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2006.07.23

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』読了

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少女七竈と七人の可愛そうな大人』(桜庭一樹/角川書店)読了。

これは、単純に言ってしまえば、少女が生まれ育った町を、友人を、思い出を捨てて旅立つまでの物語なのだろう。ある地方都市において、彼女を異形とまでなさしめるほどにうつくしい少女である七竈は、美しすぎるがゆえに生じる世界からの孤独感と、孤独を分かち合う少年と心を通わせる。しかし、彼女の母が為した行為は、七竈の身にも常についてまわり、彼女の狭い世界において、さまざまな感情の軋みを淀ませる。世界から生じる、悪意とも善意ともつかない、ただ激しい感情を前に、七竈は静かに対峙し、時に戦い、許し、逃げ出そうとする。それら苦難は、七竈が「少女」であると言うことと密接に結びついていて、子供でもあり大人でもあると言うあいまいな立ち位置が、彼女の世界を周囲の大人たちによって自由に消費されてしまうという現状に、強烈に否を唱えるものの結局は流されてしまう無力感をもたらしている。そんな世界を打破するために、少女は旅立たなくてはならなかったのであり、それはすべてを捨てて逃げ出す行為と同義であろうとも、それでも彼女は抜け出さなくてはならなかった。多くの人を傷つける行為であるとわかっていても、かつてあった最良のものを捨てる行為であったとしても。彼女がその選択を後悔する時があるのかもしれないし、あるいは過去を振り返ることもしないかもしれないが、それでも旅立った。その選択を肯定していたのが、同様に、世界に対する無力に抗った、それゆえに多くの人を傷つけた七竈の母親であったと言うところは興味深い。母親にとって、七竈は行為の結果であり、彼女の選択がいかなるものであったかの答えそのものだ。七竈が決断を下したことで、母親にとっても必要なものを得たのかもしれない。だから母親は家に戻り、旅をやめる。彼女の旅は終わった。そして七竈の旅はこれから始まる。「少女」から脱し、異形から平凡へと至る道を、秀麗から老残へなさしめる道を歩み始めるのだ。To be continued!戦いは続く。

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