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2006.04.30

『やみなべの陰謀』読了

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やみなべの陰謀』(田中哲弥/ハヤカワ文庫JA)読了。

仮にもライトノベル(を中心とした)感想を書いていながら、小生、田中哲弥を読むのは初めてなのでした。ああ、ライトノベル(SF)読みならば必ず読んでいなくてはならない基本的テキストといっても過言ではない(過言だよ)田中哲弥を今の今まで読まなかった事を深く反省するとともに、この本を今まで手に取らなかったとこを過去の自分に対して説教してやりたいと思います(秘剣神隠しを覚えたら)。

勿論嘘です。

それはそれとして面白かった。時間ライトノベルSFの傑作!とか大変ベタ褒めされている本作でありますが、本当にアイディア満載の時間SFである事には驚きを禁じえない(実は疑っていた)。いわゆる連作短編集というやつで、それぞれに残される僅かな繋がりが最終的に一本の線に繋がっていくという構成になっている。まさかブギーポップ以前にこの形式をやっているライトノベルがあったとは全然知らなかった…。しかもかなりのレベルで成功している…(とは言え、完全には明確になっていないところもある。守と茜の関係とか。ま、あえて語らないというところもあるのだろう)。

読んでいてふと感じたのは、「これ、どこの奇想コレクション?」と言うもので。つまりこの間読んだばかりのアブラム・デヴィットスンとの奇妙な相似を感じたのである。例えば、アイディア、設定は呆気に取られるほどにバカバカしいのにやっている事は極めてシリアスでリリカル、感動的でさえあるというところにまさしく”奇想”があるのだ。「マイ・ブルー・ヘブン」なんて、大阪府による侵略が続く近未来の日本を舞台に、大阪の文化(ボケ、ツッコミ)を押し付ける府に対する文化的レジスタンスの絶望的な戦いを描いたハードボイルドだった。また「ラプソディー・イン・ブルー」なんて大村井くんとマキムラマキという爆裂的に強烈なキャラクターを出しながら、若者の友情と恋を描いた青春物であるという愉快すぎる話だった。他の作品も大体においてそんな感じ。真面目にふざけているという印象で、そんなところがアブラム・デヴィットスンと良く似ていると思った。

まあ今の電撃文庫からは出てこないタイプの作品だよなーとも思った。

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2006.04.28

『蟲と眼球とチョコレートパフェ』読了

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蟲と眼球とチョコレートパフェ』(日日日/MF文庫J)読了。

日日日作品に関しては、もはや何を言うべき言葉ももたない。作者の持つ文章のセンスと言うのは、本当に目を見張るほどに読み易く、つるつると何の抵抗も無く読めてしまうのには心底脱帽するしかない(何しろ小学生だって読んでいるくらいだ)。そして、あまりにも未熟すぎる世界観の居たたまれなさに関してもまったくいつもの通りである。

最大の問題は、日日日作品は何を読んでもいつ読んでも同じ印象しか感じられないことだな。何巻を読んでもちっとも(作者のキャラクターも)成長している感じがしない。なんと言うか、同じところをぐるぐる回っているだけで、某かのブレイクスルーがいつまでたっても見えてこないような気がする。結局、語り口の流麗さに比して、構築している理論が子供の理屈に終始している。

それは作者の若さもあるのかもしれないけど、同時にセンスだけで書いている事の弊害もあるのだろう。センスと言うのは多分に天然なわけで、そこには作者から搾り出されたものが無いように思う(そんなものが必要であるならば、だが。それを言い出すと話が終わらないので保留)。

結局、僕の価値観からすると、主人公たちの言動、行動はすべて欺瞞に過ぎないし、屁理屈に過ぎないと感じるので、その生理的な嫌悪が作品の評価を捻じ曲げている可能性は十分にあるのだが、まあ結局僕と作者の世界観が合わないというだけの話なわけで、無理に迎合することもなかろう、と思ったりもした。

なんでぐちゃぐちゃ考えながらまでして読んでいるのかといえば、やはりこの作者の才能の凄みは間違いないものがあるし、いつかきっとどえらい傑作を書いてくれるという可能性はかなり高いと思うのだ。

だけど、こーゆー癖のある理屈が無くなったら日日日は日日日じゃなくなる可能性があるので、難しいところだな。

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2006.04.27

『つばさ』読了

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つばさ』(麻生俊平/MF文庫J)読了。

麻生俊平の久方ぶり(だったと思う)の新刊であります。個人的には『ザンヤルマの剣士』は未だに傑作だと考えていて、お気に入りの作家の一人であります。ただまあ、あくまでも個人的にだけど、色々問題というか弱点を抱えている作家でもあるわけで…。

それはともかく内容については、とりあえず面白かった。ただ一つを除いて平均以下の主人公が美少女たちに囲まれて事件に遭遇し成長するというまったくお約束の集積と言うしかないが、とても丁寧に仲良しな空間を作り出そうとしているので不快感は感じない。その意味ではとても面白い。
だが同時に素直に面白いとは言い難いところもあって。と言うのはあまりに売れ線を狙いすぎている部分のことなのだが、机上に売れ線を狙っていて、要するに現在のエロゲーフォーマットを下敷きにしたハーレムものと言えなくもないのだが、そのわりにはヒロインズの造型がいかにも80年代~90年代的な、いわゆる記号的ではない造型をされているわりにはやっている行為が過剰だったりしてなんと言うかバランスわりーなー、と。上手さよりもあざとさを感じてしまうのは問題だなー。口の悪い言い方をすれば、基本的に地位も名誉もある大人が若者の流行に被れているのを見ているような居心地の悪さを感じてしまうのだ(正直、麻生俊平に”女の子いっぱーい”、”ラブーラブー”とか”萌えー”みたいな作品を書かれても困ってしまうわけで。というかもっと男を出せと。おっさんを出せと。爺さんを出してくれと心の底から願うわけですよ僕は)。

麻生俊平は、インパクトよりもエピソードの作家だと僕の中では定義されているので、実際にはある程度巻を重ねないと分からんので、主人公がこれからどのようなスタンスを獲得していくかによって、この作品の評価は変わりそうな気はします。そのためにもちゃんと続きを出してくれると良いなあ。という所が僕の感じたところです。

いつもの事ですが、作品の内容についてはろくに喋っていませんが勘弁して下さい。

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ホビージャパンは売れ線路線?

浅木原書店さんのとこで知ったのだが、ホビージャパンがライトノベルレーベルを出すらしい。それだけなら別段珍しくもないけれど、その面子を見て驚愕。ひかわ玲子に藤原征矢に挙句の果てには渡辺まさきかよ!!(ってか驚くポイントが浅木原さん(馴れ馴れしい)と同じだよ…)。渡辺まさきはなーんか好きなんだよなあ…。売れなかったらしく富士見ファンタジアですぐに消えたけど(まったく富士見はダメだなあ。ちゃんと育てろよ)。

楽しみ楽しみ。

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ネット外交と言うものに興味が沸いてきた

今更かよ、なんて言っちゃいやん。

1.『よつばと!(5)』 あずまきよひこ メディアワークス
2.『エルナサーガⅡ(7)』 堤妙子 スクウェア・エニックス
3.『ソードゲイル(1)』 佐藤信 講談社
4.『されど罪人は竜と踊る Assault』 浅井ラボ 角川スニーカー文庫
5.『涼宮ハルヒの憤慨』 谷川流 角川スニーカー文庫
6.『アンダカの怪造学Ⅲ デンジャラス・アイ』 日日日 角川スニーカー文庫
7.『マキゾエホリック case2: 大邪神という名の記号』 東亮太 角川スニーカー文庫

・とりあえず『よつばと!』は超最高。よつばの跳ね回る姿も楽しいが、周囲の大人たちのスタンスが素晴らしい。”子供の世界”を細心の注意を払って守っているよなー。
・『エルナサーガⅡ』もこれで完結。んーちょっと話が大きくならずに終わったか…。”神”の話は匂わせるだけかー。
・『ソードゲイル』は前評判とか先入観なしに買ってしまった。以外と面白い。
・角川スニーカー文庫が大漁だった。考えてみると、僕はこの文庫をけっこう買っている気がするなあ。

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2006.04.26

『ジャンクル!』読了

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ジャンクル!』(木村航/ファミ通文庫)読了。全然まとまんねーなー…。

