『カーリー ~黄金の尖塔の国とあひると小公女~』読了
ああ面白い。かの大英帝国の植民地であるインド。異国の地にある小さな、しかし厳然と区別された箱庭の中で出会った二人の交流を描きつつ、ドイツ、ロシアを始めとする列強の脅威が迫る中、さまざまな陰謀に翻弄されるインドにおける冒険物語。
とりあえず、高殿円はわかってんなー、と。寄宿舎に来たら夜のお茶会!女の子同士の秘密のお話とか、ほのかに香るエキゾチックな美少女とか、謎めいたスパイとか、渦巻く陰謀とか、まさしく英国学園もの、冒険小説ものとしてかくあるべきという見本であり、それら元ネタへの深いオマージュになっている。渦巻く陰謀は未だ全貌を見せず、第二次世界大戦の予兆は刻一刻と迫り、二人の前途にはまだまだ暗い影が立ち込めている。彼女らの冒険はまだまだ始まったばかりだ。これからの冒険活劇を楽しみにして行きたい。
話は変わるが、主人公の心の強靱さには驚くべき限りだ。幼い頃に母親がいなくなり、意地悪な義弟と神経質で口うるさい継母に囲まれながら、元気一杯、天真爛漫に育っているのには畏敬の念すら感じる。継母に毎日雷を落とされながら、捻くれもせずによくもまあ真っ直ぐな気性よ…。状況はかなり大変なのに、すがすがしさすら感じるお話になっているのは彼女の性格のおかげかね。つーか、高殿円は少女が主人公だと、明るく爽快、不幸なんざぶっ飛ばせ的(謎)な豪快な話になって、少年が主人公だと、思い悩み、苦しみ、ナイーブな物語になるのだよなー。少年は悩み少女は前に進むもの、ということなのかしらん。
とりあえず、我輩はこういう作品は大好物でありますので、大変美味しく頂きました。グラッチェ!
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント