« 本日の購入物 | トップページ | 本日の購入物 »

2005.10.02

『LOVE』読了

4396632533
LOVE』(古川日出男/洋伝社)を読んだ。

いつもの通りに古川日出男は素晴らしい。
今回はタイトルの通り、愛にまつわる物語だ。古川日出男の描く愛は強靭で情熱的でロマンティズムに満ち満ちている。それは無論ファンタジーの領域に属するのかもしれないが、古川日出男の描く愛は、単に個人に属する愛だけではなく、『生きる』と言う行為に対する圧倒的な肯定を意味している。そのメッセージのシンプルさと強靭さに(何より、それを語る古川日出男の文章に)、僕はいつも揺さぶられる。

古川日出男の言っていることは、実はかなり単純なんじゃないかと思うのだが、そのメッセージを支える説得力となっているのは、おそらくはその語り口ではないかと思っている。おそらく(あくまでも個人的な考えだが)古川日出男にとって、小説と言う媒体は、表現したいことを実現するためにはあまりに不自由な媒体であって、しかし、小説以上の媒体も見つからないのでやむなく使用しているとでも言うようなところがあって、毎回、果てしなく饒舌な文体を駆使しながら、その饒舌さの中から本のわずかな真実を浮かび上がらせようと四苦八苦しているように思う。

例えばこの『LOVE』と言う物語は、東京を舞台にした連作短編集なのだが、この作品は、どの作品も究極的に「俺たちは(私たちは)生きて、そして愛している!」と言うただそれだけに集約されうると思う。最後の一文のために存在するような一片である「ハート/ハーツ」のように。だが、そこに至るまでの過程に生じる何かを伝えたいと言う情熱、生きることに対する闘志、野蛮なまでの愛こそが、最後の一文に説得力を与えている。否、むしろそこには主従の関係は逆転し、過程こそが本来の主なのかも知れない。ただ生きること。ただそれだけが。

僕は、小説と言う媒体を通して、圧倒的な肯定(ただしそれは自己満足と自己完結とは結びつかない。生きることの困難さから逃げ出すのではなく、自ら立つ事、誰かを愛する事、息尽きるまで走る事への肯定だ)について語る古川日出男に対して、そしてその作品を読むたびに、美しさに涙する。その強靭さに感動する。

それが、僕が古川日出男の小説を読む理由なんじゃないかと思う。

|

« 本日の購入物 | トップページ | 本日の購入物 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/6037315

この記事へのトラックバック一覧です: 『LOVE』読了:

» ■古川日出男 『LOVE』 [★究極映像研究所★]
 今回も才気走った古川の文体が楽しめます。 とにかく詩的で現代的で戦闘的なこの文 [続きを読む]

受信: 2005.10.12 21:48

« 本日の購入物 | トップページ | 本日の購入物 »