す、すげえ。ちょっとこれはすごすぎる。何よりもまず、巨大にして狂猛な生命力に満ちた植物によって支配された地球で、植物と(文字通りの)共存をすることでかろうじて生を許されている人間たちというイメージに心が引かれる。そして物語を動かす駆動源となるものとして人間の狂気にも似た情念が根底にあるのも大変に良い。また、荒々しい世界観に狂言回しとしてのカラスのような禍々しくもトリッキーなキャラクターも光っていると思う。トキシコははっきり言って男から見るとちょームカツクんですが、臆面もなくあんな発言が出来るあたりすごすぎる。また圧倒的な生命力を満ち溢れた世界と、その野生の中でこの世のすべてに喧嘩を売って口汚く罵り戦う少女(そして少女たちの)の姿にはひどく心が動かされてしまった。

これは少女が戦う話であって、恋や怒りや憎しみにと言ったあまりに人間的な感情に満ちた少女たちの姿には、”萌え”には決して還元されえない力強さがあるのだ。

文明を破壊し蹂躙する巨大植物と言うと、同作者がシナリオを書いた『SEVEN-BRIDGE ~セブンブリッジ~』(ライアーソフト)を思わせるし、情念渦巻く人間の精神と奇妙な寓話性の融合と言うのも『Forest』(同じ)と似通った感覚で描かれているように思える。思うに、未完成品(文字通りの意味)として世に出てしまった描かれなかった『SEVEN-BRIDGE ~セブンブリッジ~』でやり残した事を形を変えて描いているのではないかなあ、と思った。決して救われない人々が約束の地を目指して旅をするなんてまさにそれじゃん?…と言うのは半分以上が願望です。

んーなんか上手くまとまらない。木村航の作品の感想を書くのに苦労するのは毎度の事なのだが、この作品はとりわけ言語化しにくい。何がどう面白い、と言うのは明確には出来ないのだが、物語を構成するパーツ(一つ一つは決して独創的ではない)が組み合わさり総体としてなにがしかのイメージを形作っているように感じるのだ。ただ、そこで見せられているイメージが、果たして一体なんなのか…。そこが明瞭に把握できない。おそらくは”少女”という記号と”凶暴なまでの情念”と”決して美しいだけではない生命というもの”とか、なんかそんなよーな外郭があるようには思うのだが…。

そのような未知の部分もまた、この作者の魅力ではあるのですがね(無理矢理)。

全然まとまらないが感想終り。

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涼宮ハルヒの4話を見て

いきなり『涼宮ハルヒの憂鬱』がすべて終わった後の後日譚が4話目に来るという変則的な構成ではあるが、『憂鬱』でこれから起こりうる事件の伏線としてきちんと機能しているところは評価をしておくべきだと思う。また、憂鬱の時点では視聴者の好感度がマイナスまで行きかねないハルヒと言う存在を、キョンの存在を意識していたり、キョンに怒られるとむくれたりする”普通”の少女であるという部分を全面に出しているのも良いと思う(これが視聴者に意識されているかどうかで『憂鬱』のラストの印象もまったく異なるはず)。その意味ではこの回は、その一見トリッキーに見えながらも、むしろ視聴者に対して窓口を広げる意図があるのだろうと感じた。

ただ、物語を時系列に(順番に)追っていくことに拘る人にはウケが悪いだろうなあ…。

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本を読もうとするとそのまま意識を失いそうになる

いや眠くて。

1.『塵骸魔京 ~ライダーズ・オブ・ダークネス~』 海法紀光 ファミ通文庫
2.『呪われた町(上)(下)』 スティーブン・キング 集英社文庫

・鳥賀陽の徹頭徹尾主旨一貫した心底ゲス野郎(女だが)ぶりにはある意味、尊敬にも似たおぞましさを感じる(どんなだ)。
・んなっ!?”風のうしろを歩むもの”に○○をつけるだとッ!メルクリアーリ…なんつーマニアックな…。
・か、管理人さん、おばさんなんてとんでもないっすよ!
・以上、塵骸魔京好き好き大好きっ子の戯言でした。
・ダークタワーを読んでいて、なんとなくスティーブン・キング作品の予習をしておいた方が良いような気がしたため購入した。しかし、何を読んでも「この裏にはダークタワーの存在が絡んでいるのか・・・」と思ってしまうな。

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2006.04.24

『サンタクロースのせいにしよう』読了

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サンタクロースのせいにしよう』(若竹七海/集英社文庫)読了。

あまりにも端整な日常の謎ミステリ。北村薫を思わせる優しく穏やかな描写と、ハッとするほどの悪意を描写がとてもいい。優しさも悪意も、そのどちらもが平凡な日常の中に表裏一体となって存在している。そんなほんのちょっとした善意と悪意が絡み合い、不思議な謎が立ち表れる。この作品の面白さとは、その謎と当たり前の感情の動きが乖離することが無いところにあるのだろう。最大の謎は(陳腐な言い方ではあるけど)人の心であって、そこには光もあれば闇もあるのだ。

収録されている作品の中で一番気に入ったのが「虚構通信」と言うあたりが僕の嗜好を如実に表しているが、要するに現実を虚構としてしか生きられない人間が、現実は虚構であると言う自己認識に耐え切れなくなるという話であって、どこにも逃げ場の無い閉塞感が、どうしてか暗い喜びを感じてしまった(実に病的だ)。あと「空飛ぶマコト」の身も蓋も無いところもグッド。恋愛は戦場だ!という話(たぶん)。スラップスティックな魅力が満載の表題作「サンタクロースのせいにしよう」や、非常に叙情的な「死を言うなかれ」なども面白かった。この作者はお話ごとの出来不出来のばらつきがほとんどなくて、どの作品も端整かつ美しいのが良いですね。人間のどす黒さをきちんと組み込み、しかしニヒリズムに落ち込まないバランス感覚も僕の好みでした。

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今日買ったもの

カプコンの『大神』を買おうかどうか迷っている。やっている暇はないだが、なんとなく買わないといけないような気がするのだ(大抵錯覚であることが多い)。

1.『戦う司書と黒蟻の迷宮』 山形石雄 スーパーダッシュ文庫
2.『幻想水滸伝Ⅲ(11)』 志水アキ メディアファクトリー

ハミュッツ・メセタの意外な本質が明らかにされる新刊はほぼ全編バトルに次ぐバトルが大変にグッドなのだが、一番面白いのがウィンケニーの自分の存在意義の狂おしく求めて足掻いている姿だと言うところにこの作品の面白いところだと思う。あと幻水3もようやく完結。全部書き下ろしで11巻と言うのもすごいことをやったなあ、と。とりあえずお疲れ様でした。

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2006.04.23

『どんがらがん』読了

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どんがらがん』(アブラム・デヴィットスン/河出書房新社)読了。

実は奇想コレクションを読むのはこれが初めてなのでした。最初に読むのがアブラム・デヴィットスンに決めたのは編者が殊能将之だったからと言うのが理由のすべてではないにしても比較的大きいかも知れない。

読んでまず思ったことは、「これが奇想か」と言うもの。過激でもなく過剰でもなく、ただただ「なんか変」といった印象を感じさせられる不思議な作品が多い。それでいて作品そのものはロマンティックだったり人情ものだったりスラップスティックだったりとレパートリーに富んでいる(例えば、「パシャルーニー大尉」などはいかにもまっとうな人情ものなんだけど、背景が複雑怪奇なところが不思議だった)。ただ根本となる発想そのものが僕の常識を超越していて、そもそも何が起こっているのかがわからない作品もいくつかあって、おそらく前提となるべき知識があるのだろうなーという気がした(「すべての根っこに宿る力」とか)。しかし、何が起こっているのかさっぱりわからないなりになんかすげえと思わされてしまったのだから、文句のつけようも無いんだけどさ。

この作家の面白さと言うのは、なんでこんな事を考えつくのだろうかと思わざるを得ない発想と、その裏腹(ってのもおかしいが)にある弱者に対するシンパシーから生じる優しげ(あるいは痛ましげ)な視点が根底にあることだと思う。この作家対していわゆる”奇想”という言葉から感じる先鋭さよりも、どこか不思議な懐かしさすら感じるのはそのあたりに原因があるのかもしれない。

収録作品はどれも大層面白かった。印象に残る作品はいくらでもあるが、やはり冒頭の「ゴーレム」のインパクトはすごかった。一番最初と言う事もあるのだけど、世界的危機が老夫婦のしょーもない日常的な会話によって回避されてしまうほのぼのさが思わず爆笑してしまう。アホだ、アホすぎる(最上級の褒め言葉)。表題作の「どんがらがん」のスラップコメディっぽい作品も、そのビジュアルイメージと”どんがらがん”に関わる主人公たちのしょーもない展開には思わず笑ってしまうと同時に、あれ、これはひょっとして遠未来ものでミュータント小説なんですか?と感じてしまった奥の深さがよかった。その他にも緊迫したサスペンスあり、非日常に満ちたファンタジーありで実にバラエティ豊かであるところに作者の懐の深さを感じた。こんな作家は見たことねーなー。奇想コレクション、ありがとう!

