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2006.10.03

『ストームブリンガー』読了

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ストームブリンガー』(マイケル・ムアコック/ハヤカワ文庫FT)読了。

エルリックとザロジニアの結びつきと言うのは、今読んでみると全く説得力が無いのだが(薔薇を捨ててこっちかよ、みたいな)、そんな些事などどうでも良いとばかりに世界の終わりの最終戦争であります。善と悪、敵も味方もすべてが殺戮と破壊の終局になだれ込むラストは圧巻の一言。僕のファンタジーに対する原体験は、紛れも無くこの作品に拠る部分があるということを思い起こさせてくれた。あまりにも悲劇的過ぎる結末に、開いた口がふさがらないという感情を味わったのも、おそらくはこの作品が最初だろう。だが、何よりも現実の幻想が混沌と交じり合い、夢と悪夢とより悪夢的な現実が具現するイメージの乱舞は僕のトラウマの一つでさえあるのだが、この作品の醍醐味はそのような古典的とさえ言える幻想性と、悪を為しつつ善を生み、善を希求しつつ破滅をもたらすエルリックという矛盾と葛藤に満ちた主人公が中心に据えられているところである。いかにもヒロイックファンタジーな冒険を繰り広げていても、それでもなお自分の為した冒険を懐疑してしまう救われなさや、自らの幸福と愛すらも信じられない決定的な不信があって、そんな極めて人間的な葛藤が神々の戦いすら左右してしまうところにムアコックの耽美とすら言うべき倒錯があると思うのだ。

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「ストームブリンガー」マイケル・ムアコック最愛の妻を何者かに拉致されたエルリック。魔剣ストームブリンガーを手に探索の旅に出るが、“新王国”の地は、“混沌”と手を結んだパン・タン=ダリジョール連合軍に侵略されつつあった。戦乱の渦中に否応なく巻きこまれるエ...... [続きを読む]

受信: 2006.10.30 08:30

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