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2006.10.31

『レンズと悪魔Ⅰ 魔神覚醒』読了

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レンズと悪魔Ⅰ 魔神覚醒』(六塚光/角川スニーカー文庫)読了。

しかし、この作者はヒロインに撲殺をさせないと気が済まないのか。と言うより人間を撲殺できるぐらいじゃないとこの作者的にはヒロインと認められないのだろうか。まあ確かにヒロインにも奇抜さを求められる昨今、自分の道は自分で切り開く積極性と攻撃力を所有することは、ライトノベルヒロインとしてやむ得ぬ仕儀やも知れぬ、と思った。冗談だ。

中身は相変わらずの伝奇アクションとしてなかなかに出来が良い。ただ主人公の動機は中途半端な気がするなあ。さして執着があるわけでもなさそうだし、もうちょっと積極的に動かすか、いっそのこと完全に巻き込まれ型にしてもよかったような気もするが。ただバトルロイヤルものになって、駆け引きが中心となって来たあたりは大変に面白い。やっぱり主人公の能力はワンノブゼムじゃないとね(偏った意見)。限られた資源を有効に使うことで勝利を導き出すと言う過程に燃えるわけですよやっぱ。あと何気に相棒ものでもあるのな(全然何気じゃねえよ)。苦労性とお調子者のコンビは、どっちもおっとりとしているためか毒は無いけど、あきれるくらいにお気楽でゆるい関係を構築していってくれそう(癒し系かもしれんなあ)。真剣なのにふざけていて、ふざけているのに深刻と言う、ゆるさとシリアスの按配の独特さは相変わらずなので、安心して読めるのも良い。続巻にも継続して期待したい。

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2006.10.30

『アンダカの怪造学Ⅳ 笛吹き男の夢見る世界』読了

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アンダカの怪造学Ⅳ 笛吹き男の夢見る世界』(日日日/角川スニーカー文庫)読了。

まあ相変わらずの日日日作品だなあ。

テンションの赴くままに書いているような、流れるような文章の快さは全く素晴らしいのだが、その代わりに、と言う言い方が妥当なのかどうかは考慮の余地があろうが、伏線の張り方が下手だなあと思う。と言うか伏線というのは、別に読者に分かるように書かなくても良いと思うんだが。もっとさりげなく、程よく迷彩をかけておいてもらう方が読者としても助かる。最高に余計なお世話で偉そうで何様な発言をさせてもらえるならば、もうちょっと日日日は”忍耐”と言うものが必要なのではないかと思った(でもそれは編集者の仕事だよなあ)。まあ、僕がウダウダ言わなくても、いずれ日日日なら成長を遂げてくれるだろうが(成長せざるを得ないだろうしね)。

作品については何にも述べていないけど、僕にとってあんまり感想を書けるような作品じゃないんで。面白いけど、それ以上ではないしなー、ってのが正直なところ。

相変わらず褒めてないなあ…。

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2006.10.29

『はじまりの骨の物語』読了

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はじまりの骨の物語』(五代ゆう/HJ文庫)読了。

何年ぶりになるのか分からないけど再読した(たぶん、10年以上は固いな)。
 

相変わらず言葉の使い方が美しい。

紡ぐ言葉の一つ一つに、ゲルダの燃えるような愛と憎しみが浮かび上がり、吐息すら凍らせる”冬”の軍団の猛威を幻視する。王子の秘めやかで幼い恋情があり、陽気な男の軽口が焚き火の紅さに木霊する。

そう、この物語には「むかしむかし、あるところに…」と、いつかどこかで語られている(いた)物語と同じように、人間の想像力によって育まれた”匂い”がある。それは、豊かで奔放な想像によって、平凡な日常から掬い上げられたもので、人々の平凡な日常から生まれ、現実に疲れた大人の、世界への憧れに満ちた子供の心の奥で、ひっそりと生き続けるような。

そんな物語だと僕は思う。

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ぎゃー何で生まれてきやがったー

そんな事を言いたくなる年頃なのであった。

とりあえず疲労が蓄積しており、なにもする気が起きない。
あーつかれたー…。

1.『夜明けの剣 ルーンの杖秘録Ⅲ』 マイケル・ムアコック 創元推理文庫
2.『デビルサマナー葛葉ライドウ 対 死人驛使』 蕪木統文 ファミ通文庫
3.『佇むひと』 筒井康隆 角川文庫
4.『移動都市』 フィリップ・リーブ 創元SF文庫

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2006.10.28

『蛇にピアス』読了

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蛇にピアス』(金原ひとみ/集英社文庫)読了。

刺激的で挑発的だけど、端整で瑞々しい。そんな矛盾した印象を受けた。文章も美しく、非常に技巧的な作家だと思う。全然若書きという感じがしないのは一つの驚異ですらある。

人体改造に魅せられ、自らにも改造を施していく主人公の動機は、いわゆる変身願望の延長線上にある欲求から来ているものなのだろう。ただ、現在の自分からの逃避(だけ)ではなく、もう少し積極的な意味合いがあるようで、新しい自分になろうと言う意思があるように思える。しかし、そもそものところで主人公の彼女が現在の自分に対してどのように思っているのかがはっきりしなくて、彼女がピアスをつけていく行為そのものから推察するしかないのだが、だからこそ主人公の感情の揺れ動きが克明に表われているように思えるところが良かった。さらに言えば二人の男の間で自在に行ったり来たりすることも、異なる世界を越境したいと言う欲望を表しているように感じる。だが、結局のところ、この作品は、異なる世界、異なる自分と言うものを志向しながらも、結局は自分と言う殻を破ることは出来ず、自分と言う釈迦の手のひらに生きるしかないところに落ち着いていて、その意味では非常に健全な話であると思った。

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目に付いた瞬間に「買おう」とかそういう思考を行う暇も無く手に取っていた

1.『デトロイド・メタル・シティ(2)』 若杉公徳 白泉社

のことなんですけど。なんか文句ある?(いきなり喧嘩腰かよ)

まあそんなことはどうでもいいんだけど、やっぱりDMCファンの人たちって本当にノリが良い人たちばかりだなあ…。

2.『ゼロイン(6)』 いのうえ空 角川書店

DMCのせいで忘れそうになっていたけどこんなのも買っていたのでした。
まあバトルでガンでアクションな美少女マンガ何ですけど。まあ良い意味で単純明快。欲望に忠実なんで楽しいのう。

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2006.10.27

『凍りのクジラ』読了

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凍りのくじら』(辻村深月/講談社ノベルス)読了。

なんて良質のだめんず小説なんだ!びっくりした!