というわけで、大変良い読書をさせていただきましたとさ。

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2006.04.22

『天使のレシピ』読了

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天使のレシピ』(御伽枕/電撃文庫)読了。

結論から言うと、とても面白かったと思う。内容は電撃文庫らしく天使が表れて心を持て余す少年少女たちの手助けをするという内容なのだが、そう言ったいかにもライトノベル的なラブコメ部分は、実はほとんど存在しない。あるのは、ただひたすらにストレートな恋愛物語なのだ。おそらく、恋愛をすると言う事は、”自分自身”と”自分と他人”の関係を幾度となく確認し、見直していく作業そのものなのである、と言うような事をこの作品を読んでいて感じた。つまり、人を好きになる事で自分の内面に変化が生じ、その変化そのものが新たな変化を相手に(そして周囲に)もたらしていく。”好きになる”という行為は、それが内面に秘められたものであったとしても、極めて積極的な行為であり、ただその感情だけで世界は変革を迎えるのだ。

ただ、実のところ僕はこの作品をきちんと理解出来ていないような気がする。”天使”が言う”心を落とす”という行為が、果たしていかなる意味を持つのかと言う事が漠然としか把握できず(それは自分の心が思い通りにならないもどかしさの比喩なのだろうか?)、僕の理解に即した形でフィードバックが出来ないでいるのだ。そこの理解をなくして真の意味でこの作品を理解出来たとはいえないと思うし、その意味では批評を下す事も出来ない。もしあるのであれば、作者が考えているはずの”天使”と”恋人”と”心”にまつわる物語をこれからも読んで行きたい、と思わされたのは、おそらくはそのような理由なのだろう。

以下各話感想。

「超告白-cognition-」
とても良い。これはどの作品にも共通することだが、いわゆるラブコメとは一線を画している。いわゆるキャラクター小説では全然無いのだが、恋に戸惑い浮き立つような焦燥感と、不思議な喜びという感情の描写が隅々まで行き渡っており、それを自覚できない語り手である少年の葛藤が不思議なユーモアを生んでいる。ただまあ、「恋愛感情を丸ごと落とす」と言う下りは良く理解出来なかったのだが…。無くしていたら感情も無くなるのでは。

「トランキライザーキス-a tranquilizer-」
一見したところ不思議な”呪い”にかかった少女一人と少年二人の三角関係と言った物語に見えるのだが、実際にはお互いに相思相愛でありながら、分かり合えない部分に耐え切れなくなった少女の葛藤と成長の物語のような気がする。「心を落とす」と言う意味も良く分かった。少女が抱える好きで好きでしょうがない気持ちを、少年がきちんと把握していない(出来ない)ことからの逃避と、その代償行為が”トランキライザーキス”なんだろうね。”トランキライザー”にされてしまった少年が非常に男らしくて、それゆえにラストの晴れやかさと対比したほろ苦さを感じた。

「恋愛実験-exchange-」
恋をしたことが無い少年と、自己の境界の揺らぎに怯える少女の、極めて魅力的な恋愛話。いわゆる内気でドジで地味な少女、というライトノベル的な記号としたはありふれた少女の内面が描かれたお話としても読める。”一人称”を主張できず、周囲との関係からしか自己を認識できない少女が、完璧に個としての確立を終えている少年との間に不器用で、しかし甘々な交流をしながらイチャイチャするというなんだか良く分からんがとにかくすごい面白い。デートの場面の中で細かいエピソードをこれでもかこれでもかと繰り出す手法にはノックアウト。なんて可愛らしいカップルなんだ!あと、個として確立している少年自身が、完全に個となる事に対して恐怖した、というセリフもあったのも良い。ラストにはちょっと泣いた。

色々好きなのだがちょっとだけ引用。

「なにをボーっとしている」
は、
「眠いのか?」
「なんでもない!眠くないよっ!えっと、」
それではデートを始めましょう、なんてどういえばいいのか分からない。彼に先導して欲しい。
不意に彼が数歩後ろに下がって、
「私服の雪宮も良いものだな。レポートにまとめる価値がある」
とあごに手をやりわたしの全身を視界に納めながらしみじみと言った。
もうまともに立っていられません!

面白いなあ…。

「ソラヲトベ-separation-」
好きで好きでたまらないと言う気持ちは、相手と自分の間の境界線を取っ払おうと言う志向を常にもっており、それは人間の他者への欲望がもっともストレートに表れた部分なのだろうと思う。それがエスカレートをすれば、それは究極的には”関係”は無くなり、彼であり彼女であると言う状態になる。それは相手のが何を考えているのかわからないと言う疑心、いつかは離ればなれにならなくてはならないと言う恐怖を喪失した関係であるのだが、結局それは単に”自分”しかいないと言うことでもある。孤独でいないためには他人が必要で、他人がいると恐怖が生まれる。別れは常に出会いたいと言う渇望と表裏一体だ。そうやって傷つけ合って、不安に駆られて生きるしかない人間が、それでも自分と相手の間に繋がりを求めている時、「好き」と言う言葉が生まれている。それは単なる言葉でしかないし、それぞれのエゴでしかないのだけど、それでも求める気持ちは狂おしく消えようも無いのだ。怒り憎しみ嫉妬しそれでも恋焦がれる許されざる恋人たちのエピローグには、単に恋愛小説というだけではないコミュニケーション小説としての側面を見せていたのが面白かった。

続きは出るのかなあ(ひょっとしたら出ないかもしれない。これ以上の結論が出せるとは思えないしな)。

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僕はSFは門外漢だけど

国内SFファン度調査(06年オールタイムベスト版)をやってみた。

結果は以下のとおり。

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『神狩り』山田正紀
『戦闘妖精・雪風〈改〉』神林長平
『マルドゥック・スクランブル』冲方丁
『アラビアの夜の種族』古川日出男
『太陽の簒奪者』長篇版 野尻抱介
『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』飛浩隆
『かめくん』北野勇作
『銀河英雄伝説』田中芳樹
『星界の紋章』森岡浩之
『猫の地球儀』秋山瑞人
『あなたの魂に安らぎあれ』神林長平
《戦闘妖精・雪風》2部作 神林長平
『第六大陸』小川一水
『チグリスとユーフラテス』新井素子
『レキオス』池上永一
『神は沈黙せず』山本弘
『魂の駆動体』神林長平
『猶予の月』神林長平
《十二国記》小野不由美
『MOUSE』牧野修

以上20作品で、あなたは275 人中 94番目で偏差値は52.8です。
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”こんなものかー”と”意外と高い”の中間くらいの結果ですな。コメントのしようがない。

こっちは国内短篇SFファン度調査

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「象られた力」飛浩隆
「おもいでエマノン」梶尾真治
「言葉使い師」神林長平
「太陽の簒奪者」短篇版 野尻抱介
「海を見る人」小林泰三
「老ヴォールの惑星」小川一水
「酔歩する男」小林泰三
「ボッコちゃん」星新一
「踊るバビロン」牧野修
「漂った男」小川一水
「デュオ」飛浩隆
「夜と泥と」飛浩隆

以上12作品で、あなたは223 人中 123番目で偏差値は46.5です。
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短編は、そもそもタイトルを覚えていないなあ。なんとなく読んでいる話はまだありそうなんだけど…。
しかし、僕の読んでいるSFは以外と偏っていると言う事は分かった。

まだまだ読むべき本は一杯だなー。

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2006.04.21

今日買ったものです

本屋で月刊サンデーGXを立ち読みした。高橋慶太郎の「ヨルムンガント」が連載開始されていたのが非常に嬉しい。「Ordinary±」のころからむちゃくちゃ好きな漫画家なのである。連載紙が廃刊してから沈黙していたのであるが、絵がシャープさを増しながらついに復活。相変わらずごちゃごちゃガチャガチャやっているガンアクションは痛快痛快。楽しいなあ。絵が上手いなあ。

1.『無限の住人(19)』 沙村広明 講談社
2.『ハツカネズミの時間(2)』 冬目景 講談社
3.『蟲と眼球とチョコレートパフェ』 日日日 MF文庫J
4.『つばさ』 麻生俊平 MF文庫J

