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2006.08.17

『月光とアムネジア』読了

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月光とアムネジア』(牧野修/ハヤカワ文庫JA)読了。

牧野修らしい記憶と現実がごちゃごちゃに入り乱れるカオティックさが心地よい。牧野修は一般的にSFホラー作家として認知されているものの、個人的にはただただ書いているものが結果的にSFになっているだけであって、実のところSFとはあまり関係がないように感じる。無論この『月光とアムネジア』もSFと言い出せばSFでないとはいえないのだが、それでもやっぱり牧野修の小説でしかないのである。

牧野修はただひたすら『世界』を書くのに拘っている作家であり、そして彼のもつ世界観と言うのは、正しく”悪夢”的ななにかが根底にある。それはいわゆる”電波的”と呼ばれるもので、正常の論理が通用しない狂った理が根底にあって、読み手にどこか違和感を与えてくるのだ。

牧野修作品を読むと言うのは、まさしくその世界認識に対するズレを読むと言うことであり、違和感を覚えることを楽しむと言う思想が必要だ。格好良いとか悪いとか、そのような次元の問題ではなく、ただ何かが狂っている。ピースが歪んだジグソーパズルのように、全部はめたとしてもなにかがおかしく、しかし、全体としては調和が取れている。そんな何が牧野修の作品にはあるのだ。

どこか滑稽でなにかが物悲しく、そしてなにかが”おかしい”。これはそんな話である。

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» 月光とアムネジア/牧野修 [本を読みながら日記をつけるBlog]
牧野氏の作品は初めて読んだのですが、非常に存在感のある文体の方です。 改行の多い部分と妙に密度の高い部分の落差、接続詞の多い台詞回し、これら一見すると悪文とされかねない要素がふんだんに奢られているにもかかわらず、ぐいぐい読ませる力があります。 60年間誰..... [続きを読む]

受信: 2006.08.19 23:55

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