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2005.08.15

『クドリャフカの順番 「十文字」事件』読了

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クドリャフカの順番 「十文字」事件』(米澤穂信/角川文庫)を読んだ…先月の話だけど。

はっきり言って大変面白かったのだけど、それなのに今まで感想を書いていなかったのは、感想を書くべき事がまったく思いつかなかったためである。面白かった…以外の感想が出てこないんだもんなあ。しかし、いつまでも後回しにするわけにもいかないのでここらで感想を書くことにする。

かつて、一瞬だけ存在した角川スニーカー系のミステリレーベルから出版された(…だったと思う)、通称”古典部シリーズ”の待望の第3弾。いやーまさか続きが出るとは嬉しい驚きです。穏やかで、そのくせ苦味を抱え込んだシリーズで、作者のデビュー作からのシリーズにも関わらず、少しも”青さ”や”粗さ”を持たない筆致が特徴的な作家だと思います。しかし、それはヌルさとはかけ離れた穏やかさであって、むしろ人間性というものに対する冷たく突き放した視線がどの作品にも通低しているように思う。作者もまだまだ若いのに、良くここまでキャラクターを突き放せるよなあ…。

物語は文化祭の前日から幕を開ける。折木奉太郎が所属する古典部において、問題が起こっていた。古典部が出展する文集の発注ミスにより、多く作りすぎてしまったのである。このままでは赤字は確定。何とかして文集を売りさばこうと、古典部の面々は文化祭のイベントにひた走り、宣伝活動に従事する(奉太郎を除いて)。そんな古典部をよそに、文化祭は順調に開催されるが、各部の小物が盗まれると言う事件が発生する。古典部部長の千反田えるを始めとする古典部の面々は、文集宣伝のためにこの事件を解決しようと試みるが…(奉太郎を除く)。

いわゆる殺人の起きないミステリの範疇に含まれるが、作者の過剰に流されない筆致にはよくあっている。むしろ、それによって犯人の動機を巡る苦くて痛い背景を過不足無く表現しているように感じられる。僕がこの作品を読んで凄いと思ったのは、3日間にわたる文化祭のお祭めいた楽しさを見事に描きつつ、その過程で生じる登場人物たちの葛藤、犯人の物悲しさまで含めて表現しているところだと思う。それは、まさに”青春”だなあと思うしかないものであって、文化祭では積極的な参加はしないで隅で眺めているのが常だった自分でさえも思わず懐かしさを覚えてしまうほどだ。本来の主人公である奉太郎だけでなく、古典部の面々からの視点を取ることで、猥雑とした雰囲気を上手く出していると思った。

ミステリ的な部分は、いわゆる”本格”と呼ばれる類の物ではない。あくまでも常識の範囲内の事件であり、またその解決への解法も理によって解き明かされているとは言えないように思われるが、そもそもこの作品は青春ミステリであるからして、少年少女たちのほろ苦い思いを十分に描ききっていると言う意味では大変素晴らしい作品である。僕は作者のファンなので、あまり客観的な読み方はできていないと思うけど、本当に面白い作品だと思うので、ライトノベル読者にこそ読んで欲しいと思いました。

(なんかまとまりが無い上にだらだらと書いているなあ…。まあいいか)

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