・『無限の住人』を読む。なにやら得体の知れない感情に心が満たされる。これは何だ?と問い掛けつつ読み進める。ひたすら読む。結論が出た。驚いた。『無限の住人』がメチャクチャおもしれえ。超吃驚した(ヒデエ)。
・しかし、連載当初の面影は欠片も無いな、これ…。一体どこに到達するのだ、この漫画は…。
・『ハツカネズミの時間』を読む。なんだこの得体の知れない漫画は。作者が何を考えているのかまるでわからん。フィクションである漫画に対してこういう表現はおかしいのだが…現実感がまるで感じられん。この曇りガラスで覆われたような”遠い”感触は一体…。
・日日日については置いておく。
・麻生俊平は『萌え』を色々研究しているのはわかるのだけど、意識的に萌えを入れようとするといかんともしがたい痛々しさ、居たたまれなさを感じるので無理しないで欲しいと切に願う。無理に若者に迎合しなくても…。

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『蝿声の王』発売一週間前

『蝿声の王』(18禁注意)が発売一週間前になり申した。目出度い。目出度いのだが、なぜか公式HPでスティーブンキングの『ダークタワー』から引用があったのにはびっくりした。実に驚いた。

だから?とか冷静につっこまれると困るけど。

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2006.04.20

『トリックスターズD』読了

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トリックスターズD』(久住四季/電撃文庫)読了。

お、面白い…。ただし、どんどん電撃文庫のカラーから外れているのだが(本当にメフィスト賞みたいな作品だ)、それは欠点では勿論無く、ここまで完璧に”新本格”をやられてしまってはよくも悪くも言う事が無い。最大の問題と言われる”魔法”の出来る事と出来ない事が明確ではないと言うケチのつけ方は、もはやこの巻に至っては当てはまらなくなっている。今回のトリックにおいては魔法は状況に過ぎず、真のトリックはそれ以外に隠れているのだ(このくらいはネタバレじゃないだろ)。謎のちらつかせ方も、その回収のやり方も、実にスマートで隙がねーなーと感心した。あまりに達者すぎて、よくも悪くもライトノベルの範疇からすら外れているぐらいけど、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

しかし、一巻でも出てきた”あの人”の存在は、この作品のトリックを考える上でのジョーカーだよなー。そもそも魔法使いと言う存在自体が反則なんだけど、”あの人”が出てきてしまっていかなるトリックも成立する可能性があるわけだからかなり卑怯っぽい気もしないでもないが、考えてみれば矛盾はきちんとあるわけで、それを考えればフェアではあるわけだけど。あの人物があんなこと言うわけ無いじゃんねー。
 
 
なんだこのわけの分からない感想は…(我に返った)。

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最近買ったもの

とりあえず眠くて眠くてしょうがないのだが、寝ようとするには体が睡眠を欲さずにだらだらと過ごしてしまうあたり我ながら度し難いものがある。そもそも最近は忙しくなってしまって帰って飯を食ってブログを更新したら後は練るだけしか出来ないという生活はシンプルといえば聞こえはいいが単に余裕の無い生活と言えるだろう。

ちょっと日々の憂鬱ってみました。

1.『地上最強の弟子ケンイチ(20)』 松江名俊 小学館
2.『新暗行御史(13)』 作:尹仁完 絵:梁慶一 小学館
3.『新吠えろペン(4)』 島本和彦 小学館
4.『皇国の守護者(3)』 原作:佐藤大輔 漫画:伊藤悠 集英社
5.『シグルイ(6)』 原作:南條範夫 漫画:山口貴由 秋田書店
6.『とるこ日記 ”ダメ人間”作家トリオの脱力旅行記』 定金伸治 乙一 松原真琴

とにかく眠いのでコメントは省略する。
だがそれでもあえて言うのであれば、『皇国の守護者』と『シグルイ』は必読とだけ言っておこう。『シグルイ』はオタクの教養として。『皇国の守護者』は純粋なエンターテインメントととして。

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2006.04.18

『ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟』読了

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ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟』(上遠野浩平/電撃文庫)読了。

物語の核心なるべき部分をあえて語らず、その周辺を描き続ける事で間接的に中心を語ると言うのが上遠野浩平のスタイルであると思っているのだが、巻を追うごとに描いている周辺部分が、全体のどこにあるのかが読み取れなくなって来ている。本編と外伝の区別が無いと言えなくも無いのだが、そもそもその区別をつける必要性もあまり感じられないところではある。本筋などと言うものは、言ってみれば単なる幻想であり、物語などと言うものは断片的で、てんでバラバラで、統一感も無く、解釈も出来ないものなのであり、登場人物たちはただ目の前に投げ出された状況に対処していく事しか許されてはいない。読者である我々は、ある程度は多くのエピソードを関連付けることを許されているものの、そもそもエピソードに整合性があるのかすら分からない。ただ一つ確かな事は、目の前に突然投げ出された危機も、もしかしたらどこかの誰かが何かと格闘した末に生み出されたものであるのかもしれないし、あるいはどこかの誰かが何とかしたからゆえに現状があるのかもしれない、という繋がりを”信じる”ということであり、ただそう信じる事で自分の行為が無駄ではなかったかもしれないと言う希望を得ること出来るのである。ブギーポップシリーズと言うのは、もしかしたら自分の行為は希望に繋がっていくのかもしれない、と言う行為を積み上げる登場人物たちの消えそうではかない繋がり描き続ける作品なのだろうと思う。今回、ただ世界の敵となって生きた恋人たちの行為が、それは何事もなしえないまま消えてしまうのだが、しかし、その行為を意味あることであったと信じる事が出来るという願いがあると意味では紛れもなくブギーポップシリーズの一遍であると言えるだろう。その物語には終りは無い。何かが終わったとき、何かが始まるのだ、という事を繰り返し繰り返し語り続けることにこのシリーズは意味を持ち始めている、と僕は感じるのである。

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『奇憶』読了

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奇憶』(小林泰三/洋伝社文庫)読了。

この作品は、量子論的なSFとしても、人間の認識が揺らぐホラーとしても隙無く構築されていて、非常に出来が良い作品なんだけれども、何よりもやはり”駄目人間小説”として素晴らしい作品であると言う事が出来る。何が駄目かと言えば、とにかく主人公のすさまじい駄目っぷりが冴え渡りすぎている。真面目で不器用で、何事にもこつこつとやるタイプだが、プライドが高く、偏狭なる自尊心を抱え込みながら場当たり的に物事に取り組み、のちのちにそのツケが回ってきてから後悔し、うろたえ逃げ回り、逃げ回ったこと自体に自己嫌悪し、自己嫌悪する自分をさらに侮蔑し、その状態から抜け出そうとしようとも結局行動に移す事が出来ずに足踏みをして足踏みをしている事に対して自分自身に言い訳をする事で自己正当化をしているのである。…本当に何とかして欲しい。

とにかく過剰に感情移入してしまったので、面白いとかどうとはとても言えなくなってしまったのだが、あまりのダメダメな主人公の心理をトレースしているだけでいかなるホラーよりも精神が痛めつけられてしまった。あまりに痛めつけられたせいで、逆説的に勇気が沸いてきてしまったくらいで、畜生、こんな人生だけは嫌だ!と異様にテンションが上がってしまった。これを読んでからしばらくの間、精神的にも肉体的にも絶好調で、我ながら影響され易い事この上ないが、これはこの作品のもつ細部に神か悪魔かしらないがそのようなものが宿っていると考えて褒めるべきではないかと思った。

SFとしてはともかく、主人公の不思議な過去の記憶を思い起こすにつれて、現実と夢が揺らぎ、物語が混沌を迎えていく部分も大変に面白かったけど、とりあえず主人公の駄目心理独白のすさまじさにシャッポを脱いだ。参りました。

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寝ぼけ頭の戯言

ぶっちゃけた話、忙しいのである。大体、モニターとひたすらにらめっこしているせいで、頭痛もするのである。

ブログなんて更新してないで、早く寝ろよ…と自分に言い聞かせる毎日である(他人事のよーに…)。

1.『魔法先生ネギま!(14)』 赤松健 講談社
2.『スクールランブル(12)』 小林尽 講談社
3.『夏季限定トロピカルカフェ事件』 米澤穂信 創元推理文庫
4.『権現の踊り子』 町田康 講談社文庫
5.『優しい煉獄』 森岡浩之 カッパノベルス 徳間書店
6.『夜の歌 藤田和日郎短編集(1)』 藤田和日郎 小学館文庫