自意識過剰で肥大化した自我と自尊心にのた打ち回り、他人に対する虚栄と現実逃避に生きるという、男から見ると(いや一般的に見てもそうだが)紛れもないクズ野郎(美形)と、そんな人間のゴミ(おっとゴミに失礼だったな)に幻滅しながらも、それでもずるずるの関係を続けてしまうヒロインの描写のあまりの生々しさと克明な感情模様の説得力には驚愕した。この作者すげええええ。本来、ここまで(僕にとっては)共感を呼ばないであろうヒロインの感情を(だめんずに引かれる女性の気持ちなど理解しようもない)、何故引かれるのか、あるいは関係を断ち切ることが出来ないのかと言う葛藤に、いつの間にやら納得させられてしまっているのだ。つまりこの作品、引いてはこの作者の小説には”理”があるということ。物語と人の因果を作者がコントロールをしていると言うことの確かな証左があるように感じた。

作品については、『僕のメジャースプーン』も大概素晴らしかったが、この作品も素晴らしい。現実と対峙し続けながら、他人に心を許せず、一人傷つき続ける彼女が、誰かのために行動して、過去の出来事と向き会って、そして一つの救いを得るまでの過程には、その根底に力強い確固たる芯があり、揺らぎがない。作者が本当に描きたいことへのブレがない。それゆえに力強く、情緒的でありながらも、そこには”理”があると感じられるのであろう。

読んでよかった。

そんな風に思える小説である。

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2006.10.26

『ブール・ノアゼット 世界一孤独なボクとキミ』読了

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ブール・ノアゼット 世界一孤独なボクとキミ』(藍上陸/スーパーダッシュ文庫)読了。

孤独を嫌いつつもコミュニケーションが下手な人間が感じる閉塞感の表現が飛びぬけていた。たぶん作者は天然で書いていると思うけど、主人公の行動と発言のズレっぷりは相当なもので、空気を読んでいない感がありありと表われている。確かにこれでは大変だったろうなあ…と思わず身震いをしてしまったのだが、それを理解して読み直すと、冒頭の、状況をリセットして「さあやるぞ!」と主人公が決意するシーンはあまりに痛々しくて見ていられません。もう「こりゃ駄目だ…」と言う感じ。い、痛いぜ…。

どこまで作者自身の世界認識が表われているのかは分からないけど、この物語で紡がれるセカイは、どこか胡散臭く、書き割りめいていて、またよそよそしく感じられるのが僕の感覚にフックしてきた。あー確かにこういう現実感の無さは感じてたことがあるよ。周囲を遮断して自分の世界に閉じこもった時の感覚そのものだな。すべてが作者の脳内だけで話が進んでいる感じがした(まあそこが、逆に現実感の無さが強調されていて面白いところではあるんだけど)。だからこそ、すべてをうそ臭い茶番として弄ぶ、「あの人」の脳内の人形劇だったわけだ。救われねえなあ…。

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2006.10.25

『黄色い花の紅』読了

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黄色い花の紅』(アサウラ/スーパーダッシュ文庫)読了。

一体表紙の女の子は誰なんだと思いつつ読んでいたら、途中で視点人物が変更という思い切った手法をやっていて驚いた。しかも、単に語り手が変わっているだけではなく、戦闘のエキスパートである玄人から何も知らない素人への視点変換となっているため、語り手が捉える”世界”そのものが異なっているように感じられるのが興味深かった。玄人視点だと普通のハリウッド的なエンターテインメントなのに、素人の女の子が主人公になると、とたんに銃と言う人殺しの道具を巡る葛藤が表面に現れてきて、まるで別の小説を読んでいるかのような温度差があるように思えるところが不思議な作品だと思う。

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2006.10.24

『フレイアになりたい』読了

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フレイアになりたい』(岡崎裕信/スーパーダッシュ文庫)読了。

相変わらずとてつもないテンションを維持したまま、トップスピードノンブレーキで攻めまくるあまりにアグレッシブすぎる作風は相変わらず。むしろ、今回の主人公の風間瞳姐さんのあまりに人の話を聞かなさゆえの相乗効果でますます暴走振りに拍車がかかっている。素晴らしいね。

この作者の魅力には、作品の完成度など歯牙にもかけない(実際にはどうか分からないけど)おおらかなストーリーテリングと、作者自身が作品を書いていて楽しくて楽しくてしょうがないと思えるような明るい筆致があるように思う。けっこう話の展開は行き当たりばったりと言うか、ノリで決めているようなところがあるし、キャラクターについても、記号的なのかそうでないのかよくわからんし、読めば読むほどによくわからなくなってくるのだが、そこを「まあいいじゃん?」で押し切る驚異のノリの良さには脱帽する。

しかし、つくづく不思議に思うのは(まあ他にも不思議なところは一杯あるんだけど)、キャラクターの持つ軽さだよなあ…。少なくとも萌えーという描写じゃないはずなんだが…どんなに深刻かつ陰惨な背景を背負っていても、どこか”明るさ”があって、物語はいかにも深刻であり続けながらも健やかさを失わない。うーん、不思議な作家性だ…。

しかし、やっていることは『滅びのマヤウェル』と全然かわらねーなー…。変わらないことに安心するべきか、またしても打ち切りの憂き目に合わないか心配するべきか、なんとも複雑。

と言うかですね!『滅びのマヤウェル』を2巻で打ち切るのは本当にもったいないと思うんですよ!何とかなりませんかねえ…。

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いきなり寒くなってきました

突然冬が来訪したかのような寒さです。もともと温度の切り替わりに弱い体質なので、あっという間に体調を崩してしまいそう。もう崩していますが。花粉症もそろそろだし、なんかゆーうつだなあ。

1.『シンセミアⅠ』 阿部和重 朝日文庫
2.『シンセミアⅡ』 阿部和重 朝日文庫

とりあえず買ってみた。まだ読んでいる最中なんだけど、面白いのかどうかまだよくわからない。最近ライトノベルを読みすぎで、それ以外の読み方を忘れているな…。気合を入れて読もう。

