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2006.05.14

『ブラック・ベルベット 菫咲くころ君を想う』読了

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ブラック・ベルベット 菫咲くころ君を想う』(須賀しのぶ/コバルト文庫)読了。

巻が進むごとにうなぎのぼりに面白くなってきた。
同作者の『流血女神伝』とはまた一味違った面白さがあるなあ。『流血女神伝』はカリエというバイタリティ溢れる前向きな主人公がさまざまな苦難に直面しながらも乗り越えていくという部分にカタルシスがあるのだが、それはカリエと言う、ある意味において超人的とさえ形容できる主人公であるからこそ生まれるカタルシスである。それに対して『ブラック・ベルベット』における登場人物たちは、肉体的な戦闘力と言う意味では圧倒的に上だとしても、人間的な器やその精神のあり方においてカリエの足元にも及ばない。登場している人間は、善人も悪人も心の中に弱さを抱え、偏狭な価値観や虐げられた恨みなどから自由ではいられず、目の前の現実に屈しそうになったり逃避しようとしさえする。前巻において主人公であるキリの師匠となったハル神父でさえ、その過去にはぬぐいきれない罪の意識を抱えていることが判明してしまう。友人ファナを失った悲しみに打ちひしがれるキリ、キリの友人ロキシーをはじめとして、それぞれが罪を抱えているところが興味深く感じた。敵も味方も、善人も悪人も、それぞれは等しく弱さを抱えており、あるものはそれを乗り越えようとし、あるものは劣等感に飲み込まれていく。それでいて根本的な部分では人間の善性が素朴に信じられているあたりが読後感を非常にさわやかなものにしている。そこには『流血女神伝』には無いカタルシスがあるのだ。

(それにしても僕が一番好きなグラハムが全然活躍しねーぞ…。どーなっとるんだ、ああ?)
 
(…色々と台無しだなおい)

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