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2006.05.03

『夏期限定トロピカルパフェ事件』読了

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夏期限定トロピカルパフェ事件』(米澤穂信/創元推理文庫)読了。

小市民シリーズ第二弾となるこの作品は、作者の青春ミステリへの志向が存分に発揮された作品で大変に楽しい。青春ミステリとは何かといえば、あくまでも僕の定義するところではあるが、少年少女時代における感情の揺れ動きを描いているのが青春小説であり、その揺れ動きがミステリに結び付けているものではないかと思う(別に同意してもらう必要はないし、そもそもこの定義もしょっちゅう変わる。別にいいじゃないか!)。

ちなみに僕がこのシリーズに”青春”を感じるのは(ちょー恥ずかしい言い回しだなあ)、主人公二人の小市民になろうと肩身を縮めて頑張っている部分であったりする。この”決意”という奴は、明らかに二人の中学生時代の経験に対する過剰反応とでもいうべきものであって、はっきり言って見てらんない。個人的な意見ではあるのだが、そもそも自分自身を本当の意味で変革し、別のものになるというのは土台が無理な話なので。状況に対する対処の方法を身に付けること(行為)は出来たとしても、状況に対して反応すること(感情)は決して変える事は出来ないのだ(変わっていくことはある)。

であるがゆえに、この二人の関係が破綻を来たすのは自明の理である。しかし、自分自身を変えることが出来る、と思っているあたりにどんなに頭が良くても少年少女特有の全能感に満ちていて、まさしく青春だなあ、とおっさんに差し掛かりつつある自分は思ってしまうのであった。一見、謙虚に見えて、その実極めて傲慢な二人の姿にはちょっとまぶしいものを感じる。しかし、青春小説の常として、そのような無邪気な希望は挫折の定めにある。幸福な関係は続かない。ま、結局、自分自身から逃げられないという事実から目をそむけているには頭が良すぎたのだろうな、この二人は。”決断を下してしまえる”というあたりに二人の強さと脆さを感じた。

しかし、自分自身から逃げられなかったとしても、時間の流れは必ず変革を促す。それは本人たちの望んだ方向ではないかもしれないが、関係は必ず変化しているのだ。それは必ずしも意識できるものではないかもしれないが、変化の過程にあるものはえてしてそれに気が付かないもの。”変わらない”という事実に一つの決断を下した彼らが、次は”変わってしまった”という事実に対して決断を下していくのが次巻以降の焦点になっていくのだろうと思うのだが果たして。彼らの選択を楽しみにしつつ次巻を待つことにしたい。
 
 
(…なんか恥ずかしい事を書いているような気がしてきた)

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