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2005.09.14

『ローマ人の物語(8)(9)(10)』読了

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ローマ人の物語(8)ルビコン以前(上)』『ローマ人の物語(9)ルビコン以前(中)』『ローマ人の物語(10)ルビコン以前(下)』(塩野七生/新潮文庫)を読了。

塩野七生のカエサルへの熱烈なラブレターとでも言うべき内容だけど、それゆえに大層面白くなってしまうと言うのは、作者の語り口の上手さもあるのだろうけど、ユリウス・カエサルという人物があまりにも魅力的すぎるためであろうと思う。作者はカエサル贔屓なので、彼の行動のあらゆるすべてをカエサルに都合の良いように書いているのだけど、カエサルならば確かにそれぐらいは考えているかもしれない思わされてしまう説得力が生じている。なにより、塩野七生解釈の方が格好良い。そんな風に感じてしまうほどに、カエサルの人生は波乱のエピソードに満ちていると言う事だろう。
若い頃は独裁官スッラに睨まれてローマから逃亡したり、逃亡した先で海賊につかまったり(開放された後、捕縛して縛り首に)、とにかく話題が尽きないのだが、それ以降の平凡なキャリアを経て40歳を前後してついに”立ち”始める。元老院に冷遇されていた国民的英雄ポンペイウス、ローマ一の富豪であるクラッススとともに三頭政治によって自らの力を蓄え始める。しかし、ガリアの地で戦闘の日々を過ごすカエサルだったが、東方戦線に従事していたクラッススが戦死した事から三頭政治は瓦解を始める。カエサルを危険視した元老院はポンペイウスを自派に取り込み、ついには元老院最終勧告が行われカエサルは国家の敵と認定された。ローマとの境を示すルビコン川の前でカエサルは迷う。法の秩序に従い元老院の捌きを受けるか、それとも軍勢を率いてローマへ攻め入るか。わが身の破滅か、この世の地獄か。有名な「賽は投げられた!」のシーンである。

カエサルの波乱万丈な人生も面白いが、塩野七生が描写する登場人物たちの魅力的なことと言ったら無い。例えば、カエサルとは政治信条では対立する哲学者にして文学者であるキケロは、実はカエサルとは哲学・文学においてはお互いを認めう間柄である。ある時、護民官によって過去の罪を告発され困り果てたキケロはカエサルに相談する。親身になって相談に乗るカエサルだが、実は護民官を使って告発させたのは他ならぬカエサルであり、しかもキケロはそれをうすうす知りながら相談する下りの暢気さはおかしいやら呆れるやら…。カエサルがまた人を食った男で、自分一緒にガリアまで行かないかなどと誘う始末。本気で感激するキケロなんて読んでいて愉快な気分になってしまうぐらいだ。

だが、やはりなんと言ってもカエサルの、不屈で不撓で不敗の、際立った先見性と実行力を兼ね備え、どこか憎めないユーモアをたたえたこの男のキャラクター造型こそが肝だろう。これはただ一人、ローマと言う国家の崩壊を予見しながらも、それを理解し得ぬ人々によって立ちふさがれながら、それでもギリギリまで最良の方法を探し、強大な野心をもちながらどこかに誠実さを併せ持ったこの奇妙な男の、人生のすべてをかけた決断に至るまでの軌跡を描く物語なのだ。

歴史物と敬遠することなく、単純にエンターテインメントとして面白いシリーズなので、戦記物などが好きな人にオススメしたい。塩野七生の描くカエサルは、本当にありえないくらいに格好良いぜ!

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