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2006.04.24

『サンタクロースのせいにしよう』読了

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サンタクロースのせいにしよう』(若竹七海/集英社文庫)読了。

あまりにも端整な日常の謎ミステリ。北村薫を思わせる優しく穏やかな描写と、ハッとするほどの悪意を描写がとてもいい。優しさも悪意も、そのどちらもが平凡な日常の中に表裏一体となって存在している。そんなほんのちょっとした善意と悪意が絡み合い、不思議な謎が立ち表れる。この作品の面白さとは、その謎と当たり前の感情の動きが乖離することが無いところにあるのだろう。最大の謎は(陳腐な言い方ではあるけど)人の心であって、そこには光もあれば闇もあるのだ。

収録されている作品の中で一番気に入ったのが「虚構通信」と言うあたりが僕の嗜好を如実に表しているが、要するに現実を虚構としてしか生きられない人間が、現実は虚構であると言う自己認識に耐え切れなくなるという話であって、どこにも逃げ場の無い閉塞感が、どうしてか暗い喜びを感じてしまった(実に病的だ)。あと「空飛ぶマコト」の身も蓋も無いところもグッド。恋愛は戦場だ!という話(たぶん)。スラップスティックな魅力が満載の表題作「サンタクロースのせいにしよう」や、非常に叙情的な「死を言うなかれ」なども面白かった。この作者はお話ごとの出来不出来のばらつきがほとんどなくて、どの作品も端整かつ美しいのが良いですね。人間のどす黒さをきちんと組み込み、しかしニヒリズムに落ち込まないバランス感覚も僕の好みでした。

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