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2005.09.30

本日の購入物

生きることに意味があるかどうかなどと言う青臭い科白が、ある程度の魅力を放つ時と言うのは、自分の人生に喜びが少ない時なのだろうと思う。人間は、ただ生きるというだけを目的とするにはいささか小賢し過ぎる。人生がつまんねえ、と言う前に、面白くする努力をしろと言うのは正論だが、努力したからと言って面白くなるとは限らんぜ。ああ、こんな事を書いている自分が一番つまんねえ。駄目な自分をさらけ出す羞恥プレイはほどほどに。

1.『狂乱家族日記(3)』 日日日 ファミ通文庫

1.日日日という作家は、飛躍した展開と独りよがりになりがちな文体を何とかしてくれると素晴らしい作家になると個人的には思う。今はセンスだけで書いているようだけど、基礎を身に付けないとそのうち擦り切れてしまうだろう。出版社も、作家を絞り取る事ばかり考えないで、きちんと育てて欲しいもの。今の日日日はちょっと書きすぎだと思う。

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2005.09.29

本日の購入物

例によって色々あって時間がなくなってしまいました。今日も感想はお休みです。この調子では宿題がなくなるのは遠いな…。つか、仕事でも宿題が一杯だからしょうがないんだが…。無論言い訳です。

1.『ディアスポラ』 グレッグ・イーガン ハヤカワ文庫SF
2.『ベルセルク(29)』 三浦健太郎 白泉社
3.『ゼロイン(4)』 いのうえ空 角川書店

1.あっちこっちで評判が良いので買ってみた。ただ僕はこの手のハードSFは体調が良い時にしか読めないので(疲労しているときは、その密度に耐え切れない軟弱者なのです)、読むのはしばらく先になるだろう。と言うか最近はいつも疲れているが。
2.なんだか最近のガッツは楽しそうだなあ。仲間も増えて、守るべきものを得て、充実しているっぽいのだが、それは単なる嵐の前の静けさなんじゃないかと言う疑いが脳裏をよぎって離れないのは僕が疑り深いだけだろうと思う。あと魔女っ子シールケの萌えキャラぶりがすごい。何があった三浦健太郎。
3.女の子が銃を撃ちまくり悪党をぶっ飛ばす話。まあ僕の好みだって事だ。結構真面目なストーリーテリングなのが好ましいのだが、どうしてもむちむちしたエロスの方に気持ちが言ってしまうのが惜しいところだ。別に惜しくはないか。

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2005.09.28

本日の購入物

仕事が忙しくてなかなか感想にまで手が回らないと言うのは単なる言い訳に過ぎんのだが、その言い訳を撤回するほどには気力が回復していないので今日はもう寝ることにする。とにかく眠いぜ…。

1.『戦中派不戦日記 新装版』 山田風太郎 講談社文庫
2.『瀬戸の花嫁(8)』 木村太彦 スクウェア・エニックス
3・『SIDOH 士道(2)』 高橋ツトム 集英社

1.山田風太郎の日記の新装版であります。それも若かりし風太郎先生のつれづれなる日常を描いている。元来他人の日記を読む事ほど面白いことはまず無い。山田風太郎ならばなおの事。
2.特に言うべきことは無い。肩の力は抜ける作品ですわなあ。
3.たぶん時代劇の範疇に含まれる作品だと思うのだけど、どっからどう見ても高橋ツトム作品。時代背景とかはあんまり関係なく現代的なおはなしだなあ、と思った。

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2005.09.27

『白い花の舞い散る時間 ~ガールズレビュー~』読了

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白い花の舞い散る時間 ~ガールズレビュー~』(友桐夏/コバルト文庫)を読みました。

こ、これはすごいんじゃあないかひょっとして。絶賛するべきか?よし、絶賛しよう。素晴らしい。

ロマン大賞佳作受賞作。少女小説系の新人賞についてはあまり詳しくないのだが、どうやらコバルト系の長編小説部門らしい。ノベル大賞の方は中編らしいけど、中編の新人賞って珍しいよな…。

とにかく文章が美しい。一見して技巧的ではなく、平易な言いまわしでさえある文章なのだけど、よくよく読んでみると文章の一節ごとに神経が行き届いた非常に丁寧な文体であるのが分かる。自己主張は強くなく、僕は詳しくないが、どちらかと言えば古典的な少女小説的な印象を受けたのだけど、良くは分からない。これがデビュー作(か、あるいはデビュー後第一作か)である事を考えれば、その完成度は驚くべきところだ。これだけでも十分に注目に値すると思った。

しかし、この作品の真に驚くべきところは、ストーリーそのものにある。一見して単なる少女たちの一夏の物語のように見せながら、謎めいた舞台設定、個人を特定できない偽名でのオフ会などスリリングな設定が美しく、その文体もあいまって非常に幻想的な印象さえ与えられる。そのまま穏やかに、そしてどこかに緊張感をたたえたまま過ぎてゆく少女たちの時間を、彼女らの抱えた秘密が少しずつ侵食を始めていく。

これ以上はとても言えないのだが、どこまでも幻想的でありながら、読者の想像もつかないようもつかない驚愕の展開が待ち受けている。いや、まさかコバルトでこんな展開になるとは…と意表を突かれたのだが、そこに至る少女たちの描写がすばらしく、やがて生臭い世界が表出して少女たちの幻想が崩壊する過程も含めて大変素晴らしい作品だと思った。これは紛れもない少女小説の系譜でありながら、ライトノベル的なキャラクター小説であり、ミステリでありサスペンスでもあり、何よりもファンタジーであるのだ…ってのは褒めすぎかな。

この作品の文章は僕の好きなタイプなので、ちょっと贔屓が入っていないとは言い切れないが、これは万人にオススメできる作品だと思う。コバルト文庫は普段読まない人でも読んでみても良いのではないかな。

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2005.09.26

『本日の購入物』

目的も欲望も希望も無い人生に意味はあるのだろうかなどと言うどうでもいい事を、思ってうじうじ悩む度し難い人間である吉兆です。なんで当たり前に生きることがこうも困難なのかと自分で自分に問い詰めたい。もっと楽に生きろ。

1.『スパイラル~推理の絆~(14)』 原作:城平京 絵:水野英多 スクウェア・エニックス
2.『アルスラーン戦記(11) 魔軍襲来』 田中芳樹 カッパノベルズ
3.『少女には向かない職業』 桜庭一樹 東京創元社

1.うっかり買い忘れていました。クライマックス前のための話になるのかな。今までの伏線がすべて明らかにされて、どうしようもない結論へひた走る展開なんだけど、歩が成長して動じなくなってしまったので、どれくらいの衝撃を受けているのか分かり難くなったのは皮肉なものだと思う。
2.えーと…6年ぶりの新作?そんなに経ったのか…。たしかその前の巻も本が出るのに5~6年ぐらいかかったはずなので、この12年で2冊しか本が出ていないことになる…え、マジ?と言うぐらいに新刊が出ないことで有名なシリーズなのだが、読めたから全部許します。まあ、どうせ続きは6年後なんだろうな…。
3.探している時は全然見つからなかったのに、何気なく本屋をのぞいたら平積みされていた。入荷が遅れていたのかな?そんな事はどうでもいい、桜庭一樹はとりあえず買っとけとばかりに購入(日本語になっていないけどつっこんじゃいやん)。少女と書かれているところを見ると、桜庭一樹のそっち系の作品なのだろうかと思うが、タイトルから考えるとあっち系なんだろうか…なんて分かり難い書き方ですいません。とにかく読みます。

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2005.09.25

『鎖 クサリ』その2

現時点での進行度合い、50%ほど(CGルームの埋まり具合から見て)。4つほどエンディングを見たんですが…なんすかこれ。すべてのエンディングが見ていて蒼白になるほど恐ろしいんですが…。

いやいや、デッドエンドとか皆殺しエンドとかそーゆー意味で怖いんじゃないんですよ。ただ見ていると、「げに恐ろしきは人の心、か…」と思わず呟いてしまう類の恐ろしさですよ!トゥルーエンディングっぽい最後をくぐりぬけた後にそれですか…とマジで呆然してしまった(特に明乃エンド。ネタバレゆえ多くは語れないのだが、明乃のすさまじい「女」としての部分が明らかに。まあこれはそれまでの彼女の非日常と日常に対するスタンスからは自然な流れなんですけど。その後、恵が飲み水の容器を握り潰す音と受け答えを聞いて、思わず悲鳴が上がりましたよ。僕の口から)。

でさっそくシナリオについてですが、やはり枕流氏はキャラクター描写が上手いな、という印象。会話が特に上手くて、非常に頭が良い印象を与えてくれる。文章云々と言うよりも、キャラクター間の会話に知性が感じられるので、ただ読んでいるだけで心地が良い。余談だが、僕がゲームをやっていて耐えられないのがこれの反対。頭が悪いと言うよりも、会話が噛み合っていない(キャラクター間で独り言を言っているに等しい)文章には殺意すら覚える。これは小説でも同じ事だ。