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2006.10.23

誤解が積み重なると大変だ…

仕事上での人間関係のゴタゴタがたまらん。何とかしてくれ。

1.『ゼロの使い魔外伝 タバサの冒険』 ヤマグチノボル MF文庫J
2.『パラケルススの娘(5) 騎士団の使者』 五代ゆう MF文庫J
3.『シグルイ(7)』 山口貴由 秋田書店
4.『無限の住人(20)』 沙村広明 講談社
5.『ヴィンランド・サガ(3)』 幸村誠 講談社
6.『バガボンド(24)』 井上雄彦 集英社

『無限の住人』で万次が久しぶりに強い。主人公が強いのは本来おかしくないはずなのに、万次が強いところを見せると違和感を感じるのは何故だろう…。

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2006.10.22

『ゼロの使い魔(9) <双月の舞踏会>』読了

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ゼロの使い魔(9) <双月の舞踏会>』(ヤマグチノボル/MF文庫J)読了。

ヤマグチノボルに対しては散々感想の中で言ってきましたが、取りあえず冒頭における主人公の妄想の暴走振りを読んだ瞬間、「ヤマグチノボルって天才ではなかろーか・・・」と思いました。しょうがない、もうこれは認めるしかありませんね…ヤマグチノボルはすげえってことに。

まあいわゆる天才ではなく緻密な計算に基づいて書いているタイプの作家ですね、と言うのは以前から分かっていたことだけど、それに加えて非常に繊細なものがバックグラウンドにあると言うことに今回ようやく気がついた次第です。

大袈裟な言い方をしてしまうなら、ヤマグチノボルというのは”青春の挫折(しつづけること)”を描き続けている作家なんですよ。あまりにも巧みな萌え要素の扱い方に目を眩まされていたけれど、この作者は、実は(青)少年時代におけるコンプレックスと自尊心、妄想など、その種の感情の描き方が抜群に上手いのです。それが前述の冒頭のシーンに集約されている感じがした。劣等感(『遠く6マイルの彼女』でも重要なキーワードになっていました)のあまり暴走して、好きな相手が自分の事をどう思っているのか悶々として、嫉妬したり奇矯な行動に出たりひどく痛々しく、同時に共感をそそって止まない。こんなに繊細な作品だったとはっ…。正直見くびっておりました。どーもすいません。

まあ小説としてはアレなんだけど(結局それか)。

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『黄金の旅路』読了

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黄金の旅路』(吉村夜/富士見ファンタジア文庫)読了。

いやー凄いなこれは。なにしろ前巻でヒーローが死んでしまって、一体最終決戦はどうなってしまうのかと思ったら、本当に完全無欠に死んでいました!そしてヒーローの遺志を継いだ人々が戦うと言う話になるんでした。いやマジでびっくり。容赦ねえなあ、作者。

どこからどう見ても20年ぐらい前の伝奇小説を現代にリファインした奇跡的な作品だよなあ。キャラクターの設定にややライトノベル的な部分が入っていることをのぞけば、どこの平井和正だよこれは!って感じだもんなあ。奈須きのこを初めとする新伝綺の系譜からは一線を隔した古き良き伝奇を現代によみがえらせた吉村夜の功績はもっと高く評価されていいと思う。と言うか懐かしき伝奇小説を現代に継承する末裔の一人だよ!だれか保護しろ保護!

ただあまりに伝統的過ぎて現代に受け入れられるのか心配になってしまうこともまた事実。主人公たちが属する稀人の組織っての言うのは、少数民族の常としてたぶんに排他的であり、また全体に奉仕するために個人を犠牲にする全体主義的な方向性を強く持ち、今は指導者が高潔な人物たちが揃っているので健全になっているが、下手をすると独裁になりかねない部分がある。また主人公たちも、個人としての葛藤はあれども、やはり全体のために生きることに疑いを持っていない。それは悪いことではないし、むしろ自分の所属が明確であり、自分の属する論拠がはっきりしているが故のゆるぎなさ、誇り高さには過剰なほどに憧れを感じるのだけども。自分が世界に属する根拠、すなわち社会と言うものを描いているという部分が、世界が際限なく縮小していくことで、自分の属する部分が個人にしか還元されない新伝綺とははっきり異なっていると思う。

どちらが良いというものではないけれども、高校生を主人公としながらも、積極的に社会とつながりを持った物語を描いたこの作品の特異性は確かなものであると、僕は評価をしたい。

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『<骨牌使い>の鏡Ⅲ』読了

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<骨牌使い>の鏡Ⅲ』(五代ゆう/富士見ファンタジア文庫)読了。

『<骨牌使い>の鏡』の完結編。

要するにこれは「神」=「骨牌」の時代の終焉を描くタイプの作品だったんだなあ、と久しぶりに読んだら思った。つまり、人間の運命を否応なしに狂わせる骨牌という存在がこの事件を通して「神」の座から転落し、単なる生きるための道具となるまでの話だったと。いや、神の失墜と言うのはジェルシダの消滅により実現をしてしまっているわけだから、神が消え去った(人間になった)後の、神話の領域のあがきであったと言うことも出来るか。

なんか読めば読むほどにいろいろな発見があって楽しいなあ。たとえば、以前はあまりピンと来なかったロナーの戦う動機なんかも、本来個人的な欲求しか持たないロナーが、望むものをすべてを失った時に運命と対峙する決意をするあたりなんか、今頃になってなるほどなあとか思ったし。

まあなんにせよ、僕にとってはとても思い入れが強い本なので、この調子で五代ゆうがもっと注目されるようになってくれると嬉しい。みんなももっと読もうぜ!