なんか久しぶりに書くような気がする購入報告。なんと一週間ぶりだぜ…(色々間違っている)。

・何の脈絡も無く町田康が入っていますが、自分でも何の脈絡もなく”読め”という電波を受信してしまったのでしょうがないのである。しょうがないったらしょうがないのである。とりあえず目に付いたのを買ったので、果たして作者の中でどのような位置付けの本なのかさっぱり分からないのだが、それもまた一興か。どうでも良いが。
・『ネギま』と『スクラン』はあいも変わらず高品質であるなあ。ネギまの情報量も、スクランの人物関係の処理もとんでもないものであるな。サイコー。
・米澤穂信はとりあえず買うべし。この人は、北村薫が好きな人なら面白がれるような気がするよ。
・本屋で『スクラン』の小説版が出ていた。しかし、どこにも作者名が書いていない。さらにビニールがかかっていて中身すら見えやしねえ。作者名もわからずに小説を買うなんてリスキーなことが出来るか!(でも世間ではそうでもないのかもしれん)。・・・と思ったらアニメの脚本を書いた人らしい。買わないけど。
・ネギまの限定版を見かけた。くわ!限定版など絶対に買わぬ!と良く分からない発言をしてみる。まあ、買ってもしょーがねーし…。

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2006.04.17

『鬼哭の剣 日向景一郎シリーズⅣ』読了

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鬼哭の剣 日向景一郎シリーズⅣ』(北方健三/新潮文庫)読了。

「敵は柳生!」と言う帯に引かれてついつい手にとってしまった日向景一郎シリーズ。素晴らしい。剣豪小説の癖に必殺技が跳躍しての斬撃と言う飛天御剣流に匹敵するスペックを持った日向流VS柳生っすよと言うだけでも、まったくもう北方御大ってば…僕のツボをついてくれますぜ、つー感じなのだが、柳生の陰謀とか野望とかまあとりあえず柳生だったらこれぐらいの悪事は働いているだろ、うん、みたいなお手軽極まりない扱いをされている陰謀論の被害者としての柳生が大活躍です。全員惨殺されますが。
まあ、正直に言って、北方先生には柳生に対する愛はあんまり感じられないんですが、その御大でさえも柳生を出してしまうとついつい国家規模の陰謀をたくらませてしまうあたりに柳生ブランドの強靱さを感じたのだけど、まあ別にそれはいいか。

しかし、このシリーズも久しぶりに読んだけど、いわゆる剣豪小説にハードボイルドの手法を取り込んだ非常に面白い試みをしているんだけど、その上で主人公の日向景一郎の使う”日向流”のあまりの超人戦闘力があったりして、非常にライトノベル読みにもウケがよろしいのではないかと改めて思った。

追記
あと景一郎の人とは思えぬ”けもの”の精神とか、人間性を剥離させる事で剣鬼に近づく森之助とか、とにかくこの兄弟はたまんねーな。この作品には”人”は生きられない。大抵、人間として最も大事なものを置き忘れた人間だけが生き延びると言う、冷酷な倫理がたまらんですよ。

このシグルイどもめ!(褒め言葉)

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2006.04.16

『円環少女(3) 煉獄の虚神(下)』読了

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円環少女(3) 煉獄の虚神(下)』(長谷敏司/角川スニーカー文庫)読了。

おーもーしーれー!このシリーズを読んできて、ここまで素直に衒いなく面白がれたのははじめてかもしれない。勿論今までも面白かったのだけど、伝奇的なハッタリの弱さ(と言うよりも、物語の基本に”理”があり、過剰な衝動とでも呼ぶべきものが無いという事かもしれない)と、物語がどのように動いているのかを一切説明をしない文章(ここは僕自身としては好きなところ。ただ登場人物たちの行動、心情を断片的に抜き出し、一つの物語をツギハギをしている印象がある)など、徹底的にエンターテインメントをしていない部分が、ついに物語と上手く噛み合った感じた。

極めて温度の低い淡々感情を交えず、どこか渇いた皮肉さを感じさせる文体がまず素晴らしいことは言うまでも無いが、その無表情な韜晦に満ちた文体が、どこまでも誰よりも救われない”地獄”に生きる罪人たちの無惨にして平凡極まる生をこれでもかと抉り出す。それは感情移入というものを完璧に拒否し、ただそこにある悲しみも絶望も情愛さえもただあるがままに描写しているところが(これは個人的な意見ではあるが)むしろその絶望的な冷たい感覚を捉えていたように感じた。正直なところ、この読者に不親切な文体といかにもなキャラクター小説的な物語は相性が悪いように感じていたのだけど、多くのどうしようもない理不尽な生を描くと言う事については、(上下巻という分量を費やした事もあり)上手く行ったと思った。

また、前巻で唐突(のように見える)に登場した<神に近い男>グレン・アザレイの描写が素晴らしかった。その持っている論理は、あらゆる意味で青く、幼く、単純に過ぎるのだが、そんな単純な論理だけで”世界”と対峙し勝利せんと言う圧倒的な意志力と、強大にして無比なる能力の描写が卓越している。確かにこれは”人”ではない。同時にあまりに”人間的”すぎると言う絶妙のバランスでもって”英雄”の描写に成功しているのである。そしてそんな神に近い英雄に対して挑む平凡で擦り切れた人間たちという皮肉に満ち満ちた対比がまた良い。そこには世界を守るとかそういうイデオロギーではなくて、ただ自分が自分としてあるための最後の空意地に過ぎないが、それだって何かと対峙する力になるのである。

こうしてみると、今まで僕が感じていた違和感と言うのは、キャラクター小説な部分が物語から乖離しているように感じた事ではないかと思った。つまり作者はキャラクターを記号的に描いている割には、その内面を記号的には描いていないのだが、今回は上下巻を丸ごと使って、その当たり前ですらある内面を描いたおかげで、ようやく”普通”の(ライトノベルではない)小説としての楽しみ方が出来るようになれたので、素直に楽しむ事が出来たのではないかな、と思った。

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2006.04.15

アニメ『ブラックラグーン』を眺めていて思ったこと

お前らそんなにレヴィのことが大好きか。
 
 

・・・当たり前か。

(いやはや、OPを見ていてもレヴィしか出て来ないのには一体なんなのかと心配になりましたよ。EDまでレヴィしか出て来ないしさ…。ちなみに公式はこちら)。

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2006.04.14

『マリア様がみてる くもりガラスの向こう側』読了

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マリア様がみてる くもりガラスの向こう側』(今野緒雪/コバルト文庫)読了。

例によって話はちっとも進んでいないのだが、そんな事をつっこむ話ではないのは言うまでも無いことは勿論である。小笠原邸での人間すごろくがやたらとほほえましくも楽しげで良かった。とりあえずすごい家ですね祥子さん…。それはそれとして瞳子さんの問題は放置っすか?はやく何とかしてやって欲しいものですが、なかなか引っぱって終りが見えない。次巻では、多少は瞳子の真意に迫る事ができるんだろーか。あまり期待しないほうがよさそうだが…。

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2006.04.13

『pulpⅡ』読了

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pulpⅡ』(森橋ビンゴ/ファミ通文庫)読了。

うーん、ちょっとばかり僕の興味から外れてきたかな。僕が一巻を読んだ時にもっとも面白いと思ったのは、現実との妥協が出来ない、あるいは妥協の方法がわからないと言う感覚の中、生きる手段を手探りで探している部分に非常なリアリティを感じた部分なのだが、今回はその部分(つまり、主人公が悩み苦しむ部分)が物語を締める割合としては後退しており、その分普通のサスペンスアクションになっているような気がする。まあ、超常的な要素がまったく出てこない割りには、物語の方向性としては紛れもないライトノベルであると言う不思議さはいささかも減じていないのだけどれども。主人公の敵は超越的な力を持つ人外でもなんでもなく、とある街を根城にするローカルな麻薬組織に過ぎないわりには、その存在感に一般的な小説で言うところのリアリティはあまり感じられないあたりなんかそんな感じだ。別段麻薬組織じゃなくてもいいじゃん?みたいな。それこそ現代学園異能みたいな超常的な集団が相手であっていいような。小説としても荒削りすぎてバランスが悪いので、ガリガリと粗くも鋭いエッジが控えめだと、今一つ僕には楽しみどころが少ないのである。もうちょっと主人公の少年少女が(本人にとっての)現実と戦ってくれないとね…。ただ、たぶんに批評性と物語性を兼ね備えた珍しいライトノベルなんで、その意味では面白かった。

