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2006.03.14

しつこく『Fate / stay night』について

カテゴリをどうしようか迷ったけど、一応アニメを見て触発されたことだからアニメにしておこうと思う。

それはさておき『Fate / stay night』について。他の場所でもいろいろ言われているけど、一度自分でもまとめておく。

そもそもこの作品は、その人気の高さに反比例して極めて毀誉褒貶の激しい作品であったりする。ある人は傑作!と絶賛したかと思えば、ある人はこの上ない駄作とこき下ろす。登場人物たちに萌え~(いや、実際にはこんなオタクはいないのだが)とか言っている人もいるかと思えば、スゲーむかつくと苛立ちを隠さない人もいる。何でこんなに評価が真っ二つにされるのかといえば、おそらく作者である奈須きのこは、物語にも登場人物にも多くの矛盾を含めているせいであろうと思う。ギャルゲーでありながら萌えを否定し、伝奇ノベルでありながらアクションよりも対話を重視し、善と悪の対立を書きながら善と悪の境目を曖昧にしている。物語の構造そのものにも多くの矛盾があり、それについての批評と言うのはこれまた星の数ほどあるのだが、そのあたりには僕の分析ではとても追いつかないので保留にしておく。ただ、主人公の衛宮士郎の描き方を見てみるだけでもすさまじい矛盾の塊であるのは作品内でも言われているとおりだ。

つまるところ、奈須きのこは、敢えて作品内における価値観と言うものを不動ものにするのでなく、あるいはキャラクターと言うものを確固たる記号(駒)にしておく事をしないと言うことなのだろう。つまり人は善を成しつつ悪を行うことが出来る生き物であり、また人の信念は移ろいやすく確かなものなど何も無い。すべては不確かなままのものでしかないということを唯一語っていたように感じるのだ。だからこの作品内では「挫折」と「変節」、「後悔」と「裏切り」が繰り返し繰り返し語られる。正義の味方として生きる主人公はその挫折を強いられ、萌えキャラとして構築されたはずのヒロインたちは自分に無理矢理課せられたレッテルに否を唱える。悪を為したはずの存在はその純粋さを見出される。そこに在るものは、すべては不確かだ。そこには割り切れるものなど存在しない。分類できるものは何一つない。すべて善であり悪である。

割り切りが必要なエンターテインメントの中で、ひたすらに割り切らない物語を描き続けたこの作品の評価が千差万別にになるのは、だからこそ当然のことなのだろう、と思った。

ちなみに僕は、衛宮士郎の”正義”には反吐が出るほどむかつくが(それは彼の正義が甘いからではない。彼の正義は究極的には彼以外のすべてを食いつぶす正義だからだ)、彼がそう生きざるを得なかったという事実は認めるし、その在り方そのものにはいくばくかの憐憫とやりきれなさを感じるタイプです。だからこそ、彼が自らの呪い(正義)を打ち破ろうと足掻く”桜ルート”は最高傑作であり、『Fate / stay night』は”衛宮士郎の物語”としては完璧に完結していると思う(だけど、アニメはそこまで描けるかなあ…)。

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