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2006.06.10

『彩雲国物語』読了

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彩雲国物語』(雪野紗衣/角川ビーンズ文庫)の既刊を全部読みふけってしまった…(書影は一巻)。

お、面白い。面白すぎる。

この作品はいわゆる中国風の異世界を舞台にしたファンタジーであり、その意味では一般的な「ライトノベルファンタジー」そのものであるのだが、僕がすばらしいと思うのは、この作品の舞台となるのが「大きな戦乱が終結し、復興を迎えつつある大国」であるという点だ。

戦乱が終結し、とりあえずではあるが平和を取り戻しているが、国の安定という意味では問題が山積となっているため、この物語において主役となるのは”文官”である。すなわち異世界ファンタジーにおいてはしばしば英雄的な主人公の影となり、ひどいときには小役人的に描かれ、組織に囚われた小人として、英雄である主人公と対比される傾向にある”お役人”こそがこの物語の主人公なのだ。

国を愛し、国を立て直すために粉骨砕身で取り組む役人たちの世界に、女の身でありながら男の世界に身を投じていくヒロイン、秀麗の苦難を描いているのがこの物語のメインストーリーになる。そこに彼女にひたむきな愛と、王としての責務に苦悩する国王劉輝と、官吏として国のために生きることで、その愛にこたえることのできない秀麗のすれ違いを横軸に、そのほかさまざまな登場人物たちを配した群像劇として見事だった。キャラクター的な部分に少女マンガ的な影響が多く見られるが、それもさほど鼻につくことがないのは波乱万丈の大河エンターテインメントとしての流れがしっかりとあるからだろうと思う。

一巻のころはそれでもライトノベル、あるいは少女小説的なテイスト(男はみんな美形ばかり、ヒロインモテモテ、砕けすぎる台詞回し)などが目立ったが、巻を重ねるごとに圧倒的な物語のダイナミズムはうねりを増し、長編では最新刊の杜影月 編の最終話となる「光降る碧の大地」に至っては、一巻丸ごとクライマックスといえる怒涛の展開に思わず涙が。義務と信念のもと、自らの命を懸けて民を国を救おうと駆ける姿はまったく持って美しい。

この作品は、読者の清廉に生きたい、という憧れをうまく捕らえてくる作品だと思った。

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