ふと気が付いたが、僕は森橋ビンゴに対して”ライトノベル作家”としては何一つ期待してないらしい。この作家は、記号を用いるよりも、もうちょっと生々しい”何か”を書いてくれた方が面白いんじゃないかと思う。個人的にはライトノベルにはあまり向いていないような気がするけど、このあたりは主観の問題なので断定するつもりは無いけどね。でもエンターテインメントでは全然無いような気がするなあ。

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2006.04.12

『タマラセ 幼馴染はドラゴンを喚ぶ』読了

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タマラセ 幼馴染はドラゴンを喚ぶ』(六塚光/角川スニーカー文庫)読了。

のんびりまったり殺伐アクションも今回が最終巻。緊迫しながらもどこかすっとぼけた味わいは最後まで健在であり、そう言うところに作者の手腕を感じさせられる。勿体ぶった謎の真相が、実は単なる勘違いでした、みたいな腰砕けなオチも、『タマラセ』と言う作品にはむしろ相応しい。単なる誤解と思い込みがここまでこじれて人は死にまくる展開になっているとは…。しかも、数万人が死んだ隕石落下の真相まで、実はたいした陰謀でもなかったりするし。ある意味、とてつもなく残酷無惨極まりない話だよなあ…。死者も、殺人者も誰も救われねーじゃん。
…まったく、亘理は間違いなく最悪の下司野郎ですな。自分が最悪だと気が付いていない最悪ですよ。まさに。

しかし、よくもまあ、殺伐としていながらユーモアに満ちた作品をきちんと管理しているものと感心した。確かに余韻もへったくれも無く無造作に人が死にまくるのだけど、それに対して悲壮にも、逆に過剰にもならないバランス感覚は素晴らしいものだと思う。ま、そのあたりは人の好みにもよるのかもしれないけど。

平磐市以外のタマラセの話も是非読んでみたいと思うので、とりあえず作者はお疲れさまでした。新しいシリーズも楽しみにしております…って何でファンレターになってんの。

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2006.04.11

『薔薇のマリアⅤ.SEASIDE BLOODEDGE』読了

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薔薇のマリアⅤ.SEASIDE BLOODEDGE』(十文字青/角川スニーカー文庫)読了。

うーん面白いよー。エルデンの怪異はひとまず収束し、最後のZOOメンバーに会いに行くためにジェードリへ旅立つZOO一行であったが、ジェードリでは、今まさに街を仕切るマフィアと殺戮こそを教義とする教団の間で決戦が繰り広げられようとしていた。その抗争は、大切な人を守るため、そこに住む多くの人たちに対して血と涙の雨を公平を降らせつつ、凶暴で残酷な祭が今始まる!仲間たちとの大切な時間を過ごすマリアをよそに、笑い、泣き、いがみ合う人たちの物語を描いた異色作である。

限りなく外伝に近い作品で、言うなれば一巻まるごとインターミッションみたいな位置付けになるのだが、そこに生きる人たちの愚かさと悲しさといとしさは、本編となんら遜色は無い。街を仕切るマフィア、バンカロファミリーの個性的な人々や、捨て子たちを集めて”家族”をつくった娼婦の一家、殺戮を救済としてあがめる教団の三者の視点から語られている。あるものは寄る辺無き身を寄せ合い必死に生き、あるものはいがみ合いながらも大切なものを守るために身を捨て、あるいは剣を取り、あるものは失うことの悲しみに耐えられず暴走をし、またあるものは身のうちに秘めた狂気を満たすために人を殺す。そのどれもがあまりに人間的過ぎる葛藤があり、懸命に生き、そして死ぬ。

マリアたちの目の届かないところでも人は生きている、というごく当たり前の事実、そして生きることの困難さと人の愚かさを全部ひっくるめた上で”人間”を肯定すると言う、人間賛歌と言うにはのあまりにも狂騒的で熱に浮かされたようなエネルギーの爆発には、否応なしに感情を揺り動かされてしまう。

愚かで切ない。でも一生懸命生きているし、その中には掛け替えの無い光がある。そんな物語は、この作者の真骨頂だと思った。もう、本当に最高ですこれ。

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2006.04.10

『カーリー ~黄金の尖塔の国とあひると小公女~』読了

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カーリー  ~黄金の尖塔の国とあひると小公女~』読了。

ああ面白い。かの大英帝国の植民地であるインド。異国の地にある小さな、しかし厳然と区別された箱庭の中で出会った二人の交流を描きつつ、ドイツ、ロシアを始めとする列強の脅威が迫る中、さまざまな陰謀に翻弄されるインドにおける冒険物語。

とりあえず、高殿円はわかってんなー、と。寄宿舎に来たら夜のお茶会!女の子同士の秘密のお話とか、ほのかに香るエキゾチックな美少女とか、謎めいたスパイとか、渦巻く陰謀とか、まさしく英国学園もの、冒険小説ものとしてかくあるべきという見本であり、それら元ネタへの深いオマージュになっている。渦巻く陰謀は未だ全貌を見せず、第二次世界大戦の予兆は刻一刻と迫り、二人の前途にはまだまだ暗い影が立ち込めている。彼女らの冒険はまだまだ始まったばかりだ。これからの冒険活劇を楽しみにして行きたい。

話は変わるが、主人公の心の強靱さには驚くべき限りだ。幼い頃に母親がいなくなり、意地悪な義弟と神経質で口うるさい継母に囲まれながら、元気一杯、天真爛漫に育っているのには畏敬の念すら感じる。継母に毎日雷を落とされながら、捻くれもせずによくもまあ真っ直ぐな気性よ…。状況はかなり大変なのに、すがすがしさすら感じるお話になっているのは彼女の性格のおかげかね。つーか、高殿円は少女が主人公だと、明るく爽快、不幸なんざぶっ飛ばせ的(謎)な豪快な話になって、少年が主人公だと、思い悩み、苦しみ、ナイーブな物語になるのだよなー。少年は悩み少女は前に進むもの、ということなのかしらん。

とりあえず、我輩はこういう作品は大好物でありますので、大変美味しく頂きました。グラッチェ!

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昨日と今日で買ったものです

1.『ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟』 上遠野浩平 電撃文庫
2.『トリックスターズD』 久住四季 電撃文庫
3.『天使のレシピ』 御伽枕 電撃文庫
4.『暗殺者ヴラド・タルトシュ 策謀のイェンディ』 スティーヴン・ブルースト ハヤカワ文庫FT
5.『やみなべの陰謀』 田中哲弥 ハヤカワ文庫JA
6.『夢幻紳士【冒険活劇編】』 高橋葉介 早川書房
7.『学校怪談(1)』 高橋葉介 秋田文庫

・積極的に探そうと言うつもりはないのだが、本屋で見かけるとつい買ってしまうのが高橋葉介の漫画である。こういうのがマイブームとでも言うのだろうか。
・ところで少年夢幻魔実也って、典型的な高橋葉介的美少女顔なんだな…と書き下ろしの表紙を見て思った。青年夢幻魔実也のうさんくささとは偉い違いだ。
・電撃文庫って大漁にライトノベル新人を送り出しているけど、ときどきこういう作家をぽん!と出すから侮れないよなあ…。多分、ライトノベルレーベルから出すことに意義があるんだろうね。ああ、何の話かと言うと、『天使のレシピ』の事です。これ、超びっくらこいた。何しろ(ライトノベル的な”天使”という超常的な存在はあるものの)ガチ本気かつストレートな”恋愛小説”なのである。しかも超真面目。だがどことなくエロゲー文化に染まっているような気もするのだが。
・それはともかくとして松竜の挿絵は”はいていない”ことおびただしい。ありえないくらいに”はいていない”。極めつけに”はいていない”。
・意味も無く三回も書いてみました。
・そーいや、田中哲弥がハヤカワ文庫から出るとは…電撃文庫は版権を譲ったんですか。まあ全然書かない人だからしょーがないと言えばしょーがない。
・そう言えば本屋で『グインサーガ』の最新巻が出ていた。あれはいつになったら終わるのでしょうねえ…。僕の中で60巻ぐらいで止まっているので、最近はどーなっているのだろう…と気にならないでもないけど、なかなか読む気が湧きませんね。数十巻もあると。

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2006.04.08

『桜庭一樹日記 BLACK AND WHITE』読了

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桜庭一樹日記 BLACK AND WHITE』(桜庭一樹/富士見書房)読了。

