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2005.08.17

『犬はどこだ』読了

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犬はどこだ』(米澤穂信 /東京創元社)を読んだ。うーん、また感想が書きにくいよー。

とは言え、相変わらず大変面白かった事は先に述べておく。正直に言うならば面白くて面白くて面白いと言うぐらい面白かったと言っても過言では無いくらい面白かった。思うに、米澤穂信の作品の面白さは、ハラハラドキドキと言うたぐいのものではなく、またミステリの常道であるそれまでの世界が反転する崩壊感を味わうものでも(少なくとも主軸では)無いと思う。米澤穂信がもつ作品の魅力と言うのは、時として地味とさえいえるほどに現実に密着した感情の流れにあると思う。例えばこの作品の主人公は、良い大学を卒業し良い銀行に就職したものの挫折し目標をすべて失ってしまった人間であり、その空虚さを抱え込んでいる。それだけならばごく普通の設定と言えるのかもしれないが、作者はそこに主人公の虚ろな感情を注ぎ込む。それは明確なキャラ立てとは程遠く、むしろ主人公のキャラクターを曖昧にしているのだけど、それはもともとキャラ立ての作法ではなくむしろ純文学の領域の曖昧で言葉に出来ない何かではないかと思う。それだけならば他にもあるのかもしれないが、純文学の領域である曖昧な自己言及的な主人公を設定を、ライトノベル的な作劇を処理していると感じるところが面白いと思った(考えてみたらこの作者の主人公像の空虚さが、単に僕の共感をそそるだけなのかも知れず、だとするとここまで書いたことが無意味になってしまうのだが、それはそれとしておこう)。

またこの作品のミステリ的な側面に目を向けてみると、単純な失踪人探しと土地の歴史言及がお互いに影響しあっているところが面白い。歴史ミステリというのはある程度メジャーなジャンルではあるけれど、それに主人公の空虚さを巡る葛藤とすら結びついていくあたりは素直に凄いと思った。

米村穂信の凄さは、ミステリ的な謎と登場人物たちの葛藤、そして舞台設定の意外な繋がりによってお互いが影響しあうと言う複雑な構成を、決して重厚長大にしないで、さらりと作り出せるところにあるのではないかと思ったのだが、きちんと考察したわけではないので単なる妄言です。すいません。

適当な感想で、正直すまぬ。

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