ただちょっと気になる事、というよりも気が付いたことなんだけど、キャラクター描写の美しさに反比例してか、クライマックスシーンがややおざなりになってしまうところがある。極限状態におけるキャラクター間のやりとりに全力を傾けてしまったせいか、ラストバトルに注ぐべき力が足りなくなっていると言う事なのかな。そこは惜しいというか、構成上しょうがないのかなあ、と思った。枕流氏は、あんまり熱血とかそう言うのには興味が無いのかもしれない(と言うよりも、これこそ節度の問題か。枕流氏はいささか頭が良すぎる。一般受けをするためにはもっとバカになってはっちゃける必要があるでしょうね。ただ、僕はこう言う節度が大好きなので、出来れば変わらないで欲しいと思う)。

まだ半分なので、ここまで。でも、感想は変わらないような気もするなあ。

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2005.09.24

『読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』読了

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読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』(北上次郎×大森望/ロッキング・オン)を読んだ。北上次郎がぷりちー過ぎる。なにこの萌え中年。ありえねえ。

やっぱりプロの書評家って言うのは、本当に本が好きで好きでたまらない人間なんだと言う事が、この本を読んでいると良く分かります。北上次郎、大森望と言う当代を(ごく一部で)代表する書評家二人が、お互いに「これを読め。面白いから」と好きな本について語り合うと言う趣向である。ところがどちらも本に対する趣味が180度異なっているので、お互いの好みが噛み合わず、意見が平行線を辿ってしまう。これで自分の意見に固執するような人手あればさぞかしギスギスしたものになりそうだけど、そこはお互い酸いも甘い噛み分けた書評家である。面白くない本でも、それは自分には理解出来ないだけであって、異なる価値観の中にはそれを受け入れる読者がいると言う事実を理解している。それゆえにとても紳士的で、かつその意見のずれ具合が読んでいておかしいやら興味深いやら。
まあ、それでも貶されれば機嫌が悪くなるのは当たり前なんだけど、たまに意見が一致してクロスカウンターが発動すると、「なかなかやるな」「お前もな」とばかりに友情を確かめあってしまうのには思わず爆笑。本当に他人の書評を読むのには、こう言う異なる価値観を認識すると言う事に楽しみがあるからだろうね。

選書は結構偏っていて、北上次郎はハードボイルドや歴史ロマンなどで、大森望は現代SF、ミステリ、あるいはライトノベルなんかを上げている。少なくとも、どちらもベストセラーには興味が無くて、しかし、編集部が出しているベストセラーに対する態度が異なるのも面白い。大森望はマーケティング的な側面から評価しようとするものの、北上次郎に至っては、興味の無い本に対する極めて冷淡。決め科白は「~賞をとったのだから、良いんじゃないでしょうか(俺には興味は無いが)」かっこいい~。

北上次郎の魅力はこれだけに留まらず、自分の好きな本に対する熱い思いを語りに語ったり、理解されずにむきなったりと本に対する愛情が炸裂している。また自分の理解出来ない本に対しても一刀両断するのではなくて、きちんと敬意を持って接しているところも好感がもてる、と言うか見習いたいものだと思いました。

北上次郎の可愛らしいおっさんぶりが楽しめる一冊。本の雑誌も買うかな。

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『鎖 クサリ』をやっています。

もういいや。あはは。僕は誰にも恥じることの無いエロゲーマーっすよ。オタクと蔑まれてもいいや。こんなゲームができるならな!

てなわけで『』(Leaf)をやっています。

恋愛18禁ゲームの金字塔、『ToHeart』で有名なLeaf初の陵辱ゲームとの事。ちょっと看板に偽り有りかな!はっは!

もともと、僕はシナリオライターの枕流氏が好きなので、ライター買いで買ってみたんですが、おおよその想像通り、単なる陵辱ゲームになっておりません。そもそも陵辱ゲームと言う表現が間違っていて(と言うより公式には陵辱ゲームなんて書いてなかったっけ…)、正確にはサスペンスもの。圧倒的な膂力と恐怖によって迫る悪鬼に対して、勇気と機転を便りに必死に抵抗する主人公の物語である。状況だけで言うなら、いわゆる鬼畜ゲーの寝取られ主人公と変わらないのだけどなあ…。

何よりこの主人公がたまらんね!最高に格好良い。ごく普通の高校生であるのだが、『敵』に対して恐怖に震えながらも歯を食いしばり、必死に立ち向かう。そして、被害にあったものたちからは誤解を受け、誰も味方をしてくれなくても、なお守ろうとするその姿は、好漢と呼ぶに相応しい。なにより、常に冷静さを失わず、最善の道を模索しながらも、非情な決断を迫られれば断腸の思いで決断し、しかもその責を誰にも背負わせない。まったく、決断力があって行動力に富むなんて、エロゲーにあるまじき主人公ですよ!ぶっちゃけ、僕の理想の男です。人並みに恐怖に震え、欲望にも誘惑されながらもそれに耐え、立ち向かう様が最高。ああ、かっくいい…。

ヒロインも個性的で、陵辱の恐怖に押し流されるもの。晒されながらも主人公を信じるもの。迷う主人公を導くもの。復讐に燃えるもの。嫉妬の念に身を焦がすものなど魅力的であると同時に一筋縄ではいかない。

まったく、枕流は相変わらずすげえなあ。大好き。

では続きをやってきます。

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2005.09.23

『サウス・ギャング・コネクション BUD×BUDDY2』読了

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サウス・ギャング・コネクション BUD×BUDDY2』(吉田茄矢/富士見ミステリー文庫)を読んだ。

相変わらずのハリウッドアクションぶりで退屈はしないのだが、その分あまり感想は無い。楽しいことは良いのだけど。

ストーリーは、ホンダ刑事が毎回登場するヒロインたちとのほのかなロマンス(すなわちLOVE)を繰り広げながら、他人の話を聞かない彼が毎回走り回り、相方のウォルターは腹を立て、ヴィスコ・レッティーは兄を探して爆破を繰り返し、シルビアはツンデレ(?)と言うのが基本となるのだろう。…なんだ、本当に物語を構成するピースは変わってないや…。

作品としての出来の良し悪しを語れるほどに、この作品を理解出来ているとは思えないが、まあ、絶賛する気は無いけど面白い事は面白い。なんとなく、この作品には多くの登場人物が出てきているのだが、話の肝となるのは事件でも女性とのロマンスでもなく、ホンダ刑事とウォルターの関係なんじゃないかなあ、と思う。と言うか、この作品、コンビもの、ロマンス、コメディとか色々な良いとこ取りをしているんだけど、ちょっとやりたいことが散漫になっている印象があるので、どこかに焦点を置いた方が良いんじゃないかと思っているので、半分くらいは僕の願望かな。ラストも二人の仲直りがあったり、ヒロインとの決着があったり、シルビアの冷淡なツン(しつこいなあ…)ぶりを見せたり、なんかもーどこに視点を置けばいいのかなあ。

ただ、作者のやりたい事がはっきりしており、そのための見せ方をきちんと理解しているのが分かるので、安定感は抜群である。安心して読めるシリーズではありますね。なんだかんだで結構嫌いじゃないです。

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2005.09.21

本日の購入物

1.『バガボンド(21)』 井上雄彦 集英社
2.『カルドセプト(5)』 かねこしんや 講談社
3.『ちぇんじ123(1)』 原作:坂口いく 漫画:岩澤紫麗 秋田書店
4.『銀盤カレイドスコープ Vol.5 ルーキープログラム:Candy candy all my rules』 海原零 集英社スーパーダッシュ文庫
5.『滅びのマヤウェル その仮面をはずして』 岡崎裕信 集英社スーパーダッシュ文庫
6.『戦う司書と恋する爆弾』 山形石雄 集英社スーパーダッシュ文庫
7.『光≒影 シャドウライト』 影名浅海 集英社スーパーダッシュ文庫

今日は集英社スーパーダッシュ文庫の発売日であったからして、またしても本を買ってしまった。なんかライトノベルばかり買ってしまう昨今、積読がたまるは置き場所はなくなるわでどうしたものかな…(買わないと言う選択肢は無い)。
1.ついに吉岡一門との戦いに入ったのかー…。しかし、ここまで来るのに21巻って…一体完結まで何十巻かかるんですか!一生描き続けて下さい(えー)。
2.なんか表紙が健康的にいやらしくて良い。スパッツが。なんて変態的発言からでは説得力が無いが、新章スタートと言う事で仕切りなおしか。ナジャランがとんでもなくパワーアップしていて、なんだか方向性が変わりそうな気がしてくるが、ナジャラン自身のキャラは変わっていないので一安心である。それよりも邪悪系人外ロリだけど味方なギルドマスターはごっついテコ入れキャラだと思った。やべえ。
3.ぱっつんぱっつんのむちむちボディーなヒロインが格闘アクションをやらかす本能に大変忠実な漫画。大変にエロスで内容になっていて、その分ストーリーは比較的どうでもいいが、とにかくヒロイン(達)の健康的にいやらしいエロスと一粒で4回美味しい設定などこれだけで金を払う価値がある。それにしても、どうも自分は疲れてくると言動がエロスに走り勝ちであることに気が付きました。
4.アニメ化を決まり、現在人気絶頂と言った感があります『銀盤シリーズ』。特に語ることは無いが、アニメにおいてはスケートシーンをどのように表現しようとするのかが気になる。力任せに動かしまくるぐらいしか原作を越えることは出来ないような気がするのだがなあ…。
5.集英社スーパーダッシュ小説新人賞にて大賞受賞作らしい。あらすじを見ると、見事なまでにわけがわからなくて、内容が全然推察できない。……なんかピンと来ましたよこれ。『電波的な彼女』とは違った意味でただごとではないオーラが出ている気がする。多分、死ぬほど気に入るか、本を投げるかのどちらかだと思う。
6.これまた集英社スーパーダッシュ小説新人賞の大賞受賞作。『滅びのマヤウェル』と同じようにオーラを感じるのだけど、これまた同じように僕の好みにジャストフィットするか大暴投となるのかが判然としない恐ろしさがある。
本当にスーパーダッシュ文庫は勢いがあるな~…。出す本の持っているパワーが違うよ。電撃の持っているような「定型」が無い荒々しさを感じるような気がする。
7.いささか大賞二作は危険度の高い爆弾のような作品なので、ここはあえて「ベタ」なオーラを感じさせる作品をチョイスしてみた。想像を絶する面白さは無いだろうけど、ある種安定した(っぽい)作品のように思う。ちなみに集英社スーパーダッシュ小説新人賞の佳作とのこと。

そういえば、最近ライトノベルのアニメ化について、シニカルな発言をしている事が多いけど、別にそれを否定するつもりは無くて、単にアニメ化する意味を感じられないアニメ化が目立つのが大変苛立たしいためであります。わざわざアニメにしなくても、本を読んでいればいいじゃん、という出来になるのが目に見えた作品をアニメにしなくてもなあ、と思う。まあ想像を越えた作品が出てくる可能性は否定しませんが。あと、アニメ化する事で、それまでその作品を知らなかった層に布教出来るという考え方もありますが、そーゆーのはあんまり好きな考え方ではない(作品だけを評価したい)。まあ、異論はありましょうが。以上。

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2005.09.20

『食卓にビールを(4)』読了

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食卓にビールを(4)』(小林めぐみ/富士見ミステリー文庫)を読了。

なんかもー脱力系日常SF小説としての地位を確立しつつありますね、この作品。萌えとかは全然無いけど、読んでいて非常に癒されます。馴染む馴染む~。

もう内容についていちいち述べる必要も無いくらい、まったり不条理な展開が続きます。別段笑えるわけではないけど、とにかくズレた会話の噛み合わなさがとにかく楽しい。その噛み合わなさというのは、話者双方の持つ文明的な基盤があまりにも異なりすぎるために、お互いが違和感を感じる事も無いまま(いや、主人公が違和感を感じていないのは性格か)会話が平然と続いてしまうために生じるのだが、この物語にはツッコミ役が誰もいないため(と言うのも、誰一人自分がおかしいと思っていないため)ただただ脱線していく物語を追い続けていく事になるのだ。

まあそんな御託はどうでもいいとして。
今回はボランティアを通じて、イデオロギーの恐ろしさを鋭く批判した(笑)植林祭篇、主人公の鋭い推理によって(笑)明らかにされる地球防衛軍の正体が判明する物産展篇、学校の階段SFオチな世界戦争である合宿篇あたりが特に面白かったと思う。特に物産展篇は、主人公の適当な例題に右往左往するおっちゃんたちがやたらととぼけていて、最後の最後まですっとぼけて終わるのも好みです。しかもオチすら無いしな!痺れる~。あと、合宿篇の展開のくだらなさも良かった。オチはちゃんと怪談SFで落としているのにはちょっと感心。ちゃんと落とすのって珍しいなあ(感心するところを間違っています)。

幼な妻、女子高生、あと表紙に水着とかあるのに、これっぽっちもエロスを感じず、むしろ生活感すら感じさせられていまうSFと言うのは結構珍しいような気がするので、このままのんびり続けていって欲しいと思います。

あーリラックスするなあ。

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本日の購入物

疲れすぎたので簡単に。

1.『ぴよぴよキングダム(3)』 木村航 MF文庫J
2.『銃姫(5)』 高殿円 MF文庫J
3.『働きマン(2)』 安野モヨコ 講談社

1.出ました。僕がとてもとても好きなシリーズの3作。今はぺとぺとさんの方が有名な作者ですが、あっちに比べるとかなり実験的というか趣味に走っている感じがたまらない。もっとやって~。
2.乳…じゃなかった銃姫の5巻。ここでなぜか短編集を入れたりするバランスの悪さは相変わらずだな、この作者。面白いんだが。
3.疲れてやってらんねーって時に読むと効果的。効果は人それぞれですが。

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2005.09.19

電撃三昧

今日は、数日サボった宿題を終了させるべく、電撃文庫の新刊の三冊の感想である。もうライトノベル界隈では語られ尽くした感もあるが、僕はもともと流行に乗り遅れるが信条なのだからこれでいいのだ。多分。

そんな事をしている暇があったら仕事をしろ(ひー現実を見せないでー)。

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『ガトリング・メロディ』読了

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ガトリング・メロディ』(長谷川昌史/電撃文庫)を読了。

うーん…これは評価がし難いなあ。面白い、面白くない以前に、作品のテーマがあまりにもそのまんま過ぎるのが気にかかる。思いっきり乱暴な言い方をすれば、戦場における真実と人を殺す事の是非を扱っているのだけど…、だからどうした、と言うのが正直なところだ。

殺し合いを忌避するネリムが、ヤドラ語の通訳としてある部隊に協力させられる。その過程で自ら手を汚さない自分は単なる卑怯者に過ぎないのではないか、という問いを突きつけられ、戦場では理想論などは通じず、弱いものから死んでいくと言う現実を目のあたりにさせられ、しかし、それでも人は殺さないと言う自分の正義を貫こうとする…というのがテーマでストーリーなのだが、いや、まあ、なんと言うかそれは結構な事ですなあ、と言うか。言っている事は分かるんですが、そもそも戦争と言うものに対する認識も明らかではないし、殺し合いをすることの是非が、戦場と日常の中で同列で語られている(戦場で殺せば英雄、日常で殺せば殺人鬼という点が、切り分けれてないっつーか)ところもあって、どうも頭の中だけで考えられた結論にしか読めないなあ。まあ、かなり難しいテーマに挑戦しているのは分かるし、このメッセージが届く世代というのは確かに存在すると思うので、これはこれで悪くないのかな、というのが正直なところ。

まー僕には届かないメッセージみたいだった。でも、「何かを伝えよう」と言う意思を持った作者と言うのは、メッセージの伝え方が洗練されてくると化ける可能性がある。今後に期待したい。

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『撲殺天使ドクロちゃん(6)』読了

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撲殺天使ドクロちゃん(6)』(おかゆまさき/電撃文庫)を読了。

読んでいる最中は何一つ引っかからずつるつると読みふけり、読み終わった後には何一つ残るものが無いという正しい意味でのライトノベルである。ぶっちゃけ何も書く事がない。というか数日前に読了したのだけど、既に話の内容を忘れてしまった…あ、今思い出した。お風呂と竜退治の話だった。

まあどちらにせよ感想なんて欠片も思いつかず、ただ面白かった、としか述べようが無い。相変わらず計算なのか天然なのか分からないハイテンション不条理劇のコンボなんだけど、そのコンボを常に一定のラインを堅持していると言うのはやはり凄いことなのかもしれない。

1話は今まで脇役としてちょろちょろと出てきていた南さんが本格的にヒロイン参入?というただそれだけの内容を、ひたすらなボケにボケ倒した内容。もしかしたら、意表をついて田辺さんがヒロインに?という展開なのかもしれないが、それはそれで。この作者が何をやらかすかなんて考えてもしょうがないし(でも西田だけはかんべんな)。

2話は、お風呂の話。本当にお風呂に入るだけの話で何で短編が書けるんだ。わけがわからん。あ、ドクロちゃんの妹のザクロちゃんは、クールビューティーなダイナマイツボディに純真な子供の心を持ったまさに女神なキャラクターなんだなあ、という認識を新たにしました。子供子供しているわけじゃなくて、しっかりした子供という感じなのが健気っぷりを増していますね。何言ってんの自分。