まあそういうことで。

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2006.10.21

『戦鬼-イクサオニ-』読了

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戦鬼-イクサオニ-』(川口士/富士見ファンタジア文庫)読了。

これは言ってはならんのかもしれないが…何が面白いんだ?これ?(ああ言っちゃった)

もちろんこれがデビュー作であるわけだし、これだけで作家としてのすべてを判断するわけには行かないけれども、僕にとっては面白さがよくわからない作品だったな。たぶん現代語と古語が入り混じる文章に不徹底なものを感じてしまったのが原因の一つだと思う。あと、これを伝奇小説として読み始めてしまったのも失敗だった。これは日本の御伽噺のパロディと言うべき作品で、あの超有名なおはなしをあれやこれやとぶち込んでしまった奇想小説として読むべきだったんだろうなあ。エンターテインメントとして読むと言葉の拙さが目立ってしまう…。とはいえ物語の半ばで桃生の正体に検討がついた時のバカバカしさを伴った衝撃はけっこうなものだったけど。いや、この作品の設定とアイディアはやっちまったもん勝ちだよなあ。

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『トキオカシ』読了

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トキオカシ』(萩原麻里/富士見ミステリー文庫)読了。

わりと面白い。

とにかくなんかしらんがうやむやのうちに三角関係が構築されてLOVEが一杯でありまする。まあそこは好き好きで。でもこの三角関係はラブはあってもコメがなく、どんどん修羅場に移行しかねない執念深さがあるようなないような気もするので修羅場スキーの方は要注意ですね。どうでもいいですか。全体的に突き放したような淡々とした描写が多いけど、なにかしらの雰囲気はある作品なので退屈はしませんね。ただ、冷静に考えると時間ミステリとしては、(意図はどうあれ)上手く機能していないんじゃないか、と言う気がするんですが。と言うかそもそも主人公たちは何もしていないような…。ラストのネタ晴らしも、必ずしも事件と結びついているとは言えず。事件そのものにサプライズを感じないしな。まあラストを意外な結末と取るか、予定調和と取るかで評価が変わってくるのかも。

いや、まあ、富士見ミステリー文庫にミステリーを期待しちゃ駄目なのは分かっているんですがね。

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2006.10.20

いつもの通りの独り言

アニメでもゲームでも小説でも漫画でもそうだと思うけど、「自分が面白いと思ったもの」=「上手い」と捉えてしまうことって良くあるよなあ。そういう風に捉えてしまうと、他人に作品を貶されたときに理不尽に腹が立ったりするわけだけど、それってけっこう自信過剰だよな。自分の価値観が他人の価値観よりも優れていると言うことを前提条件にしているわけだから…と言いつつ、やっぱり自分も他人よりも”モノが分かっている”と言う自尊はなかなか切り離せないわけだけど。なんにせよ、”面白い”と感じるのは、単にその作品と波長が合ったに過ぎなくて、その作品が技巧的に高いかと言うこととは無関係である(そもそも技量が高いと言うのも一面的な考え方に過ぎないわけだけど)という自覚を持っておかないと、容易く偏執に流れるので注意した方がいいなあ。まあそもそも「上手い」こともまた「面白い」とは何の関係もない話で、「上手い」けれども「つまらない」作品だって、実のところ枚挙に暇が無いわけで…ってこういう言い方も意味が無いんだけれども。まあそんなことを考えてぼんやりしていた一日でした。忙しいときに何やってんだオレ。

以下は買ったもののメモ
1.『殺×愛5 きるらぶFIVE』 風見周 富士見ファンタジア文庫
2.『煉獄のエスクードARCHIVES だけど綺麗なものは天国に行けない』 貴子潤一郎 富士見ファンタジア文庫
3.『ロケットガール1 女子高生、リフトオフ!』 野尻飽介 富士見ファンタジア文庫
4.『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』 野村美月 ファミ通文庫
5.『ラキッドガール 廃園の天使Ⅱ』 飛浩隆 ハヤカワJコレクション
6.『白銀の聖域』 マイケル・ムアコック 創元推理文庫
7.『復讐の女神』 フレドリック・ブラウン 創元推理文庫

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2006.10.18

『クジラのソラ01』読了

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クジラのソラ01』(瀬尾つかさ/富士見ファンタジア文庫)読了。

僕が好きなところはどこかと言えば、やっぱりイメージ。とにかくイメージ。最高。宇宙空間というのはそれだけで美しいものだけど(無論、それは地獄とすれすれであると言う美しさだけど)、宇宙空間に浮かび上がる”クジラ”のイメージにとにかく痺れる。大きな大きな、ただひたすらに巨大な存在。リリック。その歌を聴いたとき、人は新たなステージに昇るのだ。

そして何より美しく描かれるのは、登場人物たちの視点の行方。主人公たちがひたすらにソラ(空、宇宙)を見上げるその視線、それは届かない憧れと、失われたものへの寂寥感と、すべてを取り戻そうとする貪欲さと、見送るものの諦観がある。全員が見上げるその先には、それぞれが見るものが異なっていて、それは後々への悲劇への予感を感じさせながらも今はただそれぞれの思いを胸の中に収めるだけだ。彼ら、彼女らの想いは、言語にすればひどく単純なものになりかねないけれど、これは言語化してはいけないものがあって、おそらくソラを見上げる行為だけが、彼らの感情に名付けることなく曖昧なままでそこに立ち上がらせることが出来る。これはそれでいいのだ。夢とか野心とか、そんなものは口に出せば出しただけ嘘になる。行きたいものは行きたいし、知りたいことは知りたい。それでいいんじゃないの?読者が共有出来るのは、その視線だけ。その視線にこめた想いはそれぞれ違うわけだから。

この小説を読んでいるとイメージの力を改めて感じる。決して饒舌な小説じゃないし、そもそもキャラクター小説ですらない作品だけど、ソラを見上げると言う行為だけで確かに読者に(少なくとも僕に)感じるものがあって、僕はただため息をつく。

惜しむらくはややエンタメに寄ってしまったところ。キャラクタがちょっとラノベ的?ライトノベルとしては仕方の無いところであるけど、富士見ファンタジア文庫では大成しないと思われる。早くハヤカワ文庫が拾い上げてくれる事を期待しよう。

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どう解釈したらいいのか困惑

本屋を(いつものように)ぶらぶらしていると、古川日出男の『サウンドトラック』の文庫化されているのに気がついた。いつの間に…と手にとって表紙を眺めてみると、イラストが田島昭宇だった。

……ライトノベル?

1.『魔法先生ネギま!(16)』 赤松健 講談社
2.『おれはキャプテン(12)』 コージィ城倉 講談社
3.『結界師(14)』 田辺イエロウ 小学館
4.『”文学少女”と死にたがりの道化』 野村美月 ファミ通文庫
5.『学校の階段』 櫂末高彰 ファミ通文庫

うわさの『ネギま』の141ページを見る。フム…なるほどこれは確かにヤバイな。

『おれはキャプテン』は相変わらずおもしれえのう…といいたいが、カズマサには妹がいたのかよ!初めて知ったぞ!

