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2006.08.03

『pulpⅢ』読了

475772869701
pulpⅢ』(森橋ビンゴ/ファミ通文庫)読了。

陳腐に始まって陳腐に終わるとの作者の言葉通りにごくごく当たり前の平凡さでもって物語を終わらせたこの作品には一定の評価を行うべきと思う。非日常への憧れとその失墜を描いたこの作品の終わりが日常への回帰となるのは当然の帰結であり、その”当然”と呼べる日常性こそがこの作品の本質なのだろうと感じる。と言うのは、この作品においては、(超常的な要素こそ無いけれども)極めて一般的なライトノベルフォーマットに基づく非日常を舞台にしながらそこで語られているのは、平凡な心の動き、すなわち単なる日常に過ぎないのだ。以前僕はラノベフォーマットの上に生きた感情とが息づいている、と言うようなことを書いたのだが、それこそがまさしく平凡とさえ言える日常性を付与している部分であり、この作品の肝となる部分である。ただ、3巻を通読して感じたことは、果たしてライトノベル的な非日常性が果たして必要だったのかどうかと言う疑問だ。結局、徹頭徹尾この作品は平凡で日常的な感情の流れを扱っている。戦いに向かうそれぞれの感情はさまざまだが、物語を動かすものは嫉妬や恋情など当たり前の感情に過ぎず、それがサスペンス部分に結びつくのかと言うと…これがぜんぜん結びついているような気がしない。それこそとある大学のキャンパスでの物語に改変しても大して違和感が無いんじゃないか、という気さえする。まあぶっちゃけていうと伝奇部分を何度読んでもあまりのご都合主義的な展開に眩暈がしてくると言うかぜんぜん面白くないと言うことであり(主人公たちの感情のリアルさとあまりに乖離したご都合さ)、その点に最後まで気にかかってしまったのが残念であった。もうちょっと日常性と非日常性を上手くすり合わせてくれれば、非日常から日常への帰還というテーマも生きていたのではないかな。正直なところ、この作品内では日常と非日常が地続きでありすぎると思う。

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