3~5話は竜退治の話。今時、ゲームファンタジー竜退治ネタをやっちゃうとはさすがおかゆまさき。本当になんのひねりも無く竜退治ですがな。ストレートすぎだけど、もともとこの作者はストーリーテリング的にはケレンは見せないタイプだからこれでいいのだ。変わりにディティールが頭がおかしいとしか言いようが無く、例えばサバトちゃんはただただ不幸になるためだけに出てきたようなのに、なぜか彼女のパートに力が入っているあたり何がなんだかわからない。まあこれでいいのだ。
あと、桜くんは前々からハイスペックな人間だと思っていたけれど、なんと固有結界まで所有しているとは…。名称は…”夜の帝王”かな。

意外と書けるものだなあ、と自分に感心する事でこの感想は終わり。

(いや、本当に面白いのだけどね。脊髄反射的な面白さがあると思う)(どんな面白さだそれは)

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『わたしたちの田村くん(2)』読了

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わたしたちの田村くん(2)』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)を読んだ。

あいだだだだだだ。

僕にはこの話が冷静に読めないらしい。それは主人公の、どちらを選びようも無い選択肢を前にして、どちらを選ぶ事も出来ずに、悩み、逡巡し、のた打ち回るような葛藤に、いささか共感し過ぎてしまった事によるものだ。

もともと好きな相手であった松澤さんと離れてしまって、同じクラスの放っておけない女の子である相馬さんと接近して、でもやっぱり松澤さんが好きなんだけど、それゆえに彼女の心の内がわからなくて煩悶し、一方相馬さんは田村くんに対しての感情はひたむきで、田村くんとしても彼女を切り捨てることは彼女を壊してしまう事なのではないかと恐れ、完全に心の網に囚われてしまう。自分の事ばかり考えているわけじゃなくて、他人の事を考えすぎるがゆえに他人を傷つけてしまう田村くんは、いささか軽率であるし、やはり視野が狭いと言われてもしょうがないけど、それでも自分なりに答えを出そうとするのは偉いと思うし、答えの出し方にしても、極論に走らず感動にも向かわせず、大体妥当なところに落ち着いたんじゃないかと思った。

ただ、最初にも書いたけど、色々田村くんの思考をトレースすると自分の中の色々なものがジクジクと心臓を突かれるようなダメージがあるので、あんまりこの作品を読めていないかもしれない。

でも、面白かったよ。ラブコメとしてはともかく。以上。

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ゼノサーガの新しいやつ

出るんだってさ、へえ~。

などいきなり喧嘩を売ってしまったが、『ゼノサーガ エピソードⅢ』の情報がようやく公開されたようです。エピソードⅡは途中で終わっているので、発売までにクリアしておかないとなあ。

なんかまたキャラクターデザインが変わっているのは、まあ順当かなと思う反面、続き物なのに毎回キャラデザが違うってのはわけがわからない展開だよな。多分、エピソードⅠのあまりにフィギュア的なキャラクターデザインが評判が悪かった(実際には知らない。多分、そんなでも無かったんじゃないかな。単に嫌いな人の声が大きかっただけだと思う)のを受けてエピソードⅡのキャラデザを変更したのはいいけど、今度はあまりにリアル路線でまたやいの言われて今回はリアルとアニメの折衷したって所かな。極端から極端に向かう会社だなあ、モノリスソフト…。最初からやっておけ、という話ですな。

ところで今回のキャラデザはCHOCO…か?ついにメカ以外にも進出ですか…。

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2005.09.17

本日の購入物

1.『皇国の守護者(2)』 原作:佐藤大輔 漫画:伊藤悠 角川書店
2.『道士郎でござる(6)』 西森博之 小学館
3.『結界師(9)』 田辺イエロウ 小学館
4.『のだめカンタービレ(13)』 二ノ宮和子 講談社
5.『スクールランブル(10)』 小林尽 講談社
6.『琥珀の心臓』 瀬尾つかさ 富士見ファンタジア文庫
7.『煉獄のエスクード(2)』 貴子潤一郎 富士見ファンタジア文庫
8.『黄昏の刻(3) 赤熱の巨竜』 吉村夜 富士見ファンタジア文庫

大漁大漁。
1.素晴らしい!主人公の新城直衛の描き方が、はっきり言って小説よりも格好良いんじゃないのか?戦場という異常な空間の中で生まれる恐怖、怒り、迷い、そして狂気がこれでもかと描かれる。その中で冷静に狂う新城の姿がすべての象徴していると思う。『少尉、「まともでいる」と言う贅沢はあとで楽しめ』と言うように、そこにはまったく違う常識があり良識があるのだ。
2.面白い!健助が凄く格好良い。そーか、彼は一人で何かをするタイプではなくて、多くの人々との関係のなかで光り輝くタイプの人間だったのだなあ。マジで格好良いぜ…。
3.うーん、面白い!派手な展開はあんまり無いけど、緻密な構成が光ります。着実に物語が拙劣でもなくダレもせずに動き続けている感覚と言うのは結構すごい事なんじゃないかと思う。
4.面白いなあ…。パリ編になってから真一ものだめも色々なものから解き放たれたのか、すごくのびのびと楽しそうなんだけど、のびのびとし過ぎて全然話が進まないよ!でもそーゆー暢気な話が面白いんだなあ…。キャラ勝ちですな。
5.普通に面白いんですが、なんだか微妙に分からないなあ。読んでいて切実なものを感じない。と言うのは、あんまり僕は他人と繋がりたいという欲望が無いので、主人公たちの関係性だけで話を転がしていく展開に興味があまり無いためではないかと思う。でも、そうやって繋がろうという欲望が、空回りして自爆していく連鎖は、やっぱり青春だなあ、と感じさせてやっぱり面白いですね。これは青春物として読んでいます。
6.うわわわわうわ!なんだこれ!?凄い!ファンタジア大賞審査員特別賞(なにそれ)を受賞した作品なんだけど、とにかく面白すぎる。本当ならこれ、骨格となるストーリーだけで26話ぐらいのTVアニメになりますよ!そんな物語の一冊の本に凝縮した内容なんだけど、しかもこの一冊自体はその後さらに続く壮大な物語のプロローグとなりうると言うスケール感はただ事ではない。とにかく凄い!この作者は、僕が読んだ2005年度ライトノベル新人系の中でのベストだな。もしかすると2005年度のライトノベル全体でもベスト10くらいには入るかも。
ただ、ライトノベル感想サイトにはウケが悪そうなんだよな…。予測される感想としては、1.ヒロインのキャラが立っていない、2.戦闘シーンが(ライトノベル的に)面白くない、3.世界観が分かり難い、というものだろうか。つまりはそう言う読み方をするなってこった。想像するんだ。最後の一文の、あまりに壮大で儚くたくましい思いを、想像するんだ。それだけで良いんだ、この作品は。
語りだすと止まらないので、正式なのは感想で書きます。
7.貴子潤一郎がこんなに早く新刊を出すとは…いや驚いた。これから読みます。
8.上に同じ。

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2005.09.15

『お父さんのバックドロップ』読了

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お父さんのバックドロップ』(中島らも/集英社文庫)を読了。

これは、”お父さん”についての短編集だ。”お父さん”とは子供にとっての最初のヒーローであり、大きな尊敬を捧げられる存在である。子供を”お父さん”に憧れ、”お父さん”は子供に夢を与える。

しかし、現実には”お父さん”と言えど単なる平凡な人間でしかなく、子供はゆっくりとそれに気付いていく。そして幻滅するのは避けられない事なのだ。”お父さん”だってつらくてやってられないこともあるし、挫ける時だってある。何かに八つ当たりをすることも在るし、卑怯な真似だってする。それは仕方の無い事だ。そうやって子供はゆっくりと夢を失っていくのである。

だけど、”お父さん”だって、子供のヒーローでありたいと願い、子供の夢を守りたいと考えているのだ。つらくて厳しい現実に対して、子供のために何とか足掻こうと努力するのだ。それがどんなにつらくたって、子供にとってのヒーローであるためには、そんなのいくらだって耐えられるのだ。

この物語は、”お父さん”がヒーローとして一念発起して頑張る物語である。あるいはその頑張るお父さんを見る子供の物語である。

平凡で、それでも子供のためにちょっと頑張るお父さん達の姿には、哀愁にも似た切なさと応援したくなるバイタリティがあった。

元気が沸いている作品である。

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2005.09.14

『ローマ人の物語(8)(9)(10)』読了

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ローマ人の物語(8)ルビコン以前(上)』『ローマ人の物語(9)ルビコン以前(中)』『ローマ人の物語(10)ルビコン以前(下)』(塩野七生/新潮文庫)を読了。

