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2005.10.08

『ぴよぴよキングダム(3)』読了

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ぴよぴよキングダム(3)』(木村航/MF文庫J)を読んだ。ブ、ブラボー!

どんどんライトノベルの範疇から外れて行っている作品だと思う。児童文学ファンタジーを思わせるやわらかい幻想を描くとともに、その幻想を支えるものは愛と憎悪、すなわち情念そのものである事を描いている。実はこれ、凄い実験作なんじゃないかと思っているのだが…果たして。

あかりの世界よりキャプテン・ジュリアーノが現れ、彼女によって祐とお姫様が”あかりの国”に連れ去られる部分なんか完全にファンタジーの世界になっていて最高だなあ。繰り返される言葉遊び、見る人の認識を狂わせるような不条理を読んでいると、不思議の国のアリスを読んだ時の感覚を思い出されます。というか、このあたりは完全にルイス・キャロルやディケンズとかの英文学の世界ですね。連れ去られた祐とお姫様を助けるために”あかりの国”へ向かうあかりたちが、冒険に向かうあたりなんてまさに異世界への冒険譚だし、”あかりの国”で日常を過ごす祐たちの不条理な描写も実に幻想に満ちた不条理感があるように思う。

しかし、そのどこか牧歌的な幻想文学的な展開は、物語中盤においてあかりとお姫様の情念を受けてすさまじい勢いで変質してしまう。その情念は、おそらくお互いに対する嫉妬と憧憬、自分の恋する相手に対する引け目のようなものであろうかと思んだけど、その感情が物語を支配し、あらゆる登場人物を巻き込み崩壊を始める。それは物語そのものの反乱であって、それが最終的に崩壊に向かう物語に立ち向かう少女を助けようとする少年の、そして少年を助けようとする少女の成長物語に消化される展開は圧巻の一言ですね。このあたりにライトノベル的な部分と英文学的な部分が混在した極めてカオティックな酩酊感があるように思った…って書いてて自分でもよくわからんのだが。

『Forest』(ライアーソフトのゲームね)の時も思ったけど、この作者は英文学に強い愛着があるのは間違いないのだろう。おそらく、作品に対する作者の意図は、アニメ、ゲーム的なキャラクターを配置したライトノベルとしての側面と、幻想と不条理と風刺に満ち満ちた英文学の側面を意図的に融合を目指している事なのではないかと思う。しかも、それを高いレベルで成功させているところがすげえよなあ(この点については今後も注目していきたいが話が逸れるので後日としておこうかな)。

前作あたりから、既にライトノベルとしての枠を壊し始めていたとは思っていたが、完全に吹っ切れていますね!ブラボー!おおブラボー!


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