『結界師』も面白い。いろいろなタイプの妖怪や封魔術も出てきて世界観に奥行きが出てきた。単に凝っただけの設定と異なり、奇を衒わない堅固さがあると思うな。

ファミ通文庫より何かと話題の小説を読んでみようと思って買ってみた。『文学少女』はまだ読んでいないからなんとも言えないのだけど、問題は『学校の階段』(誤植にあらず)の方だよなあ…。この『学校の階段』は決してつまらないわけではなく、確かに魅力のある小説ではあるのだけど、読者に対して不親切と言うのか、共有言語の醸成が不完全なままになっているといえばいいのか、とにかく作者のオレ概念、オレ世界が表に出すぎている。それが決して悪いわけではないのだが…うーん上手い表現が思いつかない…。

あ、そうか、これがパピヨンか!

(便利な言葉だなあ…パピヨン)

ちなみにパピヨンとは何かということについてはこちらをご覧下さい。というか勝手に使っちゃったけど、いいよな。

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2006.10.17

『EDGE(5) ロスト・チルドレン』読了

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EDGE(5) ロスト・チルドレン』(とみなが貴和/講談社X文庫)読了。

ついに『EDGE』も完結かー。長かったなー…。

このシリーズは、主人公もその周りにいる人たちも犯人もすべて傷や弱さ、愚かさを抱えているところが好きなんだけど、主人公やその相棒の異能そのものは作品世界をぶち壊しにしそうなほどに強力で、そのアンバランスさが特徴であり魅力でもあったと思うよ。主人公と相棒の近そうで遠い関係にもやきもきさせられたし、読み手のフックにかかる部分が多く、個々の要素をこれでもか、とばかりに詳細かつ念入りに描写する執念にも似た筆力は、相変わらずだったなあ。

今回の事件で錬摩は過去を許すことが出来たわけだけど、正直なところ、これでよかったのかなあと思わないでもない。きちんと向き合うわけでもなく、なんとなくうやむやのうちにやり過ごしてしまったような印象を受けてしまった。うーん…ひょっとして僕は錬摩と宗一郎の関係を根本から誤解していた?この二人の対立関係は過去を知る錬摩とすべてを忘れた宗一郎、過去に囚われた錬摩とこれからしか見えない宗一郎の断絶から生じていたような気がするのだけど、結局単なる痴話喧嘩で決着してしまったような…。まあ、過去に囚われ続けた錬摩と、過去から開放された宗一郎が、お互いの関係を新しいものに作りなおそうとする過程を描いた物語であったと捉えておけばよいのか…。いささか首肯しがたいのだが、何か読み落としているのだろうか…。

ちなみにサスペンスミステリとしては何一つ文句のつけようも無いエンターテインメントでした。ここまで書き込んでくれれば言うことないです。やっぱり今回の犯人の、あまりにも平凡すぎる動機はある意味意表をつかれたよ。どす黒い暗黒ってやつだ。たまらないね(変態)。

次回作にも期待しております…が、一体何年先になるのか検討もつきません。新刊を出してくれれば文句をつける筋合いのものではありませんね。

一つ、よろしく(何をだ)。

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2006.10.15

年の差カップルが良いらしい・・・

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高橋葉介の『学校怪談(3)』を読みながら、自分はつくづく年上のお姉さんと少年のコンビ(*)に欲望しているという事を再認識した。つまり態度が大きくて自信に溢れていて、しかしどこかぬけているところもある大人の女性と、彼女に振り回されながらもそのフォローに右往左往する少年と言う構図に強い快楽の要素を感じるのだ。

この巻から突然登場して、作品の雰囲気までもすべてを一新してしまった九段九鬼子先生と、なぜか妖怪変化とかかわりを持ってしまう山岸諒一くんのコンビなんかは、まさに僕の性癖(…)にばっちりヒットしていて、まあ、その、なんというか非常に萌えてしまうのだった。

九鬼子先生が出てくる話はどれも楽しくて好きなのだが、「深夜急行」のエピソードが特に良い。普段はがさつで豪快な九鬼子先生が酒に酔いつぶれて山岸君におんぶ抱っこ(文字通りの意味で)されているあたりにお互いの教師と生徒を超えているような親密さがほのかに表われている(ような気がする)のがたまらんですわい。最後に「酒くせー」といっている山岸君の微妙な表情もいいし、なんか胸が苦しいぞ(萌え過ぎて)。

それにしても表紙の九鬼子先生はアンニュイ過ぎる…。
 
 
(*)戯言シリーズの「いーちゃん」と哀川潤とか、塵骸魔京の九門克綺とイグニスとか。

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今日買ったもの

相変わらず不調中。頭が上手く働かない。なんかこういう毎日を送っていると、日々を何もしないで消費してしまうなあ…。

1.『エンジェルお悩み相談所』 水上悟志 芳文社
2.『家守綺譚』 梨木香歩 新潮社
3.『からくりからくさ』 梨木果歩 新潮社
4.『戦塵外史 野を馳せる風のごとく』 花田一三六 GA文庫
5.『かむなぎ 不死に神代の花が咲く』 沖垣淳 GA文庫

GA文庫の新刊3冊のうち2冊を購入してきたのだが、別段何かを考えて選んでいるわけではない。花田一三六はデビュー当時からのファンなので今回の復刊に対しては購入以外の選択肢は無いが(無いのか)、もう一方についてはフィーリングとしかいえない。従って、もしかしたら僕が購入していない方が面白かったりする可能性もある。まあだからどうしたというものでもないけど。

あと梨木果歩を突然読みたくなったので買ってしまった。まだ途中なのだけど『家守綺譚』はひょっとしたら名作かも…と思わされる出来。なんとなくボーズラブっぽい雰囲気もあるんだけどね(ヨコシマな視線)。

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2006.10.14

とりあえず復活しました

ブログを更新する意欲が沸かなかったものでちょっと放置してしまった。今もあまり意欲は無いけど、このままほっぽりだすのも気が引けるので、購入リストをあげておく。

1.『のだめカンタービレ(16)』 二ノ宮和子 講談社
2.『鈴木先生(1)』 武富健治 双葉社
3.『学校怪談(3)』 高橋葉介 秋田書店
4.『神鵰剣侠(5)』 金庸 徳間書店

『鈴木先生』が素晴らしく面白い。こんな漫画がこの世にあったんだ!