塩野七生のカエサルへの熱烈なラブレターとでも言うべき内容だけど、それゆえに大層面白くなってしまうと言うのは、作者の語り口の上手さもあるのだろうけど、ユリウス・カエサルという人物があまりにも魅力的すぎるためであろうと思う。作者はカエサル贔屓なので、彼の行動のあらゆるすべてをカエサルに都合の良いように書いているのだけど、カエサルならば確かにそれぐらいは考えているかもしれない思わされてしまう説得力が生じている。なにより、塩野七生解釈の方が格好良い。そんな風に感じてしまうほどに、カエサルの人生は波乱のエピソードに満ちていると言う事だろう。
若い頃は独裁官スッラに睨まれてローマから逃亡したり、逃亡した先で海賊につかまったり(開放された後、捕縛して縛り首に)、とにかく話題が尽きないのだが、それ以降の平凡なキャリアを経て40歳を前後してついに”立ち”始める。元老院に冷遇されていた国民的英雄ポンペイウス、ローマ一の富豪であるクラッススとともに三頭政治によって自らの力を蓄え始める。しかし、ガリアの地で戦闘の日々を過ごすカエサルだったが、東方戦線に従事していたクラッススが戦死した事から三頭政治は瓦解を始める。カエサルを危険視した元老院はポンペイウスを自派に取り込み、ついには元老院最終勧告が行われカエサルは国家の敵と認定された。ローマとの境を示すルビコン川の前でカエサルは迷う。法の秩序に従い元老院の捌きを受けるか、それとも軍勢を率いてローマへ攻め入るか。わが身の破滅か、この世の地獄か。有名な「賽は投げられた!」のシーンである。

カエサルの波乱万丈な人生も面白いが、塩野七生が描写する登場人物たちの魅力的なことと言ったら無い。例えば、カエサルとは政治信条では対立する哲学者にして文学者であるキケロは、実はカエサルとは哲学・文学においてはお互いを認めう間柄である。ある時、護民官によって過去の罪を告発され困り果てたキケロはカエサルに相談する。親身になって相談に乗るカエサルだが、実は護民官を使って告発させたのは他ならぬカエサルであり、しかもキケロはそれをうすうす知りながら相談する下りの暢気さはおかしいやら呆れるやら…。カエサルがまた人を食った男で、自分一緒にガリアまで行かないかなどと誘う始末。本気で感激するキケロなんて読んでいて愉快な気分になってしまうぐらいだ。

だが、やはりなんと言ってもカエサルの、不屈で不撓で不敗の、際立った先見性と実行力を兼ね備え、どこか憎めないユーモアをたたえたこの男のキャラクター造型こそが肝だろう。これはただ一人、ローマと言う国家の崩壊を予見しながらも、それを理解し得ぬ人々によって立ちふさがれながら、それでもギリギリまで最良の方法を探し、強大な野心をもちながらどこかに誠実さを併せ持ったこの奇妙な男の、人生のすべてをかけた決断に至るまでの軌跡を描く物語なのだ。

歴史物と敬遠することなく、単純にエンターテインメントとして面白いシリーズなので、戦記物などが好きな人にオススメしたい。塩野七生の描くカエサルは、本当にありえないくらいに格好良いぜ!

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本日の購入物

眠いのに神経が高ぶって寝られないと言う経験は誰にでもあるのではないかと思う。明日がつらくなるのが分かっているのに、なぜか眠らない(眠れないではない)のは、眠る事によって生じる断絶を忌避するものであると同時に、翌日と言う新しい現実に対して逃避をしていると言う事なのだろうなあ。

ストレス溜めてんのかな、自分…。

1.『白い花の舞い散る時間 ~ガールズレビュー~』 友桐夏 コバルト文庫

1.コバルトロマン大賞受賞作(佳作)らしいのだが、他にもノベル大賞やら読者大賞やらがあって、それぞれの関係が良く分からず困惑した。誰か教えて下さい。
まいじゃー推進委員会!で褒められていたので買ってみた。まだ冒頭を読んだだけだけど、これは確かに傑作の香りがする。言葉の使い方がとても綺麗で、文章のすみずみまで作者の神経が行き届いているのが、ちょっと読んだだけでも分かった。

続きを読むのがとても楽しみだなあ。

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2005.09.13

『半分の月がのぼる空(1)~(5)』読了

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半分の月がのぼる空(1)~(5)』(橋本紡/電撃文庫)を読了。表紙とリンク先は一巻です。

これは良いなあ。魔法も奇跡も超能力も世界の危機も冒険も普通小説である。曜日シリーズの方と同じ傾向の作品だが、橋本紡が本来の資質である繊細さを”難病物”と言う、ある意味分かりやすいフォーマットに落とし込まれているので、ただただ日常を切り取った曜日シリーズに比べると、随分一般性を獲得しているように思われる。
ヒロインのキャラクター造型も、いわゆるライトノベル的なキャラ立てがなされており、良くも悪くも電撃文庫的な味付けがされているところは、まあ、人それぞれの好みによるかも知れない。ただまあ、僕は(リアルでもフィクションでも)性格が悪くてわがままな女の子が好きなので、なかなか面白く感じました。あー今だったらツンデレと表現されるのかもしれないが、そんな事を言い出したら何でもかんでもツンデレになってしまうので、実の所、安易にツンデレという言葉を使うのは好きじゃないのだが、考えてみたら自分でも結構使っていた。流行って恐ろしい。

閑話休題。

とにかくこの物語の良いところは、大きな事件など何一つ起こらないのにも関わらず、少年と少女、そしてその周りにいる人々の一瞬の感情を切り取ることが実に巧みだと言う所であって、病院と言う生と死が存在する場所で、主人公が受け取るさまざまな出来事は、しかし、きちんと言語化されること無く、なにかもやもやとした曖昧さを維持したまま主人公は受け取る。その”何か”と言うものは、言葉にしては失われてしまう類の掛け替えの無い”何か”であって、それをもやもやとしたまま切り出すことが出来るのがこの作者の凄いところだと思う。キャラクター的にも際立ったところが無くて、むしろ現実的な、嫌なところも良いところもある普通に自分勝手な人物像を描けると言うところも良いと思う(例えば夏目医師などは実に困ったコドモオトナであって、高校生である主人公を本気でボコボコにしたり、焦りや怒りをぶちまけたりするのだけど、最近になって『大人』などと言う生き物は存在しない事に気が付いてからは、こういう純粋さがひどく切ないものに感じられるようになった)。

もっとも最初の方は、ごく一般的な難病ものの粋を得ないのだけど、後半に行くに連れて”生きる”事という問いかけが持ち出されていくと、いわゆる難病ものにある”泣かせ”の方向性を逸脱し始める。”泣かせ”と言うのは非常に読者にとって強い感情を引き起こす方法論である。それは一定の方程式で導き出せるような技術的なものであるのだが、橋本紡はそんな技法的なものを一瞬で乗り越えてしまう。確かに不条理で、主人公たちにはどうしようもない不幸が降り続くのだが、しかし、そこには安易な同情(泣き)を拒む強いものがある。この作者が真面目だなあ、と思うのはまさにそんなところであって、これもまた言語化すれば大変陳腐なものになりかねない尊い何かを、愚直なまでに描き続ける作家なのだと思った。

決して上手い作家では無いとは思うのだけど、言葉に出来ない何かを言葉にしないまま語る部分と言うのは、実に文学的なセンスであると思う。その意味では稀有な作家だと思う。

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2005.09.12

本日の購入物

最近、このブログの在り方を見直そうかと思っております。今年に入ってから「ただひたすらに書く」と言う目標を自分内に設定していました。これは、とにかくまとまっていようといまいと、ただただ書き続けて持続させると言うのが主旨で、「書く事」の持久力をつけるのが目的であります。
9ヶ月ぐらい続けてきて、ようやく毎日、何かしら書くと言う行為に慣れてきたと思うので、そろそろステップアップをしようかな、と思う次第です。次は、物事を相手に伝えるツールとしての文章に拘って書いていきたい、と言うのが漠然とした目標として浮かんでおり、これは端的に言えば分かりやすく書くと言うことであり、すぐに自己中心的な文体に陥りがちな自分に対する課題とするものであります。まあ、論文が苦手な自分としては、他人に自分の考えを伝えることの困難さをしばしば感じるので、その苦手意識を克服したいと言うのが目的だったりします。まあ、自分のためですな。

以下、購入報告です。本日のものではないものも入っています。

1.『LOVE』 古川日出男 洋伝社
2.『読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』 北上次郎×大森望 ロッキング・オン
3.『食卓にビールを(4)』 小林めぐみ 富士見ミステリー文庫
4.『サウス・ギャング・コネクション BUD×BUDDY2』 吉田茄矢 富士見ミステリー文庫

1.わーい、僕が敬愛する古川日出男氏の新刊だよ!つーかLOVEって…めちゃくちゃストレートなんだけど、しかし、古川日出男はそんな使い古された言葉に命を吹き込む魔法を心得た現代で数少ない魔法使いのような作家だと思う…のは信者の妄言かな。別にかまわないけどね。
2.なんか大森望の本を買いまくっているような…。いつの間にファンにになったんだ、僕は。自覚がないだけなのかなあ…。
3.僕もガキの時は、小林めぐみの面白さを全然理解出来ていなかったので大きな事は言えないのだが、この作品が売れないのは何かの間違いじゃ無いかと思う…といって実は人気作品だったら恥ずかしいが、あまり売れていると言う話を聞かないのは僕だけなのだろうか。ありえん。
4.一巻がなかなか面白かったので二巻も買ってみた。ギスギスした人間関係だなあ、とか色々言いたいことはあるのだが、とりあえずシルビアはツンデレだと思うに一票。

