『ZOO』読了
ハードカバーを持っているのになんで僕は買っているんだろう…。ボーナストラックのためだけに買うにはちょっと高すぎるぜ!というわけで、ハードカバーに収録されていた10編に未収録作品衣1編を加えての文庫化。この作品集は映画にもなったし乙一作品の中では一般に膾炙しているほうだろうか。中身はいつものとおりグロテスクで切なく残酷で暖かい、そんな印象を持つ作品ばかり。乙一にはよく白乙一、黒乙一と呼ばれることがあるけど、正直、僕にはその違いが良くわからない。乙一の作品には、暗くおぞましい物語であってもどこか静謐ないとおしさのようなものがあり、また、切なく暖かい物語であっても疎外と孤独が付きまとっている。どちらも同じことを書いているに過ぎないと思う。ようするに読み手がどう受け取るか、という問題なのだろう。
何度読んでも傑作としか言いようが無い『SEVEN ROOMS』は、まさしく乙一が持っている残酷さとせつなさが炸裂する至高の一品である。なんでこんな設定でこんな感動の物語になるのか不思議なのだが、そこがまさに乙一の真骨頂といったところか。あと昔読んだときはいまひとつピンとこなかった『ZOO』が、ようやく理解できた様な気がするのは個人的には収穫。自分で始めた演技が、引っ込みがつかなくなって、それでもやめるきっかけがつかめなくて、自分自身でも痛々しいとはわかっていても、それでもやめられないどうしようもなさを感覚的に理解するべきだったようだ。わかってから言うことじゃ無いけど、別に理解したくも無い感覚だったな…。あとオチをすっかり忘れていた『落ちる飛行機の中で』の結末には素でびっくりした。スラップスティックなシチュエーションコメディかと思ったらこれかよ・・・。何でぜんぜん記憶に無いんだよ俺…。ちなみにボーナストラックである「むかし夕日の公園で」については過度の期待は禁物です。不気味で物悲しい、不思議な作品なんだけど、いかんせん短すぎる…。
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