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2006.08.01

『薔薇のマリア Ver.1 つぼみのコロナ』読了

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薔薇のマリア Ver.1 つぼみのコロナ』(十文字青/角川スニーカー文庫)読了。あわわ、こりゃまた凄いもんを読んじまったぜ…。

マリアローズが主人公であった本編と同時期に同じ場所で、異なる人たちが悩み、傷つき、それでも日々を生きていく姿が描かれている。レニィとコロナの二人は、『薔薇のマリア』本編においてはただのチョイ役でしかなくて、彼らの悩みや苦しみを描かれることは無かったけれども、描かれないからと言ってないわけではない。物語の外で彼らの人生は続いているのであり、そして、今回、レニィとコロナの物語がわずかに語られたけれども、それ以外の人々にだって人生がある(それこそファニー・クランクでさえ)。そういうことをきちんと描かれているところに、作者の重要なこだわりがあるのだろうと思う。

以下各話感想。

「青年は西に向かう」
「この旅は終わらない」

実質的な前後編である。要するにレニィとコロナが出会うの図なわけだが、これがまた素晴らしい。自分の大切な存在である弟を単なる理不尽によって奪われたことによる、やり場の無い怒りとも憎しみともつかない焦燥を抱くレニィの内面を描いているんだけど、この描き方がまた良いんだ。死んだ弟に対する怒りと悲しみ、殺した相手への憎しみ、妾腹の子である自分に対する父親の仕打ちへの苛立ちなどの情念を、コロナと出会い、絶体絶命の窮地の中、必死で生き延びようとすることで消化していくなんてあたり、これはどこの文学なのかと思ったよ。もともと十文字青はライトノベルの皮を被った現代小説を書く人なのだと言うことを再認識した気がする。

「人は一人では生きてはいけない」

一人では生きていけない弱さを抱えたまま苦界に身を落とそうとした少女を引っ張り上げる少年の話。これは舞台を現代に移しても普通に小説になりそうな気がするけど、やっていることもそんな感じ。他人に迷惑をかけないように一人で生きていこうと気を張っていたって、それすらも出来ないどうしようもなさを抱え込むことの苦痛がこれでもかと描かれる。コロナというキャラクターの裏には、身を引きさかんばかりの苦しみがあって、しかもそれは彼女だけのことだけではない。だからみなそれを抱えたまま寄りそって生きていくしかないのだなあ、って話なんだろうな。

「いつか咲く花」

レニィってのはすげえいい男だなあ…。「たとえ咲かなくたって、俺はいつまでも待ってやるよ」なって台詞はなかなか言えることじゃねえ。確かに恥ずかしい台詞であるかもしれないけど、この言葉には、相手の存在を丸ごと受け入れるという意思表示なわけで、すべてにおいて絶望的な、それこそ人生において致命傷(やりきれないがコロナにとっては比喩ではない)を受けてしまったコロナにとってはいかほどの喜びであったのか。そして二人はクソッタレな仲間とともに、クソッタレな迷宮に、クソッタレな町を一緒に歩いていくのである。

ああ、そうか。この作品は恋愛小説として読むべき作品だったんだな。

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