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2005.11.17

『ROOM NO.1310 #6 お姉さまはストイック!』読了

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ROOM NO.1310 #6 お姉さまはストイック!』(新井輝/富士見ミステリー文庫)読了。

個人的に大変に評価しているシリーズの最新巻です。正直に言うと新井輝と言う作家自体は好きな部分とそうではない部分(と言うより積極的に嫌い)があって、ちょっとアンビバレンツな感情があるのだが、このシリーズは素晴らしい。グレイト。

さて、内容については、これまた見所が多々あったと思う。まあ、今までに比べるとエロスは減ったが、その分キャラクターの関係がじっくり描かれていてうはうはであります。つーか、何でこの小説は、大した事件も起こらず、単にキャラクターが会話しているだけなのに面白いんだ…。

例えばシーナ(日奈)と健一の関係とか。シーナと健一の間にあるのは間違いなく友情であるのだけど、しかし、シーナが日奈に戻ったあと(別に二重人格というわけではない。念のため)の関係と言うのは、友情とは言い切れず、また恋愛感情とも言えず、お互いに距離感を図りかねているような曖昧な(言語化出来ない)ものであり、そこで交わされる言葉と言うのは、お互いの関係を規定しようと言う試み(時に友情、時に恋愛の狭間を揺れ動く)に満ちていて非常にスリリングだと思った。

これと同じ事が有馬冴子との間にも言えて、ただ、こちらは最初から恋愛と言うものを拒否し、たんなる友情であり続けようと言う強い抑圧がある。しかし、面白いのは、それでもなお(あるいはそれゆえに)健一ともっとも深い関係(肉体的にも精神的にも)にあるのも冴子だと言う点だ。現時点では友情の範疇を越えることはないが、健一自身は(自覚しているのかは分からないものの)冴子に対して強い異性を感じている事は確かであり、二人の関係はこれからも揺れ動いて行くのだろう。

思うに、この物語において揺らがない関係というものは無く、物語進むに連れてすさまじい勢いで彼らの関係は変化していく。ある時は犬猿の仲であり、次に会った時は友達になり、また次の時には恋愛になったり(あるいはあまた別れたり)する。それは、単に変容を意味するのでは無く、変化し未知を知ること、すなわち時間は未来に繋がっているという事を意味している。ユートピアは長くは続かず、幸福な時はいつかは終わる。人々は成長し、大人になる。そう言う「変容」こそが、この何にも起こらない話をここまでダイナミックにしているのではないか、と感じた。

どうやらホタルの反撃も始まったみたいだし、おそらくシーナももう一波乱あるだろうし、そもそも「外枠」の部分でのネタふりにも色々意味深な部分が出てきたし、今後もどんどん変わって行くのだろうな。それは、読み手としては寂しい事だけど、作者には「終わり」まできちんと書き続けていって欲しいと思う。

(しかし、綾さんの出番が全然ないな。まあ、彼女は健一の女神だから、どうしようもない状況に陥った時に現れて何とかしてくれるのだろう。考えてみると、彼女だけ健一との関係が登場当初からまったく変わっていない。女神たる由縁か)

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