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2005.09.10

『薔薇のマリア Ⅲ.荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐』読了

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薔薇のマリア Ⅲ.荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐』(十文字青/角川スニーカー文庫)を読了。

S.M.Cよりベアトリーチェを取り戻したマリアローズたちだったが、そのために払った犠牲は大きかった。打ちのめされるベアトリーチェを前にマリアは立ち尽くす。悲しみにくれる人々へ向けて、しかし、S.M.Cは更なる牙を剥き出しにする。大切な人達を守るため、マリアは必死に走り続ける。

愚直。まさにその一言に尽きる作品だ。目新しい要素など何一つ無い。ウィザードリィ風のゲームファンタジー世界の中で繰り広げられる、正統かつ王道な成長物語である。

捻くれてハリネズミのようになっていた主人公のマリアが、信頼できる仲間を得て再生すると言うストーリー…だったのは前巻まで。今回は、マリアの大切な人達に降りかかる災厄と、それから守ろうとするマリアの苦闘が描かれる。信頼、友情の物語と言う口に出すと気恥ずかしいことこの上ないテーマを、十文字青は照れず逃げずに真正面から描いてみせる。しかも、その描き方を骨太な事といったら無い。仲間を信頼し、信頼され、自分の居場所を探していくと言うただそれだけの事を貫き通す事のなんと難しい事か。守りたいと言うマリアの願いと裏腹に、この世はあまりにも理不尽で、マリアの力は絶望的なまでに足りない。しかし、一人では出来ない事も、誰かと一緒ならば、そして誰かのためならば。誰かを信頼を受けながら、その信頼に答えるために自分のできる事をさがして。そんな平凡な不安と喜びの日々を描いている。この巻に至っては、今まで自分のことだけで精一杯だったマリアが、他人を慈しみ守りたいと言う積極的な願いのためにひたすらに走りぬく。ときどきくじけそうになりながらも、仲間の助けを借りて走る。

ああ、何て青臭くって、なんて魅力的な物語である事か。理想主義といわば言え。子供の妄想と捨てるならば好きにするといい。だがこの物語は、そう言う分かった風に諦めた主人公が、世界の残酷さを知りながらも、世界に対する信頼を取り戻していくと言うファンタジーなのだ。現実逃避とは言わせないぜ!
 
 
まあそれはそれとして、SIXが超素敵。卑怯で卑劣、残忍で残酷、無情で無敵なすさまじい悪党ですよ。その一片の曇りも無い邪悪ぶりには怒りを通り越してすがすがしさしか感じない。もはやこれは人間ですらなく、ただSIXと言う生命体としか言いようが無く、人間的な好悪の対象にはならないような気さえしてくる。SIX様と呼ばせてください。

(なんか…色々と台無しだなあ…)

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2005.09.07

『涼宮ハルヒの陰謀』読了

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涼宮ハルヒの陰謀』(谷川流/角川スニーカー文庫)を読んだ。いやあ…本当に面白いなあ。

いきなり前前々巻の後始末から始まるあたり一冊の本としての統一感は欠片も無いのだけど、そもそも涼宮ハルヒと言う作品自体が断片的な出来事を拾い集めたような作品であり、物語的な統一感はそれほど重要視されていない事を考えればなんら問題点は存在しないものと思われる。むしろ、この作品の肝は舞台と世界背景、言い換えれば「設定」こそがもっとも重要な存在であり、設定の上にいくつもの出来事が演じられている壮麗なる舞台劇のような気がするのだ…てのはさすがに言い過ぎだな、うん。たぶん。

未来人、宇宙人、超能力者たちが入り乱れ、その中心部に涼宮ハルヒとSOS団がいると言う構図は一巻で完成されているものであるが、それら三者の中にも内部分裂や派閥の存在が匂わされながら、さらにそれぞれが別々の思惑で動いている様子で、状況を動かす要因がすさまじい勢いで複雑化が進んでいるのだけど、実はこれらの伏線と言うのはかなり最初の方から存在しているわけで(未来の朝比奈さんとか)、単にいままで要因が物語の表面に出てきていなかっただけに過ぎないと言うことだろう。ついにこの作品の牙を向いてきた、ということかもしれない。

複雑化する陰謀と裏腹に進んでいくキョンとハルヒのSOS団の関係は深まりを見せながらも、それすらも陰謀に取り込まれていくあたりは、これからの展開の壮絶さを予感させるような気がする。ラストの朝比奈さん(大)との会話から判断すると、現実と自我への不可侵性の崩壊と言う展開が予感させられるけど、『絶望系~』をやらかした谷川流であるからして、主人公たちのあらゆる可能性を奪い去る最悪の展開が待ち受けていないとは言い切れないのが恐ろしい。うーん、楽しみだなあ。

それはそれとして、長門のすさまじいメインヒロインぶりには腰が抜けるかと思いました。乙女回路が発動していますねえ。あと主人公、意外と独占欲が強いな(”俺の長門”とか言っているし…)。素晴らしいです。
 
  
全然関係無いですが、帯にアニメ化企画進行中とか書かれておりますね。まあ、その意気は買わないでもないけど無理に決まっているだろそんなもん、と言うのが正直なところ。アニメ化して面白くなる要素はいとうのいぢの絵以外一つもありませんよこの作品。

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本日の購入物

本屋でこんなものを見かけた。はっはっはっはっはバカじゃねえの?143頁で1575円だと?読者を舐めてんのか?一体どう言う商売ですか?西尾維新ならばオタクならいくらでも金の出すってか?人の足元を見ていますね?見ていますよね?オタクから金銭を搾り取ろうとしてますよね?ね?

くたばりやがれ。

1.『わたしたちの田村くん(2)』 竹宮ゆゆこ 電撃文庫
2.『ガトリング・メロディ』 長谷川昌史 電撃文庫
3.『撲殺天使ドクロちゃん(6)』 おかゆまさゆき 電撃文庫
4.『半分の月がのぼる空(2)~(5)』 橋本紡 電撃文庫

1.三角関係ラブコメスキーの間で話題沸騰のラブコメ小説の第二弾。あちこちのライトノベル系感想サイトで喜びの声が上がっているのが目に浮かぶようですが、僕も結構好きなのでありがたい事です。
2.『ひかりのまち』の続編らしい観念青春小説の第二弾。明確に設置された概念をめぐるスタンスは今回も継承されているらしくて、一つのテーマの答えを探すために綴られる物語は大変良いと思うのだけど、そもそもその答えが受け入れられなければ作品そのものを受け入れられなくなるので結構リスキーな事をやっていると思う。
3.特に言うべき事はないドクロちゃんの6巻。もう6巻も続いているのか!という点にまず驚くのだが、だらだらと起も承も転も結も無い話なのになんで面白いんだろうなあと言う事を考えてみると、物語と呼ばれるものの奥深さに心打たれる次第である。
4.まあ何も言うなよはっはっは。アニメ化らしいけどこんな地味な話をアニメにすることに何の意義があるっているんだ?という疑問は無粋と言うものなのかなあ。大変面白いけど、これをちゃんと面白いものに出来る人間がアニメ業界にいるのだろうか。暴言ですか?そりゃそうだ。ごめんなさい。

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2005.09.06

『円環少女(サークリットガール)(1) バベル再臨』読了

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円環少女(サークリットガール)(1) バベル再臨』(長谷敏司/角川スニーカー文庫)を読みました。なんか色々吹っ切れたのか…?

良くも悪くも淡々とした文体なので、序盤の魔法バトルに今一つハッタリズムが足りなくなるのは仕方の無いところなのだろうな。いわゆるライトノベル的な過剰さとは無縁な描写が続くので、次から次へ登場するキャラクターの人数と比べて、キャラクターの描写が弱い気がした。
しかし、この淡々とした描写が、物語がクライマックスを迎えていくに連れてうねりにも似た感情の流れを生み出して行く所は実に圧巻である。これはこの文体でしか得られぬカタストロフであって、作者の表現の美しさに酔いしれるとともに、ますます作品としては勿体ねえなあと思った。なんかキャラクターが沢山出てくるのに扱いがぞんざいと言うか、ゴミのように死んでいくな…。これは、キャラクター小説として読まないほうが良さそうだ。

魔法と普通人の関係とか、魔法世界の設定とか、アイディア的には実にわくわくする上に、物語的な組み込み方も完璧で素晴らしい。普通人をこれほどまで凶悪な存在に設定する事で、通常の超人バトルものと価値観の転倒が起こっているあたり、作者の非凡なセンスが伺えるなあ。たまらん。

まあ、今回は①と書いてあるので、キャラクターの関係性の整理の巻なのだろうと思う。こう言う作家は長く書けば長く書くほど面白くなっていくタイプだと思うので(その割には寡作なんだよな…この人)、後はただひたすら続きを待つのみですね。まあ、それが重要なんだけど。

