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2006.02.13

電撃大賞ファーストインプレッション

電撃文庫の新人賞である電撃小説大賞の大賞、金賞、銀賞受賞作を読んだ。印象を忘れないうちに書いておく(2/13に追記をしたので上に持って来ました)。

『お留守バンシー』
大賞受賞作。
さすがに大賞だけあって小説としての完成度は4作品のうちダントツ。良くも悪くも新人らしくない内容で、受賞作の中では唯一”商品”としての価値がある(言葉は悪いが)。言い換えればプロの作品と言える。これがデビュー作と考えればすごいものだけど、ただ、きちんとまとまりすぎていて将来性についてはなんとも言えない。向上の余地があるのか?

『哀しみキメラ』
金賞受賞作。
大賞に比較すると明らかに作品としての完成度で一段も二段も下がる。やりたいことは分かるのだが、明らかに描写が届いていない感じだ。バランスが悪いと言うか。ただ、それは作者の理想像が非常に高いと言うことを意味しているので、今後の成長次第では凄いものを書くかもしれない。帯にもコメントがある有川浩のデビュー作『塩の町』を読んだ時とよく似た印象を受けたな。ハードカバー向けかも。

『火目の巫女』
銀賞受賞作。
好きか嫌いかで判断すれば、『狼と香辛料』を除いた3作品の中では一番好きかもしれない。ただ、やっぱり描写が足りてないのは金賞と同様で、主人公たちの物語が書き込み不足のまま終わってしまった印象を受けた。でも、単純な成長物、あるいは擬似家族ものに終わらせない作者の物語に対する哲学は非常に気に入った。うん、やっぱけっこう好きかも。

えーと、あと銀賞受賞作がもう一つあるんだけど…買い忘れていたので明日買ってきます。

(2006/2/13追記分)
で買ってきました。
『狼と香辛料』
これは凄く好きなタイプの作品だな。実はこれは一番好き。こう言う何にも起こらない話をきちんと描けるところに作者の並々ならぬ力量を感じさせる。正直に言って、あんまりケチをつけるところが見当たらないんですが…まあ電撃文庫的にはややマイナーな流れか(七姫物語とかの系譜か?)。やや異世界の風土、文化の描写が中途半端なところがマイナスかもしれないが、主人公とヒロインの会話だけで十分に楽しいので問題ないな。
 
 
しかし、今回の電撃文庫はレベルたけーな…。どれを読んでも外れが無いと言うのは素直に感服。読み手の好みの差こそあれ、どれも凄く高度な事をやっている(あるいはやろうとしている)し、続きが非常に楽しみな話ばかりだ。素晴らしい。

どれも面白かったけど敢えて順位をつけるとするなら、単品作品としての完成度(読んでいてどれだけ不満を感じなかったか)で言えば『お留守バンシー』-『狼と香辛料』-『火目の巫女』-『哀しみキメラ』。
将来凄いものを書きそうな予感をさせられた順番では『哀しみキメラ』-『狼と香辛料』-『火目の巫女』-『お留守バンシー』。
今後、もっとも売れそうな作者の順番では『火目の巫女』-『お留守バンシー』-『狼と香辛料』-『哀しみキメラ』。
個人的に自分が好きな順番は『狼と香辛料』-『火目の巫女』-『哀しみキメラ』-『お留守バンシー』。

と言うところか。
『狼と香辛料』が強いなー。

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コメント

すまん。むしろ「お留守バンシー」がみつからねえ…。他は買った。
回避なんてものはない。男の子ですもの。

投稿: 背徳志願 | 2006.02.13 06:14

僕は受賞作品以外は買ってないので、後は頼んだ。

とりあえず、個人的には『狼と香辛料』を一押しで。

投稿: 吉兆 | 2006.02.13 21:58

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