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2006.08.07

『永遠の戦士エルリック(3) 暁の女王マイシェラ』読了

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永遠の戦士エルリック(3) 暁の女王マイシェラ』(マイクル・ムアコック/ハヤカワ文庫FT)読了。

表題作「暁の女王マイシェラ」と「薔薇の復讐」の2編を収録した新版エルリックの3巻。例によって両作の間には十年単位で発表年代がずれている(はず)。あわせて読んでみると、本当に別ジャンルの作品なのではないか、と言うぐらいに作品としてのカラーが違うなあ。

「暁の女王マイシェラ」は、「この世の彼方の海」と同様に、コルム、エレコーゼら、エルリックと同様のエターナルチャンピオンの化身たちと出会い、異次元の怪物を召還するセレブ・カーナを倒すためのアイテムを手に入れると言う話。この頃のムアコックはあまり女性キャラの興味がないらしく、(タイトルにもなっていると言うのに)マイシェラの活躍はほとんどない。単に冒険を動機付ける役目だけで、冒険が終われば粛々と退場するだけの存在でしかない。こういうマッチョな思想と言うのは、個人的な良し悪しは別にして、いかにもかつてのヒロイックファンタジー的であった。エルリックというキャラクターの特異な点である”自己の良心というものの規範”と”力を求める本能”の相克と言う部分もあまり表面化していないし、まあ普通に面白い作品だと思う。しかし、あまり古びていないと感じられるのは、エルリックという現代的なナイーブさを抱えたヒーロー像のおかげだろうか。

「薔薇の復讐」については、実は、自分はこの作品が大変好きだと言うことに気がついてしまった。僕が気に入っているのは、これは実に正しくファンタジーであると言うことです(ヒロイックファンタジーではなく)。例によって異次元と言うか並行世界に迷い込んだエルリックが、そこでさまざまな冒険をしていくという展開なのだけど、その冒険の中身が実に風刺的であり寓意的なのだ。「移動する町」の描写なんて、どこの「ガリバー旅行記」を読んでいるのかしら、僕は、と言う感想を抱いてしまったほどである。
キャラクターも大変魅力的で、特に女性キャラクターの生き生きとした描写には目を見張るものがある。本当に「暁の女王マイシェラ」を書いた人と同じ人なのかと思ってしまうぐらいに、活動的で、他者に依存することのない自立した女性達が大勢出てきたところには、執筆した世相を反映しているようで面白かった。また、読者が考える魅力的なヒロイン像と言うのも時代によって変わってくるのだろうな。要するにメインヒロインである「薔薇」は大変萌える、と言うことが言いたいのだけど。

ところで、「薔薇の復讐」の最後で、いつエルリックが「あなたが――蜘蛛だったのですね」と言い出さないかどうかすげーハラハラしたよ!邪神弱えー!人間強えー!本当にこれ書いているのはムアコックなのか!と言うぐらいに希望に満ち溢れていて腰が抜けました。嘘ですが。

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