« 『蟲と眼球とチョコレートパフェ』読了 | トップページ | 『策謀のイェンディ 暗殺者ヴラド・タルトシュ』読了 »

2006.04.30

『やみなべの陰謀』読了

415030845401
やみなべの陰謀』(田中哲弥/ハヤカワ文庫JA)読了。

仮にもライトノベル(を中心とした)感想を書いていながら、小生、田中哲弥を読むのは初めてなのでした。ああ、ライトノベル(SF)読みならば必ず読んでいなくてはならない基本的テキストといっても過言ではない(過言だよ)田中哲弥を今の今まで読まなかった事を深く反省するとともに、この本を今まで手に取らなかったとこを過去の自分に対して説教してやりたいと思います(秘剣神隠しを覚えたら)。

勿論嘘です。

それはそれとして面白かった。時間ライトノベルSFの傑作!とか大変ベタ褒めされている本作でありますが、本当にアイディア満載の時間SFである事には驚きを禁じえない(実は疑っていた)。いわゆる連作短編集というやつで、それぞれに残される僅かな繋がりが最終的に一本の線に繋がっていくという構成になっている。まさかブギーポップ以前にこの形式をやっているライトノベルがあったとは全然知らなかった…。しかもかなりのレベルで成功している…(とは言え、完全には明確になっていないところもある。守と茜の関係とか。ま、あえて語らないというところもあるのだろう)。

読んでいてふと感じたのは、「これ、どこの奇想コレクション?」と言うもので。つまりこの間読んだばかりのアブラム・デヴィットスンとの奇妙な相似を感じたのである。例えば、アイディア、設定は呆気に取られるほどにバカバカしいのにやっている事は極めてシリアスでリリカル、感動的でさえあるというところにまさしく”奇想”があるのだ。「マイ・ブルー・ヘブン」なんて、大阪府による侵略が続く近未来の日本を舞台に、大阪の文化(ボケ、ツッコミ)を押し付ける府に対する文化的レジスタンスの絶望的な戦いを描いたハードボイルドだった。また「ラプソディー・イン・ブルー」なんて大村井くんとマキムラマキという爆裂的に強烈なキャラクターを出しながら、若者の友情と恋を描いた青春物であるという愉快すぎる話だった。他の作品も大体においてそんな感じ。真面目にふざけているという印象で、そんなところがアブラム・デヴィットスンと良く似ていると思った。

まあ今の電撃文庫からは出てこないタイプの作品だよなーとも思った。

|

« 『蟲と眼球とチョコレートパフェ』読了 | トップページ | 『策謀のイェンディ 暗殺者ヴラド・タルトシュ』読了 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/9602376

この記事へのトラックバック一覧です: 『やみなべの陰謀』読了:

« 『蟲と眼球とチョコレートパフェ』読了 | トップページ | 『策謀のイェンディ 暗殺者ヴラド・タルトシュ』読了 »