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2006.04.23

『どんがらがん』読了

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どんがらがん』(アブラム・デヴィットスン/河出書房新社)読了。

実は奇想コレクションを読むのはこれが初めてなのでした。最初に読むのがアブラム・デヴィットスンに決めたのは編者が殊能将之だったからと言うのが理由のすべてではないにしても比較的大きいかも知れない。

読んでまず思ったことは、「これが奇想か」と言うもの。過激でもなく過剰でもなく、ただただ「なんか変」といった印象を感じさせられる不思議な作品が多い。それでいて作品そのものはロマンティックだったり人情ものだったりスラップスティックだったりとレパートリーに富んでいる(例えば、「パシャルーニー大尉」などはいかにもまっとうな人情ものなんだけど、背景が複雑怪奇なところが不思議だった)。ただ根本となる発想そのものが僕の常識を超越していて、そもそも何が起こっているのかがわからない作品もいくつかあって、おそらく前提となるべき知識があるのだろうなーという気がした(「すべての根っこに宿る力」とか)。しかし、何が起こっているのかさっぱりわからないなりになんかすげえと思わされてしまったのだから、文句のつけようも無いんだけどさ。

この作家の面白さと言うのは、なんでこんな事を考えつくのだろうかと思わざるを得ない発想と、その裏腹(ってのもおかしいが)にある弱者に対するシンパシーから生じる優しげ(あるいは痛ましげ)な視点が根底にあることだと思う。この作家対していわゆる”奇想”という言葉から感じる先鋭さよりも、どこか不思議な懐かしさすら感じるのはそのあたりに原因があるのかもしれない。

収録作品はどれも大層面白かった。印象に残る作品はいくらでもあるが、やはり冒頭の「ゴーレム」のインパクトはすごかった。一番最初と言う事もあるのだけど、世界的危機が老夫婦のしょーもない日常的な会話によって回避されてしまうほのぼのさが思わず爆笑してしまう。アホだ、アホすぎる(最上級の褒め言葉)。表題作の「どんがらがん」のスラップコメディっぽい作品も、そのビジュアルイメージと”どんがらがん”に関わる主人公たちのしょーもない展開には思わず笑ってしまうと同時に、あれ、これはひょっとして遠未来ものでミュータント小説なんですか?と感じてしまった奥の深さがよかった。その他にも緊迫したサスペンスあり、非日常に満ちたファンタジーありで実にバラエティ豊かであるところに作者の懐の深さを感じた。こんな作家は見たことねーなー。奇想コレクション、ありがとう!

というわけで、大変良い読書をさせていただきましたとさ。

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