桜庭一樹の公式サイトの日記が書籍化したのがこの本。我ながらなWebで読めるものをわざわざ金を払って購入する意義については思うところではあるのだが、しかし、”桜庭一樹の本は見かけたらとりあえずは買おう会”会長(自称)(会員2名。活動内容…本を買う、読む。ときどき名称が変わるが気にしてはいけない。)としては選択の余地は無いのであった。クレームは随時受付中。

ライトノベルのプリンセス(クイーン?まあどっちにしろ酷い呼称だ)こと桜庭一樹の日常的な徒然なる物事が、持ち前の飄々とした文体で語られている。要するに彼女の”あとがき”拡大版みたいな感じだ(ん?逆か?あとがきが日記みたくなっているのか?)。

まあもともとがWeb日記なんで、ちょっと愉快な作者の日常を眺める楽しみと、今までに発表されたコラムがいくつか収録されていてお買い得…と言えるかどうかは読者の愛の力によりますのでお気をつけ下さい。

やっぱり極真空手関連の話題とお友達関係の話が多いのだけど、個人的には桜坂洋の話題に注目した。2005年の三月に徳間書店のSF大賞授賞式の時に初めて合ったという記述があったかと思うと、最初は桜坂さんとか書いていたくせに、いつのまにか”桜坂洋”といきなり呼び捨てになっていたり、後の方に行くと「相方」とか「眼鏡の人」とか言い出している。お、おい、この十数行の間に一体何があったんだ!と、いきなりマブダチ状態になっているのには驚きましたよ。

やはり眼鏡が重要なのか…?

あーそういえば『桜色ハミングディスタンス』は結局買えてない事を思い出した。じわじわと悔しい。

またイベントで販売しないかなー。

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今更言うまでもない事ですが…

涼宮ハルヒの憂鬱』アニメ版の第一話がすさまじい出来だった(公式サイトのクオリティも高すぎる…)。音程の外れまくった歌!素人臭い手ぶれまくった画面!グダグダの演出!しょぼい効果!棒読みのセリフ!支離滅裂な脚本!何から何までボンクラ自主制作映画そのものを、すさまじく高度な技術力で完・全・再・現!!しかも、無茶苦茶でありながらキャラクターの立ち位置や性格を紹介をすることと言う意味では、アニメの第一話としては実に正しい!細かい伏線に次ぐ伏線と身振りや視線の演技の細やかさと言い、もはや、僕の心には一つの言葉しか浮かばない。

DVDを買おう。

追伸
杉田智和っていい声してやがんな…。こんなにいい演技をする人だったのか、と感心した。いや、それだけです。

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2006.04.07

『墓標の森と魔女の本 閉鎖師秘戦録』読了

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墓標の森と魔女の本 閉鎖師秘戦録』(扇智史/ファミ通文庫)読了。

扇智史作品の3冊目…なんだけど、ふむ、これは打ち切られてもしょうがないかな(酷い)。上手い下手を云々する以前に、明らかにエンターテインメントとして失敗している。他2作を読んだ印象として、この作者は極めて淡々と”当たり前”を描くことに優れているタイプだと感じたのだが、それは逆に”熱血”と言う名の快楽、あるいはカタルシスに乏しいとも感じられるのだ(別にカタルシスが無いわけではない。あくまでも少年マンガ的な快楽が少ないと言うだけに過ぎない)。翻ってこの『墓標の森と魔女の本 閉鎖師秘戦録』をみて見ると、設定的には明らかに少年マンガ的な娯楽作品として構築しておきながら、そこで語られるのは何一つ事件が起こらず、起伏も無く、刺激も無い平板な物語があるだけなのだ。確かにそこには導入があり、葛藤があり、事件があり、克己があり、つまりハリウッド的な物語の要素はきちんと詰まっているのだが、作者の視点はそんなところに向いていないのは明らかで、淡々と導入し、淡々と葛藤し、淡々と事件が起こり、淡々と克己するので、読者としてはこんな投げやりな作品を読ませられてもなあ、と言う感想しか抱けないのだ。多分作者は、主人公二人が穏やかに、ほど良い距離を保ったまま日常を過ごす話が書きたかったんだろうなあ、と思うのだけど、少年マンガ的な設定がその日常を阻み、実に淡々とバトルが始まって、さっぱり良く分からない葛藤の末、決着がついてしまうのであった。読者に読ませる事を考えておらんな、これは…。

作者の興味と、作品の持っている志向が乖離してしまっているのが最大の問題なのかな、と思った。きちんとここから軌道修正をして、『アルテミス・スコードロン』や『永遠のフローズンチョコレート』を書かせたファミ通文庫は作家を大事にしているなあ、と言うことも感じた。

あとはデビュー作を読んでみたいところなのだがなあ。

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2006.04.06

『狂乱家族日記 4さつめ』読了

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』(日日日/読了)読了。

壮大にして今更感が溢れる後付設定に畏怖すら覚えた。よくもまあ、こんなあからさまに「たった今、考えました」的な設定を平然と書けるものよ…。そんな一切の伏線なしで死神二番さんを登場させて黒幕でした!って言われても。まあ物語の落としどころは結局魔界関係の話になるのだろうし、そのための前振りなのかな。それにしてもやたらと厚みがあるのだが、その厚さを少しも感じさせない軽さは果たして長所か短所か。あまりにも容易く瞬読してしまったのには感心してしまう。流れるような文章の繋がりは本当に凄いセンスを感じるのだが、それと同じぐらい内容がどうしようもないので(うわ、言っちゃった)その凄さが今一つピンと来ないよう感じる。ああ勿体無い。

基本的に登場人物たちの思想と行動があまりにも幼すぎるので、さすがに歳を取ると楽しむのが難しくなってしまう。未熟は許せるけど、幼稚はそうもいかないのだ、僕は。

ま、毎回貶しているのに日日日作品を全部買って読んでいる自分は、多分日日日が好きなんだろうけどね。不健全な読者だことだな、と思った。

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2006.04.05

『アルテミス・スコードロン 春は出会いの季節です』読了

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アルテミス・スコードロン 春は出会いの季節です』(扇智史/ファミ通文庫)読了。

『永遠のフローズン・チョコレート』が大変に素晴らしかったので、同作者の本をもっと読んでみようと思い、購入+読了。なかなか面白かった。

内容を一言で説明すると(それが許されるのであれば)、『ガンパレード・マーチ』+『マリア様がみてる』と言う形容しか思い浮かばない。絶望的な未来が確定された世界で、戦う事を義務付けられた少女たちの一瞬の青春、という物語である。物語冒頭で、既に絶望的な状況が提示され、おそらくは回想と言う形で、女性だけの士官学校へ舞台は移る。主人公はそこで憧れの先輩と出会い、言葉を交わし、惹かれあい、そして戦うための訓練を行い、そして実際に命を賭ける。そこには、近い将来に待ち受ける絶望を、感じ取りつつも実感の無いただの少女たちが、壁に当たって悩んだり、苦しんだりしていると言う当たり前の風景が、非現実なまでに残酷な世界で描かれている。

僕がつくづく感じたのは、この作家は”日常”というものに対する拘りである。戯画的に誇張された世界の中で、繰り広げられる日常的な風景は、決して面白い物ではなく、むしろ退屈でさえある。物語には大きな起伏も無ければ、劇的過ぎる運命も無く、そこに在るのはただただ、誰かを好きになったり、嫌われたと思って落ち込んだり、自分の不甲斐なさに涙する毎日がある。

そう言う平凡さを丹念に救い上げる作者の姿勢と、いかにもゲーム的、アニメ的な設定が組み合わさって、なんとも奇妙な作品になっていると思う。思うに、『永遠の~』は、ゲーム的な部分を極力殺ぎ落として、”平凡さ”のみを際立たせた作品なのだろう。この作者は、平凡さを描いてくれた方が面白いように感じた。なぜかと言えば、エンターテインメントと言うには、あまりに物語に娯楽性が少なく、劇的ではないからだ。それは、エンターテインメントとしては弱点であるのだが、そこがこの作者の魅力であると思うので難しいところではあるな。

とりあえず続きが非常に気になる。

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昨日買ったもの

1.『銀魂(12)』 空知英秋 集英社
2.『魔人探偵 脳噛ネウロ(5)』 松井優征 集英社
3.『NARUTO(32)』 岸本斉史 集英社
4.『武装錬金(10)』 和月伸宏 集英社

