(だめんずに引かれる女性の気持ちなど理解しようもない)、何故引かれるのか、あるいは関係を断ち切ることが出来ないのかと言う葛藤に、いつの間にやら納得させられてしまっているのだ。つまりこの作品、引いてはこの作者の小説には”理”があるということ。物語と人の因果を作者がコントロールをしていると言うことの確かな証左があるように感じた。

作品については、『僕のメジャースプーン』も大概素晴らしかったが、この作品も素晴らしい。現実と対峙し続けながら、他人に心を許せず、一人傷つき続ける彼女が、誰かのために行動して、過去の出来事と向き会って、そして一つの救いを得るまでの過程には、その根底に力強い確固たる芯があり、揺らぎがない。作者が本当に描きたいことへのブレがない。それゆえに力強く、情緒的でありながらも、そこには”理”があると感じられるのであろう。

読んでよかった。

そんな風に思える小説である。

|

« 『ブール・ノアゼット 世界一孤独なボクとキミ』読了 | トップページ | 目に付いた瞬間に「買おう」とかそういう思考を行う暇も無く手に取っていた »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/12216985

この記事へのトラックバック一覧です: 『凍りのクジラ』読了:

« 『ブール・ノアゼット 世界一孤独なボクとキミ』読了 | トップページ | 目に付いた瞬間に「買おう」とかそういう思考を行う暇も無く手に取っていた »