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2005.11.14

『ある日、爆弾がおちてきて』読了

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ある日、爆弾がおちてきて』(古橋秀之/電撃文庫)を(以下略)。

古橋秀之の久方ぶりの新刊は、リリカルでほのぼのとした「SF」短編集でございます。そのあまりにガチぶりに各所(主にSF関係)で評判になっておりますね。つーか、スタージョンのアレをラブコメで処理するとはビックリだ。イカス。

ライトノベルにしては珍しい、連作では「無い」短編集となっております。なぜか知らないけど、ライトノベルでは短編は嫌われているようで、実際、電撃文庫では、黎明期に短編賞を取った作品を収録した本ぐらいじゃ無かったかな。連作は一杯あるんだけど。
何でなのかと考えてみると、多分、どんなにキャラ萌えしてもすぐに終わってしまっては物足りない人がいるからだろう。あるいは、単にページが少なくてキャラ立てが出来んというライトノベル的な要請もあるのかもしれない。が、単に作者が大変だからと言うのが妥当なところだろうな。

話がずれました。
久しぶりに作品別感想など。

「ある日、爆弾がおちてきて」
表題作。
世間一般で言われる(と、すぐに専門用語を一般化するのは僕の悪い癖だ。実はあんまり治す気が無い)「オチもの」を少年期の焦燥感と絡めた青春小説。過去に囚われた少女(=爆弾)と未来に向かおうとする少年が再開し、そして別れる話である。現状に留まろうとする少女あすべてを道連れにしようとしても、少年はすでに未来を生きている。
非常にノスタルジックな話で、ある意味年寄り向け(20代後半)ですな。

「おおきくなあれ」
なぜかくしゃみをするたびに、精神のみが若返りを起こす風邪にまつわるお話。ヒロインが退行を起こしていくにつれて主人公が過去を思い返していく話なんだけど、ラストのオチがなかなか愉快でよろしい。

「恋する死者の夜」
個人的趣味だけどとても好き。もはやラブ。
死んだ人間が蘇り、最後の一日を繰り返すと言う絶望的な世界感が最大の魅力かな。死んだ恋人が夜毎に蘇り、既に失われた情景を繰り返し見せられる主人公の悪夢のような、それでいて腐りかけの果実のような甘やかさすら感じられる情景がとても良いと思いました。

「トトカミじゃ」
まあこれも人外ロリの派生かしら。
図書館の神様「トトカミ」の禰宜になってしまった主人公が、彼女と図書館を過ごす話。なんかすげー懐かしい感じの話。別段、凄い事件が起こるわけじゃないけど、その何も無さを含めて楽しむタイプの作品のような気がする。

「出席番号0番」
肉体を待たず、クラスメイトの肉体に間借りする精神だけのクラスメイトと言うアイディアの短編。まあ、スタージョンのアレですな。とにかく素晴らしい。ラブコメとしてもSFとしても完璧ですよ。オチまで決まっていて言う事がありません。

「3時間目のまどか」
ちょっと変わった時間跳躍もの…でいいのか?これはギミック自体はあんまり感想はない。なんかあんまし引っかからなかったなあ。

「むかし、爆弾がおちてきて」
古橋秀之のリリカルな部分が炸裂した抒情的なSFでございます。いやいや、個人的趣味を除けば多分これがベストかな。女の子のところにたどり着くためにすべてを捨てて高いところから飛び降りる男の子の話。見詰め合うだけで五百年!とか時間的なスケールとかがたまらん。
 

まあしかし、ライトノベルSFとしては紛れもないベストであるのだけど、こう言うノスタルジックでリリカルな話を好むようになったとは、僕も年を取ったもんだよな…。

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