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2006.09.30

『ジャストボイルド・オ’クロック』読了

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ジャストボイルド・オ’クロック』(うえお久光/電撃文庫)読了。

人間と家電が共存するSF世界を、センスが良く、軽快なタッチのライトノベルハードボイルドに仕上げているのはさすがの手腕だった。『悪魔のミカタ』シリーズとはやや方向性が異なり、本当にポップで明るい雰囲気に支配されている。ハードな事件を、しかし飄々と解決するストーリーテリングは円熟の境地に達しつつあるようにも思う。無論、その明るさの裏には過剰なまでの人間的な愛憎があって、そこから生まれる情念が単に作品をポップで明るいだけにしないアクセントにもなっているところも良い。安易に鬱展開に持っていくのではなく、人間の不幸を踏まえたうえで前向きな物語を紡ぐあたりに作者の抑制が感じられる。もしかすると『悪魔のミカタ』シリーズでは色濃く残っていた過剰なライトノベル風味を相当にそぎ落とそうという意図があるようにも思え、うえお久光は『シフト』を通じてあたらしい領域に手を伸ばそうとしているのではないか、と思った。

個人的には宇宙空間での最終決戦を”ショートカット”しているところが素晴らしいと思う。物語としては、あそこでジュードが決意をした瞬間に物語のテンションとしては最高潮に達しているわけで、あそこでノタノタとバトルをやられては興ざめになるところを、あえてばっさり切った度胸を褒め称えたい。まあ伏線なのかもしれないけど。

外見はハードだけど中身はやわらかく、無理はするけど無茶はせず。ほとんどの人には役に立たない目覚まし時計を、もしかしたら必要になる人のところへ届けるため、ちょうど良い感じでいきましょう。

そんな物語なんでしょうねえ。

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