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2006.09.15

『天涯の砦』読了

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天涯の砦』(小川一水/ハヤカワJコレクション)読了。

小川一水とは愚直な作家である。

愚直と言うのは貶し言葉ではない。本質的には物語が下手なタイプである(と勝手に考えている)この作家の、物語に対するストイックな姿勢に対して愚直であると言う印象を感じるのだ。

物語に対するストイックな姿勢と言うのは、たとえば宇宙ステーションでの大事故によって救助も無く取り残された主人公たちの決死のサバイバルと言う今作の、いかにもハリウッド的な設定でありながら、ハリウッド的な物語を拒否している点である。

大事故によって取り残される人々に直面する試練とは、決して分かりやすい悪人でもなければ、次から次に迫ってくる天災でもなく、あまりにもご都合過ぎる不運でもない。物事には原因と結果が必ずあり、惨事が起きるには起きるだけの理由が無くてはならない。それを無視して物語をつむげないところに、この作者のストイックさ、誠実さが垣間見えるように思う。

そしてそのストイックさは作者をも縛り付ける。宇宙ステーションなんて過酷な環境下に建造される建造物に、二重三重の安全装置が起動してないはずもないわけで、それでも物語を盛り上げるために主人公たちを危機的状況に陥らせる必要がある。そのための理由付けに四苦八苦しているところもまたこの作家らしい。そのためかサスペンスものとして盛り上がらないのは仕方のないところだけれど、SF災害モノとしてはなかなか面白いと思う。サバイバル部分の地味な、しかし当たり前の緊張感は素晴らしいのではないだろうか。

ただ、わざわざ自分の苦手な分野に挑戦しているところは実に真面目だと思うのだが、もう少し力を抜いて書いてもいいのではないかと思う。今のままでは縛りが厳しすぎて窮屈さを感じてしまうのが惜しい、と感じてしまった。

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