・ジャンプ漫画だらけ。だが後悔はしていない!(意味は無い)
・それにしても待望のアニメ化を実現させながら躊躇無くストーカーネタ、下ネタを繰り出す空知英秋の姿勢には畏敬の念を禁じえない。
・武装錬金のあまりのダイジェストっぷりにはさすがに勿体ないなあ、と思った。しかし、和月伸宏の真価は、フリークス描写にある、という基本を思い出させてくれた『エンバーミング』(この巻に収録)は大変に素晴らしいので別にいいや。
・とりあえずネウロが楽しくて楽しくて仕方が無いのだが別にどうでもいいっすね、僕以外の人は。

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2006.04.03

買ったもの

1.『鬼哭の剣 日向景一郎シリーズⅣ』 北方健三 新潮文庫
2.『マリア様がみてる くもりガラスの向こう側』 今野緒雪 コバルト文庫
3.『LEDEND』 富士宏 マックガーデン
4.『奇憶』 小林泰三 洋伝社文庫

・北方健三と今野緒雪を並べると、なにやら異様な感じがする…。
・なんつーか、富士宏の絵は、今どきの風潮からすると洗練されていない素朴なものなのだが、どこかイメージの美しさを感じさせてくれる。主観だけどなー。
・『奇憶』は、小林泰三が書く”駄目人間小説”…らしい。なぜか買ってしまった。
・本屋に寄ったら財布の中に60円しか入っていなくてビビる。ああ…そーいや出費が多いよなー最近…。

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『玻璃の薔薇』読了

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玻璃の薔薇』(五代ゆう/角川ホラー文庫)読了。

カプコンのゲームのノベライズ…らしい。TOKIOの松岡が主演(だかモデル)らしいと言う事でちょっと話題になった、ような気もするが全然覚えて無い。そもそもどんなゲームなのかも知らないので、果たしてこの内容が原作に沿っているのかどうかは全然分からないけど、なんつーか五代ゆうの作品だなあ、と思った。登場してくるキャラクターに造型なんか、いかにも五代ゆう作品に出てくるタイプだし(美丈夫だが傷と屈託を抱え込んだ男や、お調子者な青年とか)、後半にむかってどっかんぐっちゃんにテンションが高まっていく描写もたまらない。

問題があるとすれば、全然ホラーではは無く、どちらかと言えばSFになるのかも知れないのだが、あまりSF的なトリックが仕掛けられているわけでは無く、またミステリとしても別段成立していないので、ジャンル小説としては一体どうやって楽しめばよいのかさっぱり分からないところだろうか。ゴシックな雰囲気を楽しむ、というわけにも行かないしなー…。

と言うわけで、ファン以外が読む必要があるとは思えませんが、五代ゆうらしい作品なんで個人的には悪くないと思いました。

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2006.04.02

振り返り

…………なんか俺、3月だけで34冊(正確にはエントリー。上下巻は含んでいない)も本の感想を書いているんだけど。一日一冊以上…?マジで?しかも、2月は27冊で、1月は23冊…。

自分でもびっくりだ。

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『レキオス』読了

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レキオス』(池上永一/角川文庫)読了。相変わらず格調高い馬鹿SFぶりで大変素晴らしかった。

とにかくこの作者には思いついたことは残らず実行しなければ気が付かないような生真面目さと、それでいて詰め込みすぎによって、物語が破綻する寸前に超強引に物語をねじ伏せる腕力がある。ストーリーをよく考えてみるとおかしい気がするのだが、それがちゃんと一貫性…はあまり無いが(おいおい)、朗々たるダイナミズムを失わない。それにより無理矢理に納得させられてしまう力強さがある。

何度も言うが、この作者は明らかに行き当たりばったりに物語を進めている(ように見える)。次から次へエピソードを繰り出し、悪ノリ寸前のアイディアを惜しげもなく使い捨て、パワフル極まりない奇人変人が縦横無尽に暴れ回っている。しかし、それでもなおこの作者が凄いと思うのは、あきらかになんにも考えずに進めているように見えて、最終的にはなんやかやで伏線は回収され、それぞれのエピソードには決着がつけられ、物語は結末を迎える事が出来るストーリーテリングの意外な(としか言いようが無い・・・)巧みさだ。無論、その結末についても、あきれ果てる寸前の馬鹿展開であったりするのだが、しかし、その猥雑で混沌として下品でさえある熱気こそが、この作者の作品を魅力的にしている一端である、と感じるのである。

補足
この『レキオス』については、キャラクターや物語のテーマに『シャングリ・ラ』に似通った部分があり、なるほど原型と呼ばれるのも納得がいく。基本的に女が強くて男は酷い目に合うというのも一貫しているしなあ(そこかよ)。

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2006.04.01

『侵略する少女と嘘の庭』読了

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侵略する少女と嘘の庭』(清水マリコ/MF文庫J)読了。清水マリコの『嘘』シリーズの第3弾。ひょっとして完結編?

清水マリコと言う作家は、いつも自分にとって、どう評価したものか悩んでしまう作家だけど、この作品に限っては明確であった。内容を端的に説明すれば、幼いことからつるんでいた幼馴染4人組の前に一人の少女が表れることで、その欺瞞と変わることへの不安を露わにしてしまう、という話だ。もっと言ってしまえば、”繋がり(と言う名の未練)を断ち切る”話でもある。ある種ジュブナイルにおいて、友情と他者への思いやりは無条件で肯定される部分が多いのだが(それはライトノベルでも同じこと。その意味では保守的だよな)、この物語はそれを否定する。正確にはつながりを”悪”と言うのではなく、”つながり続けること(という名目)で変化への不安を糊塗することを”悪”だと言っているのだ。

それは友情を、思いやりをあげつらっているわけではない。友情が無力だと言っているわけでもなく、友情よりも愛情が大事とか言っているわけでもない。ただ、それでも人は変わっていくのだし、それは罪悪感や恐れを感じることではまったく無いのだ、と言う事を、他人に対して”悪意”をもって傷つける少女の存在を通じて描いている(ただその傷つけ方は直截であり、陰にこもらず、ただ真実を突きつけるのみだ)。

上手く言えないのだが、これは大人になると言う事なのだろう。人間とは汚くてずるくて”嘘をつく”生き物だ、と言う事を認めること、そしてそんなままであり続ける事が決して不幸と言うわけではないのだ、という気づきがここにはある。

そう言う意味では、これはまったく”教育的”な物語ではない。決して(ライトノベルによくある)裏切りも憎悪も怒りも描かれているわけではないが、これぐらい反道徳的で、非教育的な物語はないだろう。何しろこの物語は”かわいそうな少女を救う”ことをしない。嘘をつき、人を傷つけることを非難しさえもしない。

しかし、なぜかこの物語には、もの悲しく、透明で、さわやかですらある”空気”を感じさせる。それはどこか冬の朝にも似た厳しい美しさでもって僕を惹きつけるのだ。

補足
toi8による表紙絵は、その透明な美しさを表していて良い仕事だと思った。表紙買いしても外れではないかもしれない。

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『ソラにウサギがのぼるころ』読了

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ソラにウサギがのぼるころ』(平坂読/MF文庫J)読了。

相変わらず読者を騙くらかすことに命をかけている作家だなあ。読者が望む、読者(オタク)にとってもっとも心地よい展開を、常に裏切るのが平坂読クオリティ。その様は「ふ、ふん、別にオタク展開なんて好きじゃないんだからね!勘違いしないでよ!」とツンデレるに等しい。(読者に対して)ツンデレ作家、平坂読。お?なんかしっくりくるじゃねえか。

戯言はそのくらいにて、一般受けなんてものを地平線の彼方に投げ捨てた作風が大層素晴らしい作家の新シリーズの登場であり、素直にめでたいとしておこう。どれくらい一般性を考慮していないかと言えば、”ツンデレ”とか”フラグ”とかその他色々なオタク用語を何一つ解説を加えないことで読者の窓口を狭めた上で、さらに用語について来れるオタクが期待する展開を常に裏切るために、さらに読者を限定してしまっている!つまり、この作家は、「オタクに対して人並み以上の知識を有しながら、オタク的展開に我慢出来ない」と言う人にしか楽しめないのだ!この作品はそんなヒネクレものしか相手にしていないのである。

売れないわけだよなあ・・・(いや、実際には知らないけどね?)。

内容は…まあいつも通りの平坂読でした。まあ、最近流行りの現代学園異能と言う奴ではないかしらん。ただし、この作者の熱血嫌いと主人公特権嫌い(選ばれしもの、みたいなやつ)が遺憾なく発揮されているので、色々な意味で素直ではない。そこがたまらなく好きなんですけどね僕は。

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