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2006.09.02

『八木剛士史上最大の事件』読了

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八木剛士史上最大の事件』(浦賀和宏/講談社ノベルス)読了。

作者のあまりにも戦闘的な部分が表に現れすぎた奇怪作だと思いましたよこれは。設定とか物語の展開を個別にみてみれば、どこのアニメ、ゲームですか?と言いたくなる程度のものなのだが、そこに浦賀和宏成分が過剰に含まれてしまったためにとにかく凄まじい存在力(そんざいちから)を放っている。とりわけ主人公の八木剛士のルサンチマン全開の思考のあまりの痛々しさや、彼が受ける学校でのいじめの暴威には、まさしく”苛められた視点”でしか悟れない圧倒的な絶望感がある。そして八木剛士が物語の最後で出会う”最大の事件”。これがまた皮肉と自嘲に満ちた凄まじいもので、これはちょっとネタバレになってしまうのだが、要するに自分は選ばれた人間なのだ、と言うことを心のよすがにしていた八木を徹底的に痛めつけるのは、理不尽ないじめでもなければ非現実的なスナイパーの存在でもなく、彼が馬鹿にしていた日常つまりは現実の修羅場であり、それに対する自分と言う存在のちっぽけさと言う事実そのものであったと言うことがあまりにも皮肉極まりないと思う。その痛みは本質的には松浦純菜そのものがもたらしたものではなく、彼が味わう恐怖、怯惰、羞恥、それこそが最大の敵であったということなのだ。現実においては、彼は好きな女の子に誤解されたとしても、それを追いかけて誤解を解くことさえも出来ないヘタレ、真の意味で駄目男であると言う事実があって、それを取り繕うことは、どんな不死身の能力があっても出来ないのだ。この物語は非現実、つまりはフィクションの世界に逃げようという強い志向性を持ちながらも、それでもなお現実は容易に追いついてくる絶望感こそがこの物語の真のテーマであろうと思った。

まあとにかく浦賀和宏サイコー、と言うことで。

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