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2006.10.18

『クジラのソラ01』読了

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クジラのソラ01』(瀬尾つかさ/富士見ファンタジア文庫)読了。

僕が好きなところはどこかと言えば、やっぱりイメージ。とにかくイメージ。最高。宇宙空間というのはそれだけで美しいものだけど(無論、それは地獄とすれすれであると言う美しさだけど)、宇宙空間に浮かび上がる”クジラ”のイメージにとにかく痺れる。大きな大きな、ただひたすらに巨大な存在。リリック。その歌を聴いたとき、人は新たなステージに昇るのだ。

そして何より美しく描かれるのは、登場人物たちの視点の行方。主人公たちがひたすらにソラ(空、宇宙)を見上げるその視線、それは届かない憧れと、失われたものへの寂寥感と、すべてを取り戻そうとする貪欲さと、見送るものの諦観がある。全員が見上げるその先には、それぞれが見るものが異なっていて、それは後々への悲劇への予感を感じさせながらも今はただそれぞれの思いを胸の中に収めるだけだ。彼ら、彼女らの想いは、言語にすればひどく単純なものになりかねないけれど、これは言語化してはいけないものがあって、おそらくソラを見上げる行為だけが、彼らの感情に名付けることなく曖昧なままでそこに立ち上がらせることが出来る。これはそれでいいのだ。夢とか野心とか、そんなものは口に出せば出しただけ嘘になる。行きたいものは行きたいし、知りたいことは知りたい。それでいいんじゃないの?読者が共有出来るのは、その視線だけ。その視線にこめた想いはそれぞれ違うわけだから。

この小説を読んでいるとイメージの力を改めて感じる。決して饒舌な小説じゃないし、そもそもキャラクター小説ですらない作品だけど、ソラを見上げると言う行為だけで確かに読者に(少なくとも僕に)感じるものがあって、僕はただため息をつく。

惜しむらくはややエンタメに寄ってしまったところ。キャラクタがちょっとラノベ的?ライトノベルとしては仕方の無いところであるけど、富士見ファンタジア文庫では大成しないと思われる。早くハヤカワ文庫が拾い上げてくれる事を期待しよう。

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