『学校怪談』では九段九鬼子先生が登場。九鬼子先生が出てくると、とたんにユーモア人情ホラーになってしまうんだな。キャラクターの力は偉大だなあ。

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『ぼくのメジャースプーン』読了

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ぼくのメジャースプーン』(辻村深月/講談社ノベルス)読了。

実に久しぶりにメフィスト賞受賞作(追記:正確には受賞作家)を読んだ。あちこちで褒められていたので、ああきっと面白いんだろうなと思って読んだら本当に面白かった!

”罪”に対する”罰”をめぐる問題を扱ったミステリという点にまず感心した。犯された犯罪に対して、いかなる罰を下すべきなのか?そもそも人は人を裁くことが許されるのか?と言う決して正しい答えを出すことが出来ない問題に対して、事件に巻き込まれ深い傷を負ってしまった少女のために、少年はひたすら考える話と言うのは、あんまり見かけないよなあ。よくこんなアイディアを実現出来たという事実をとにかく褒めたい。

この作品は、主人公の少年と、『先生』の間でひたすら繰り返される罪と罰にまつわる議論で埋め尽くされているのだけど、時折挟まれるエピソードで少女と少年と『先生』の間の交流の描写がまた良いんだ。被害者意識ばかりに流されること無く論理的でありながら、そこには暖かい感情と気遣いに満ちているので、少年の”決断”至るまでの流れがスムーズで、また最後の”決断”の衝撃につながっている。理知的でありながら情緒的な側面を大事にしているところが好感度高し。いいなあ、これ。

(しかし、最後の決断は、罪と罰をめぐる問題を延々と繰り返してきたことに対して反則のような気もする…。今までの議論を全部打っちゃりか!みたいな。だからこその意外性ではあるけど)。

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2006.10.10

『図書館内乱』読了

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図書館内乱』(有川浩/メディアワークス)読了。

例によって図書館で軍隊物でベタベタな恋愛小説であった。ある意味非常に甘ったるいので、そういうのに耐性がない人には注意が必要だと思う。図書館の権利をめぐる問題提起のやり方にも真面目に描いているので好感がもてます。もっとも有川浩と言う作家は、基本的にキャラクターと物語は非常に類型的であり、奇抜なことは全然やっていないけど。ちょっとテーマの使い方が愚直と言うか、不器用と言うか…もうちょっと上手く処理しても良いと思ったけど、これがこの作者の持ち味なのだからしょうがない。その意味ではこの作品は完全無欠のリアリティ皆無のファンタジーであるのだが、まあリアリティなんて無ければ無いで全然困らないものであります。時には御伽噺が必要な時もある。

いつもだと胃にもたれるけど、ね(あー性格が捻じ曲がっているね。やだやだ)。

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2006.10.09

『ヤクザガール・ミサイルハート』読了

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ヤクザガール・ミサイルハート』(元長柾木/ゼータ文庫)読了。

内容はヤクザでミサイルな女の子と男の子のボーイミーツガール(本当)。

いつもの作風と違って当たり前のライトノベルとして面白いので、元長柾木と言うブランドにビビらずに読んでみても良いのではないでしょうか。チャンバラアクションもやたらと派手だし、女の子も格好いい。緒方剛志のイラストも良い感じだし。

全体的に素直にエンタメなので、いわゆる元長成分を補給するのには向かないと思われがちだけど、個人的にはそれでも随所に元長柾木らしい油断のなら無さがあると思う。これはきちんと読まないといけない、と僕が感じたのは、序盤において主人公の男の子が少女を足抜けさせようと考えて暴走するあたり。この異なる文化、思想の存在を頭では理解していても実感の伴っていないところに少年らしいひた向きさ、無謀さ、視野の狭さがあって良いと思った。その後の展開においても、少年と少女における世界観闘争とでも言うべきな、それぞれが生きる価値観の断絶が繰り返し描かれるのだが、しかし、それが単純なぶつかり合いではなく、お互いがそれぞれの世界観の違いを意識し、何が違うのかを(少年が少女を説得するという形で)繰り返しディスカッションをする過程が描かれているところに恋愛小説として新しさを感じた。コミュニケートを通じてお互いを知る(断絶を理解する)ことによる闘争の和解が描かれているのだ。現時点においては少年の主張する世界に少女がなびくという形で決着がついているけど、少年自身も少女と行動を共にすることにより少女の世界観の洗礼(殺人)を受けてしまっている。お互いの世界観が揺らぎ、変容をし続けているのだ。そんなところが非常にスリリングで好ましかった。

やはり元長柾木の”恋愛”描写には、世界の変容を通じて味合う新しい世界への驚きと興奮に満ちているところが美しく、感動的であると思う次第である。

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2006.10.08

『暗闇にヤギを探して』読了

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暗闇にヤギを探して』(穂史賀雅也/MF文庫J)読了。

これ凄い面白い。というか度肝を抜かれた。ここまで僕好みのお話を書く作家がデビューしていたなんて…。
 
「ごめんなさい、おいしかったです」

そんな不思議な手紙が机の中に入っていると言う冒頭からして魅力的なのだが、その手紙を受け取った主人公、草加合人の対応も良い。わけの分からない手紙を前にしても、投げ出すことなく真面目に、そして真剣に考えて精一杯の返事を書く。どこまでも真剣に。決して笑い飛ばすことも無く。常識という思考停止に陥ることも無く。
この主人公は、けっして相手を「無視」しない。こんなわけの分からない手紙を読んでも、「外れてしまった」相手にだって真剣に相手をしてくれる。そういう誠実さがこの作品の、とぼけてはいるが奇妙な真面目さを内包した雰囲気を形作っているように思う。

すべてに対して真剣に考え、向き合う誠実な主人公の周囲には、やはり奇妙な少女たちが集っている。一般的な意味では「変人」と位置づけられる彼女たちは、そんな彼女たちを笑わずに向き合ってくれる主人公にどうしようもなく引き寄せられるように出会うのだが、彼女たちとの交流の仕方も素晴らしい。そこには決して都合の良いだけのものではない、コミュニケートするための恐れや期待を見事に描いている。

メインヒロインである千早千歳は、とある理由により「食事」が出来ない存在。物語が進むにつれ、彼女の食事が出来ない理由も明らかになってくるのだが、その理由というのは彼女の伯父が言うように父親のせいなどではありえない。原因と結果は逆で、彼女は人間の持つ悪意や身勝手さ、人間らしい感情の流れの無さに対して過敏であり、それゆえに食事が出来ないでいるのだ。だから彼女の父親は世界の悪意から彼女から守り続けたのだ。

