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2006.05.13

『されど罪人は竜と踊る Assault』読了

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されど罪人は竜と踊る Assault』(浅井ラボ/角川スニーカー文庫)読了。

『されど罪人は竜と踊る』の過去編。ガユスはいかにしてクエロたちと出会い、絆を深め、そして別れたのかが描かれる。しかし、悶々とグルグル空転する思考の迷路に嵌っているガユスはこの頃からガユスだったのだなあ、と感じるのだが、微妙に世慣れない印象も無い事も無いかもしれない。どっちだよ。

一般的に見ればそれでもまだまだ暗いのだが、さすがに黄金時代というだけあって、本編と比べれば大分明るい。何よりガユスが拾われた咒式事務所の所長、ゲオルグと言うきちんとした大人(キャラ的な意味ではなく、作品の中でガユスを始めとする若者達を教え、導いているという意味で)がいるのが物語の雰囲気を闊達なものにしているのだと思う。おそらく本編で致命的なまでに足りていないのが、このように物事の清濁をまとめて飲み込み、最善ではなく最良を選択出来る大人なのだと思う(ラルゴルキンが唯一の大人だが、彼はガユスに常に関わるわけでもないし、ガユス側から見てもゲオルグと同じ立場にはなれない)。若者達は皆”(自分にとって)正しい世界”を、いっそ純粋なまでに追い求め、そのために傷つき、時には立ち直れないほどの深手を負ってしまうのだが、そもそも世界に対して期待するのではなく、自分でより良い居場所を作り、そして守る事が出来るのが大人なのであろう。翻ってガユスは若者である。かれは世界に悪意が満ちている(ように見える)ことに気が付かないほどに鈍感ではなく、世界がより良い世界があるということに期待せずにいられるほどに達観はしていない(大人になりきれていない、とも言えるのだが、おそらく悩む事を止めてしまったとき、かれは彼たる由縁を失うこととなるのだろう)。だから彼の苦悩はひたすらに彼の内面に沈下し、ヘドロのように彼の心身にまとわりつくのだが、ゲオルグという確かな大人は、口に出さないガユスの苦悩をきちんと拾い上げているところに、この過去編の救いがある。それは本編では決して得られぬ救いであって、本編における悲惨さがより一層浮き彫りになってしまう悲しさがある。

良くも悪くも過去と言うものはある種の物悲しさを帯びるものだ、と言う事をこの本を読んで感じた。

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» されど罪人は竜と踊る Assault/浅井ラボ [ラノベ365日]
されど罪人は竜と踊る Assault浅井 ラボ 角川書店 2006-04-28by G-Tools 【気に食わない仲間、どうしようもない友人、誇り高き恋人。そんな連中に囲まれて過ごした青臭い日々。甘美な麻薬のように心を縛る、それはガユスにとっての黄金時代。】 ガユスっているだろ、ガユス..... [続きを読む]

受信: 2006.05.17 01:59

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