ところで、ヒロインの小学生魔法少女(S属性付き)が大変可愛いやらしいくて素晴らしいのだけど、さすがに危険と言うか犯罪的だと思った。主に作者が。

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2005.09.05

『バイトでウィザード 響けよ我が祈り、と少女は笑った』読了

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バイトでウィザード 響けよ我が祈り、と少女は笑った』(椎野美由貴/角川スニーカー文庫)を読んだ。…なんて気持ち悪い話だ…。

前々から邪悪極まりない作品だとは思っていたけど、まだまだ過小評価していたらしい。既にエンターテインメントなどかなぐり捨てて、ひたすらに人間のダークサイドをえぐりにえぐり抜いている。登場人物の誰一人として幸せになれない展開は、作者の反骨精神の賜物か綿密な計算に基くものものかは分からないが(反骨に1000点…個人的には)、とにかく良くも悪くもひどい話で、その容赦無さこそが大変に面白い。

相変わらず組織の駒として利用され尽くす主人公と、前向きに生きようとするも何一つ上手くいかない主人公の妹をはじめ、とにかく前に進めない停滞感と絶望感に満ちている内容である。特に主人公の、つらい決断を下す事がいつまでも出来ず、ひたすら懊悩している様は、その葛藤の身近さのためもあって、実に嫌な気分になれる事請け合いである。

しかし、この作品の凄いところは、いつまでも成長の出来ない、試練を乗り越えられないキャラクターを主人公にしたアンチビルドゥンクスロマンとなっているとこじゃないかと思う。何しろこの悩みすぎる主人公はクライマックス部分に至るまで、結局、決断を回避してしまうのだ!(結局外部からの操作によってその葛藤を解消されてしまう)そんなわけで、決断を回避してしまった主人公だが、勿論そんなことで事態が好転するわけも無い。決断をしなかったことで、さらに苦しい状況に陥ることは間違いなく、いつまでも態度をはっきりしないせいでますます組織に絡めとられてしま宇野である。

はっきり言って、主人公を駒として利用する組織の長の方が、余程苦しい決断を行っているあたり、作者のアンチビルドゥンクスロマンとしての構図に自覚的な事が伺える。本当に、作者は人間が嫌いなんだろうなあ…。

この作品、もしかしたらライトノベル史上に残る怪作になるかも。続刊も絶対に買うので、作者がどのような結末を作るのか付き合っていこうと思います。打ち切られなきゃいいのだが…。

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2005.09.04

本日の購入物

イマの覚え書きを書くのに力を使い果たしたので簡単に。

1.『魔人探偵脳噛ネウロ(2)』 松井優征 集英社
2.『アイシールド21(15)』 原作:稲垣理一郎 漫画:村田雄介
3.『デスノート(8)』 原作:大場つぐみ 漫画:小畑健

1.む、どうやらこの作者、化けたな…。一巻はいかにもな過剰さが目立っていたが、その過剰さはそのままにきちんと漫画として面白くなっている。弥子の存在意義と個性をはっきりしてきて、なかなか可愛らしいんじゃないんでしょうか。奇天烈なネウロのキャラクターも少しずつ深みも増してきているし、何より犯人の異常性にもスタイリッシュでフリークスな格好よさがある。これでもっと絵が上手くなれば天下が取れますな、マジで。
2.試合のクライマックスから二転三転させる見せ方に痺れる。話作りが上手すぎて、格好いいぜ!
3.この作品は、あまり長く続けない方がよいと思うのだけど…。現時点ではどこまで話を膨らませるつもりなんだろう。三すくみ状態にしたのはLの時の対決路線から転換なんだろうけど、これって膠着状態に陥りかねんので漫画としてはどうなんですかね…。

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『最果てのイマ』その4

久しぶりに『最果てのイマ』(XUSE)について書こうと思う。今まで書いていないだけで、ゲーム自体はちまちまと再読していたのだけど、読めば読むほど書きたい事がまとまらなくなっていくので、とりあえず冷却期間を置いていました。
とは言え、今回書くにあたって結論が出たかと言うと、全然そんなことは無くて、やっぱりまとまらないままなんですが、まあ、書きたいことが出てきたので書こうかな、と。

例によってネタバレ全開ですが、そんな事を言いつつも大したネタバレではなかった前と違って、今回は本当の意味で洒落にならんネタバレであります。ゲームをやっていない人は勿論、金輪際このゲームをやらないと言う人も読まない方が良いでしょう。読んでよいのはクリアした人だけ!君と僕との約束だ!(何を言っているの?)

・デモムービーについて
最近、気が付くと『最果てのイマ』のデモムービーを見てしまう…。暇があると見ているので、なんかの病気かと自分でも思わないでもない。サブリミナルでも入っているのか。
それにしても不思議なデモだ。仮にもエロゲーのムービーなのに、ほぼ全編に渡って田中ロミオの文章が挿入されている。絵も音楽も、どちらかと言うと全面には出てこなくて、文章こそがこの作品の売りであると言う意図がよくわかる構成になっていて、XUSEは良く分かっているなあ、と思いました。しかもよく見るとネタバレ全開…。

・エピローグを読んで思った事。
実はこれ、かなり絶望的なエピローグのような気がする。それはどういう事かと言うと、実の所この終わり方では忍が最初に切望していたものは何一つ得られていないからだ。忍が何よりも求めていたのは、自らの支配力の及ばない絶対の他者の存在であり、その他者と繋がりたいという欲望が根底にあった。そのために彼は聖域を作ったのだし、自らの支配をなるべく施さないように注意深く振舞った。存在そのものが異質な自分の上に幾重にも仮面を被り、誰にも侵される事の無い”他者との交流”を模倣したのである。
しかし、この結末に至った時点で、彼にとって真なる他者は存在しない。もともと忍がもっとも恐れていた”全人類の人格的統合”を行った末に得たものは、唯一絶対なる自我を得た貴宮忍と言う名をもった人類個体であり、そこには他者は存在しないのだ。戦後に置いても、忍に対して害意を抱く事の出来る人間は存在せず、彼の行為はすべて肯定され、人類は変質し、彼に好意を持つ事そのものが人類としての基本事項となった世界。そんな世界で彼は生きる事を余儀なくされる。豪屋大介の『デビル17』でも書いた事だが、その世界は忍にとってどこまでも都合の良い理想の牢獄そのものになるだろう。それこそが絶望と言うものだ。たとえ忍自身の能力の低下から、完全なる支配を行う事は出来なくなったとしても、彼にとって未知であり不安でり恐怖であるコミュニケーションの存在は既に無い。彼の”他者”を得ようとする試みは失敗に終わったのだ。それも永遠に。
しかし、実はまったく希望が無いわけでは無い。それはイマの存在だ。彼女は一年に渡って忍の治療を行い、そして自ら犠牲になって消えていく。消えた理由については、作品内において忍の脳組織の治療のためとされているが、僕はそれだけではないと感じられるのだ。つまり、彼女の存在は、忍が王として存在する上で無くてはならないファクターであるが、同時にその能力そのものが忍の他者性の喪失を招く結果となった。当然である。彼は生まれながらに人間の規格外となり、人間が当たり前に感知する事の出来ない(あるいは感知しすぎる)特異性を抱えたまま生きている。そんな忍が戦後に存在したら?それこそ完全に他者を失う事になったと思う。つまり、イマが言う自己犠牲と言うのは、そんな人間の精神の奥深くまでアクセスし支配する彼の能力そのものを失わせる事で、忍に”他者を理解出来なくさせた”事なのではないか。つまり、”人間には他者を理解する事など出来ない”が”想像する事は出来る”し”そう信じる事が出来る”と言う事。それは幻想だ。理解できたような錯覚。たとえ本当は他者が存在せず、忍は絶対の孤独の中にあるのだと言うのが真実だとしても、それを確かめる術の無い状態にすること。もしかしたら、この世に他者など存在すると言う事自体が幻想だとしても、それを信じる事。それこそが希望なのではないか、と思えるのである。それはまさにパンドラの箱の如く、知らないでいられるからこその希望であるかもしれない。それでもなお、人は他者の繋がる事が出来ると信じる事が、”個”としての孤独を抱え込んだ我々に出来る唯一の希望なのではないか、と言うのが現時点での自分の解釈である。

・書いていた思ったが、単にごく当たり前のことばかり書いているような気がしてきた。恥ずかしいので消そうかと思ったが、持ったいないし、覚え書きと言うことでご勘弁いただきたい。

・つーか、田中ロミオはいつも同じテーマで書いているよな…。

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2005.09.03

『愛はさだめ、さだめは死』読了

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愛はさだめ、さだめは死』(ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア/ハヤカワ文庫SF)を読んだ。面白かったけど、なんだか意外な感じ。