その父親も死に、悪意の世界に一人取り残された彼女は、合人と出会うことで初めて正面から”向き合い”、”対話”する。それは決してロマンティックなだけの行為ではなく、彼女の他人には見せたくない暗がりの部分をさらけ出していく。そのことに傷つくことは当然で、しかしそれこそが対話するということでもある。都合の良いだけの関係はありえない。自分の嫌な部分、駄目な部分。それすらもひっくるめて会話している二人の姿は非常に良いものだと思った。

また、もう一人のヒロインである世田谷風子の存在も気にかかる。彼女の着ぐるみはおそらく自らを一匹の獣とみなすと言う意義、すなわち人間から外れた存在への憧れ、あるいは志向であるのだろう(あるいは自分自身が外れた存在であるという訴えか?それは誰への?)。それは鎧か主張なのか。合人は彼女にどのように向き合っていくのだろうか。ともあれ非常に先が楽しみな作家である。

ああ面白かった。

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誰かに助けを求めることは悪いことじゃない、とはよく言うけれど

それが相手の迷惑であるかも知れない、そう考えること自体が傲慢な考えには違いない。それでも、自分自身がこの世に生きていることが誤まりだと感じている人間にとっては、誰かに助けを求めるという行為は、自分自身の居場所を喪失する恐怖に通じており、傲慢なる罪悪感の温床となる。たしかにどこかで断ち切らなければならないのだが、それを行うことはある種の鈍感さが必要になる。それをやってしまっては(自分自身にとって)取り返しがつかなくなるのではないか、と言う恐怖もまたある。未熟さゆえの潔癖さ、生きることの不器用さ。まあそうかもしれないが…そんなことまで責任は持てんよなあ。
 
 
昨日と今日で買ったものです。

1.『ROOM NO.1301 #8 妹さんはオプティミスティック!』 新井輝 富士見ミステリー文庫
2.『セカイのスキマ(2)』 田代裕彦 富士見ミステリー文庫
3.『星屑エンプレス2 きりきりなぼくの日常』 小林めぐみ 富士見ミステリー文庫
4.『暗闇にヤギを探して』 穂史賀雅也 MF文庫J
5.『Y十M ~柳生忍法帖~(5)』 原作:山田風太郎 漫画:せがわまさき 講談社
6.『 ギロチンマシン中村奈々子 義務教育編』 日日日 徳間デュアル文庫

実は富士ミスが大好きだったらしい。わたくし、新刊全部買ってしまいましたわ。

『暗闇にヤギを探して』について。
好き。とにかく大好き。あまりにも僕が好き過ぎる話でした。愛です。

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2006.10.05

『ジョン平とぼくと』読了

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ジョン平とぼくと』(大西科学/GA文庫)読了。

ゆるいなあ…。

正直なところを言うと、この作品はあまりにも全体的にゆるさが徹底されていて、ひたすらだらだら続いているだけの、どこが日常でどこが盛り上がりどころなのかすら曖昧な作風は、個人的には素直に面白いとは考えにくいのだけど、それでも、どこか真剣になり過ぎない、全体を一歩引いてみるかのようなまなざしがクールだと思った。ぶっちゃけた話、どこが面白いのかも上手く説明できないのだが、帯で小川一水が褒めているのは分かるような気がする。むやみに悲壮で深刻で仰々しい物語を作る前にちょっと肩の力を抜いて、そして日常のSF(すこしふしぎ)にも目を向けてみるとそれだけでもけっこう面白いものだ、というようなことなんだろう。こういうのも悪くは無いな。

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ここ数日で買ったもの

ぐつぐつぐつぐつといい感じに煮詰まっています。嘘です。どうしようもない泥沼感で一杯です。あーやってらんねー。愚痴を言い出すと切りが無いけど、上手くいかないことばかりでイライラ。余裕が無いねえ。器が小さいねえ。

1.『彩雲国物語 緑風は刃のごとく』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
2.『風神秘抄』 荻原規子 徳間書店
3.『アイシールド21(21)』 原作:稲垣理一郎 漫画:村田雄介 集英社
4.『魔人探偵脳噛ネウロ(8)』 松井優征 集英社
5.『史上最強の弟子ケンイチ(22)』 松江名俊 小学館
6.『二四〇九階の彼女』 西村悠 電撃文庫
7.『キノの旅Ⅹ』 時雨沢恵一 電撃文庫
8.『バッカーノ!1934 獄中編 Alice In Jails』 成田良悟 電撃文庫
9.『狼と香辛料Ⅲ』 支倉凍砂 電撃文庫

『彩雲国物語』。これすっげえ。まさか延々と今まで主人公がやってきたことを全否定するとは…。

荻原規子のこんな本が出ていたとは…全然気がついていなかった。一年以上前の本じゃねーか…。

近年、ネウロの作者の松井優征って実は女性なんじゃないかと言う気がしているのだが。なんか弥子がネウロに対して感じている感情って、非常に”乙女”な感じなんだよな…。

『二四〇九階の彼女』については、はい、すいません。タイトルだけに引かれて買いました。シンプルだけど無駄にスケールの大きいところが気に入った。

最近の『キノの旅』のイラストはどんどん女の子っぽくなっているような気がする。表紙のイメージもなんか違うし。

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2006.10.04

『The MANZAI(3)』読了

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The MANZAI(3)』(あさのあつこ/ピュアフル文庫)読了。

”平凡”であることに拘る歩が、漫才の相方として彼を勧誘する秋本に引きずられながら、自分が何のために生きていくのかを見出してく話である。平凡であるために漫才と言う自分を主人公にする行為を忌避する歩だったが、自分にはない熱意と実行力を持つ秋本に対して憧れにも似た劣等と感じ、忌避しながらも無視できない。どこのツンデレだこの主人公は。まああまりにも主人公の心情のピュアっぷりには、いわゆる汚泥に身を浸していないあまりにも繊細すぎる感情で僕にはあまりにまぶしすぎる。たとえば、男同士でくんずほぐれつにベタベタとスキンシップをしあう主人公たちをみていると思わずのたうち回りたくなるほどの気恥ずかしさがあった。まあこの気恥ずかしさこそがこの作者が描く少年小説の醍醐味ではあるのだが。まあけっこう好きですよ、うん。

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2006.10.03

『ストームブリンガー』読了

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ストームブリンガー』(マイケル・ムアコック/ハヤカワ文庫FT)読了。

エルリックとザロジニアの結びつきと言うのは、今読んでみると全く説得力が無いのだが(薔薇を捨ててこっちかよ、みたいな)、そんな些事などどうでも良いとばかりに世界の終わりの最終戦争であります。善と悪、敵も味方もすべてが殺戮と破壊の終局になだれ込むラストは圧巻の一言。僕のファンタジーに対する原体験は、紛れも無くこの作品に拠る部分があるということを思い起こさせてくれた。あまりにも悲劇的過ぎる結末に、開いた口がふさがらないという感情を味わったのも、おそらくはこの作品が最初だろう。だが、何よりも現実の幻想が混沌と交じり合い、夢と悪夢とより悪夢的な現実が具現するイメージの乱舞は僕のトラウマの一つでさえあるのだが、この作品の醍醐味はそのような古典的とさえ言える幻想性と、悪を為しつつ善を生み、善を希求しつつ破滅をもたらすエルリックという矛盾と葛藤に満ちた主人公が中心に据えられているところである。いかにもヒロイックファンタジーな冒険を繰り広げていても、それでもなお自分の為した冒険を懐疑してしまう救われなさや、自らの幸福と愛すらも信じられない決定的な不信があって、そんな極めて人間的な葛藤が神々の戦いすら左右してしまうところにムアコックの耽美とすら言うべき倒錯があると思うのだ。

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2006.10.02

ライトノベルレーベルにもいろいろある

1.『輝石の花』 河屋一 富士見ファンタジア文庫
2.『死神とチョコレートパフェ』 花凰神也 富士見ファンタジア文庫
3.『マリア様がみてる 大きな扉と小さな扉』 今野緒雪 コバルト文庫
4.『新装版 ウイークエンドシャッフル』 筒井康隆 講談社文庫

スレイヤーズをこの世に送り出し、ライトノベルブームの牽引役として確固たる地位を築いてきた富士見ファンタジア文庫も、ここ数年(5年以上前か?)は電撃文庫、角川スニーカー文庫に押され、昔日の勢いはない(なお資本上は左記の三つはすべて角川資本であるという点は現時点では考慮しない。あくまでもレーベルカラーの問題である)。ライトノベルスタンダードの電撃、やや一般向けを志向する角川と比較すると、富士見は低年齢層(十代前半ぐらい)向けの作品を多く出しているように思える(すでに二十歳を超えて久しい自分が未だ愛読しているという事実はここでは考慮しない)。しかし、個人的な意見を言わせてもらうならば、尖った作品を出しすぎた結果飽和状態に陥りつつある電撃文庫より、また一般向けを志向しすぎて”普通に”面白い小説を出す文庫(無論それが大変重要な点であることは言うまでもない)になっている角川スニーカー文庫よりも、いわゆる”ヘンテコ”な小説が出てくる確率が一番高い富士見ファンタジア文庫と言うレーベルに、僕は近年注目しているのである。まあ煮ても焼いても食えない作品もあるにはあるが、一昨年あたりからこの文庫で賞を取った作品の”ヘンテコ”振りが大変素晴らしいと思うのである。まあ別に統計を取って比較検討したわけではなく、単に読んだ本の印象がひたすらに”ヘンテコ”だったというだけのなのだが、およそこの文庫は近年のライトノベルブームからは逆送するかのように、泥臭ーい作品ばかり出している。ぱっと思いつくだけでも『トウヤのホムラ』などは由緒正しい伝奇小説の系譜だし(続きはまだか…)、『琥珀の心臓』などはついてこれるやつだけついて来いと言い切る大暴走ロボット小説だったし(融合!合体!進化!)、ちょっと前の話だけど貴子潤一郎の「12月のベロニカ」なんぞは驚天動地のファンタジーミステリだったし(本気で騙された…富士見で本を出したという時点ですでにトリック)、まあ何が言いたいかというと富士見ファンタジア大賞でデビューした作品にはライトノベルブームに不可欠のもの”萌え”がない。もう全くない。逆さにしてひっくり返しても無いんです(富士見ミステリー文庫は別。というか富士見ファンタジアに無い”萌え”を補完するためにあるんじゃないかという気さえしてくる)。よく探してみれば萌え萌え小説もあるのかもしれないけど、少なくとも僕の視界には入ってこない。あるのは、「なんじゃこりゃあ!」という作品しかないのであった。とりあえずライトノベルとしてはなにかがおかしい作品ばかりなので、変なものが読みてえなあというときにはファンタジア文庫の新人賞系をあさるのが正しいライトノベラーのあり方ではないかしらんと思う今日この頃であった。何のまとまりも無いが終わり。

ああ、何の気なしに買ってみたファンタジア大賞の準入選と努力賞の上記作品ですが、やっぱり変な話で満足でした。といってもまだ『死神とチョコレートパフェ』しか読んでいないんだけど、これ、物語の最初から最後まで主人公とヒロインが延々とスコップとフォークで殺しあったりほのぼのしたりしているだけの作品なんですよね。つまり悪役がほとんど出てこないバトル小説。これであの変な黒い虫が出てこなければ完璧だったのに…。もうちょっとで空前のバカ小説になったのに惜しいことよ…(勝手な言い分)。

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2006.10.01

『彩雲国物語 紅梅は夜に香る』読了

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彩雲国物語 紅梅は夜に香る』(雪乃紗衣/角川ビーンズ文庫)読了。

仕切り直しの回らしく、嵐の前の静けさ、あるいはネタふりあるいは伏線中心になっている。まあいろいろエンターテインメントとしてもドタバタやっているけど、今回の話の肝と言うか重要どころは「がんばれ」と言う言葉の安直さ、押しつけがましさとそれに対して抗しようとする秀麗のあがきみたいなところのように思えた。また、レッテルを貼られ、規定されることへの嫌悪みたいなものが表われているのが面白い。秀麗自身が社会的弱者として位置づけられているせいか、逆に弱さに対して比較的寛容であるのも、偏見かもしれないが女性作家としては珍しくも感じた。まあちょっと分かり易すぎるのだけどね。

有形無形の困難に立ち向かうヒロインの周囲にいろいろ美形男が登場してちやほやするという、まあ女性向け願望充足ファンタジーっぽくはあるんだけど、このようにエンタメ以外のところで興味深いところがあるので、なかなか侮れない作品であると常々思う。面白かった。

テーマが現代的過ぎるのは、まあ良し悪しか。

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