『たったひとつの冴えたやりかた』がとても面白かったので、同作者の作品も読んでみた。…全然、お話の方向性が違うよ…。そうか、この人は本来こっちの作風だったのだな。あっち(たった~)を新境地と呼ばれる理由が良くわかりました。こちらの方は、ディプトリーの短編とショートショートに分類される作品群であって、どれもこれもシャープな切れ味が格好良い。

中でも読んでいて一番「すげええええー!」と思ったのは、表題作の「愛はさだめ、さだめは死」だったかな。異星における生物の愛と本能の葛藤をすさまじい勢いで綴るノンストップなラブストーリー(と言うと語弊があるな)。そのあまりに力強い文体と愛を高らかに歌い上げる場面なんて読んだ時は、まるで舞城王太郎かと思いました。つか、ぶっちゃけ似てるな…(もちろん逆だって事はわかっているし、訳のせいかもしれないけども)。

他に面白かったのは、解説者曰く”<サイバーパンク>を完全に先取りした”「接続された女」、”人間性”というものの不確かさと非関係性を描いた「楽園の乳」、圧倒的なカタストロフと内省的な葛藤の両立と言うとにかく凄いことをやっている「最後の午後に」なんかは涙が出るくらいに面白かった。どの短編もラストでどうしようもない現実を思い知らされた後、結末は投げっぱなしになっているケースが多く、後味が悪いどころか、ぽっかりとした虚無感すら覚えてしまうのだけど、その突き放し方が凄く切れ味鋭く、癖になりそうな気がしてくる。ふむ。

しかし、気になるところが無いわけではない。書かれた時代背景が違うのだからしょうがないのかもしれないのだけど、一部の短編で描かれるあまりにも無邪気で傲慢な人間主義には、いささか鼻白むものを感じないではいられない。一番あからさまなのが「恐竜の鼻は夜ひらく」だ。この作品における主人公たちの人間以外のものに対する倣岸さは反吐が出そうになったのだけど、何より最悪なのが作品上、それが肯定されている点だ。てっきり主人公たちがひどい目に会うのかと思った何にも起こらなくて本当に腹が立つ。ちなみにとても面白いと思った「最後の午後に」にも同じようなところがあって、主人公たちの、自分達が助かるために自分以外の異星生物に対して平然と犠牲を強いる傲慢さにたいして、ひどく苛立ちを覚えてしまう。
まあ、60年~70年代に書かれた作品なんで、現代の感覚と照らし合わせる事の不毛さはわかっちゃいるのだが、なかなか感情は納得できませんね。やれやれ。

とは言え、この作品集の価値が減じることは何一つ無いと言える。シニカルで残酷で繊細なくせに甘さを抱えた物語は、確かに『たったひとつの冴えたやりかた』の作者だなあ、と思いました。

 
 
ところで、ギャラクシーの編集長であったロバート・シルヴァーバーグの前書きが異常に面白いのは周知の事実ですか?ここまで堂々と大混乱した前言撤回は初めて見たよ…。

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2005.09.02

『ハルピン・カフェ』読了

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ハルピン・カフェ』(打海文三/角川文庫)を読んだ。なかなか変わった事をやっているなあ。

結論を言えば大変面白かったと言っていい。買った動機としては、大森望が解説を書いていたからと言う身も蓋も無いものであったのだけど、読んでいく内になんだか奇妙な感覚と囚われてきた事で、これは真面目に読まないといけないと思うようになった。

奇妙な、と言うのはこの作品の叙述に対して思った事だ。
この物語は、事件に関わった様々な登場人物たちの視点(一人称)で叙述されている。それぞれ別々の立場で、独自の目的を目指して事件を追っていくと言う構図になっており、ライトノベル的に分かりやすく言うなら『バッカーノ』の叙述を思い返してもらえれば近いかもしれない。この叙述は様々な思惑が入り乱れる人間劇として効果を上げているように思う。

さて、そこまでならば普通にサスペンスものとして悪くない、で済ませられるレベルなのだが、この作品の面白いところは、布施隆三と言う奇妙な男を描ききったところであると思うのだ。何しろこの男、物語の冒頭からラストまで、すさまじい影響力とカリスマでもって語り手たちを惹きつけ、悩ませ、憎悪を浴び続けるのだが、しかし、彼本人が何を考え、何を目的として行動しているのかは謎めいており、物語の後半に至るまで明らかにされる事が無い。なぜならば、ほぼ語り手のすべてが彼に執着し追い求めているのに対して、布施隆三は「決して語り手として物語に関わらない」のだ。つまり、彼の”内面”は決して読者に開陳される事は無い。読者は、この奇妙な男を、語り手の主観を通して見る事しか出来ないのである。語り手たちの主観と思い込みに満ちた布施隆三像を幾重にも重ね合わせる事によって、少しずつ、神にも世界をも弄んだ男の精神が垣間見えてくる過程にはひどくスリリングな者であった。

もしこれが布施隆三の視点で物語が語られていたとしたら、それは単なるピカレスクハードボイルドとなって、ごく平凡な作品になっていた事であろう。とは言え、その方がずっと自然だと思うし、書きやすいのではないかと思う(布施隆三こそが主人公として設定されている節もある)。しかし、それをあえてせず、読者の解釈に任せるようにしたところがこの作者の凄いところだと思った。

結局最後まで謎めいたところを残した布施は、どこまでも格好良く、運命や神と呼ばれるものに対する嘲笑と憎悪と自己嫌悪にまみれたまますべてを飲み込んでいく。決して読者にたどり着けない領域へ飛び立っていく彼に対しては、正直なところ憧憬のようなものを感じずにはいられないのである。

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2005.09.01

『老ヴォールの惑星』読了

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老ヴォールの惑星』(小川一水/ハヤカワ文庫JA)を読んだ。面白いなあ。

小川一水のSFマガジン掲載作を含めた短編集。これが無類に面白い。小川一水のもっともストレートなSF作家の部分と、人間の善性に対する無垢な信頼が合わさった理想郷がここにある。ただ、ここで主張されている人間に対する信頼感は、時にリアリズムを逸脱して単なるファンタジーになってしまうように感じられてしまうのは、僕が人間に対して期待するところの少ないせいだけではない。小川一水を支持できるかどうかの分岐点と言うのは、まさしくそんなところにあって、その無邪気さゆえに拒否感を覚える人はいるのだろうなあ、とは思う。僕は、しかし、その信頼感と言うのは、逆に言えば作者の必死の主張であって、人間とは「そうあらねばならぬ」と言う観念が感じられるので、その理想を追い求める姿勢は結構好きだ。僕もこんな風に生きる事が出来たら…あるいは、世界のどこかではこんな善なるものが存在している可能性が…と言うようなことを思うと、少しだけ泣きたくなるのである。せつねえ…。

単純に読んでいて楽しいなあと思ったのは、冒頭の「ギャルナフカの迷宮」かな。迷宮の設定がありえねーっつーか、そもそもどう言う技術力なのか分からんと思ったけれども、人間としてのすべてを奪われた逆境の中、雄々しく人間性を追い求める姿にはただひたすらに胸が詰まる。電車の中で読んでいたのだけど、ラストのシーンには涙が出そうになった。くっ…涙腺が。

表題作の「老ヴォールの惑星」は、そのあまりのハードSFぶりには嬉しくなってしまう。もっとも”彼ら”の住む惑星サラーハのイメージが最初はなかなか掴めずに難儀した。物理は苦手やねん、僕。しかし、絶滅の危機に瀕した彼らが、惑星のヴォールが示した可能性を求めて死力を尽くして求める様は、やはり小川作品であるなあ、と思った。

「幸せになる箱庭」は、この作者の作品の中ではちょっと異色かも知れない。自由意志(と言うものが存在するとして。あるいは保障されたとして)が存在するのならば、現実と非現実の合間に隔たりなど無い。すなわち、自らが認識するものが現実なのだ…って言う結論は別段珍しいものでも無いような気がするのだが、そこに至る過程がとても面白い。どうでもいいんですが、ヒロインの女の子がみょーに可愛らしいのはけしからんと思うわけですよ。関係ないが。

「漂った男」は、おそらくこの本の中でのベストなのではないかな。主人公の男が陥った状況のユニークさもさることながら、繰り返される会話のすっとぼけたおかしみと、人間性とコミュニケーションと言うテーマが絡み合って不思議な緊張感を生み出しているように思った。そして、そんな中、ギリギリの状況の中で精一杯の勇気をもって前に進もうとする主人公の描写は、いかにも小川作品らしく、しかも、他の作品で見られたような抽象的なものではなく、極めて現実的で感動的だと思った。

今回の作品集で、小川一水のSF作家としての手腕をはっきりと確認出来たのは収穫だと思う。もともとこの人は物語作家としての側面を感じているので、たとえSF的な舞台設定をしていてもあまりSF色を感じさせないところがあった。しかし、これらは間違いなくSFそのものであり、しかも、今までのカラーを失ってはいないと感じさせられたところは素直に凄いと思いましたよ。

どんどん進化して行っているよなあ…この人…。すげえぜ。

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