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2005.08.31

『本日の購入物』

ぐああ…気力体力を使い果たした…。眠い。死ぬ。
なんだか定期的に同じような事を言っている気がしてきたが、過去の日記を見てみると、月に一度が二度くらいは言っているみたい。懲りねえ奴…(自分の事だけど)。

1.『オルフィーナ サーガ』 天王子きつね メディアワークス
2.『円環少女(サークリットガール)(1) バベル再臨』 長谷敏司 角川スニーカー文庫
3.『薔薇のマリア Ⅲ.荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐』 十文字青 角川スニーカー文庫
4.『バイトでウィザード 響けよ我が祈り、と少女は笑った』 椎野美由貴 角川スニーカー文庫
5.『ローマ人の物語(8) ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)』 塩野七生 新潮文庫
6.『ローマ人の物語(9) ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)』 塩野七生 新潮文庫
7.『ローマ人の物語(10) ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)』 塩野七生 新潮文庫

1.まあ例によって例のもの(何それ)。天王子きつねも絵が変わったなあと言う印象だけど、それが上手いという方向に向かう気がしないなあ。いや、そう言う漫画家ではないのは分かっているのだが。
2.昨日に引き続き、角川スニーカーを少々。この作者はいまどき珍しいリリカルかつハードなSFを書く作家だと思うのだけど、今回は普通のラノベSFのような…。そもそも、遅筆で有名な長谷敏司がシリーズものなんて書けるのか(とても失礼です)。
3.昨日に(略)。薔薇マリの新刊っす。僕はこの作品が好きなんだけど、なんかこう言う派手さの無い堅実な作品に惹かれるような傾向がある。僕も年をとったのかなあ。
4.昨(略)。これまた結構気に入っている作品だったりするんですが、この作品の好きなところと言うのは、作品全体に染み込むように存在する”悪意”の表現なのです。この作品には善も悪も無く、ただ人の悪意だけがある。その悪意を真正面から描いているところに好感が持てるんだよなあ(同意は求めません)。
5~7.突然、塩野七生が読みたくなった。良くある病気ですよね(たぶん)。

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2005.08.30

『猫泥棒と木曜日のキッチン』を読了

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『猫泥棒と木曜日のキッチン』(橋本紡/メディアワークス)を読みました。普通だ…実に普通の小説だこれ…。

曜日シリーズ(なんて名称初めて知ったよ。シリーズになっているのか)の第二弾らしいですが、まったく共通点はないようなので初めて読む人にも安心です。

内容のほうも、実に普通と言うか普遍的になっていて、とても電撃文庫作家とは思えない。すばる文学賞とか、文学系の作家だと言われてもあんまり違和感を覚えないほどである。ううむ、前から思っていたけど、橋本紡ってライトノベルより、文学の方に素養がありそうですよね。この作者にはライトノベル的なリアリティ(ここで言うリアリティと言うのは現実のそれではなく、漫画的な荒唐無稽さをいかに小説に落とし込むかの技法を指します)が欠けていると言う印象があって、つまるところはハッタリが下手だと思う(これは三雲岳斗にも言える事だ)。そのため電撃文庫で書いていた作品はあんまり好きでは無かったのだけど(「金曜日~」は別。あれはとても好きだ)、ライトノベルのお約束から離れるととたんに面白く感じられてしまうのは、多分、橋本紡はマンガ・アニメ的な世界観を生み出す事よりも、自分の個人的な体験や感情の切り取り方が上手いためではないかと思った。架空世界を生み出す事は出来なくても、現実と言う世界を舞台にすることで、登場人物たちの繊細な心の機微を描く事に集中出来るからかもしれない。

その意味では、橋本紡がハードカバーから出すと言うのは正しい事なのかもしれない。少なくとも、それにはライトノベルと呼ばれるジャンルの多様性と可能性がある。この作品は、普段ライトノベルを読まないと言う読者層にも受け入れられやすいように思う。

ただその普遍性の代償として、やや全体的に底が浅く感じられてしまうのは残念なところだ。また曜日シリーズと言う”枠”に囚われてしまったのか、やや説明不足の点も否めない(猫泥棒はともかく、木曜日のキッチンについて、作品中における役割が明確ではない)。前作に比べると切実さの点でも一歩劣るか、と言う印象だ。

しかし、押し付けられた不幸を呪うでもなく受け入れるのでもなく、淡々とやり過ごしていく日常の風景の、奇妙な美しさには、やはり胸をかきむしらされるような切なさを感じてしまった。不幸は不幸としてこの世にいくらでもあると言う認識と、それを受け入れたゆえに生じる日常へのあまりに切ない眼差しには心を打たれるのだ。

 
不幸はある。しかし、幸せではないなどとは誰にも言わせない。

そんなフレーズを思いついた。

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『本日の購入物』

何一つネタが無い。自分の人生ってこんなものか、と言う事に諦めがつくようになったファッキンな今日この頃、みなさんお元気ですか?僕もデカルチャーに元気です。

さて、今日買ったものは以下の通り。

1.『砂ぼうず(13)』 うすね正俊 エンターブレイン
2.『エマ(6)』 森薫 エンターブレイン
3.『よつばと!(4)』 あずまきよひこ メディアワークス
4.『涼宮ハルヒの陰謀』 谷川流 角川スニーカー文庫
5.『半分の月がのぼる空』 橋本紡 電撃文庫
6.『インベーダー・ストリート』 菊地秀行 ソノラマノベルズ

1.久しぶりだなあ。表紙は新装版準拠なんですね。旧版を持っている自分としてはちょいとバランスが悪くなるのが気に入らないところだが…。
2.表紙が黒いなあ…色彩的にも構図的にも。ここで暗いトーンに転調すると言うことはクライマックスは近いのだろうな。
3.なーんにも起こらない日常マンガの4巻。面白いなあ…なんでこんなに何にも起こらない話が面白いんだろうなあ…。あずまきよひこって本当に凄いと思う。
4.はあ、アニメ化っすか…。別に何の期待もしてないけど、ちゃんとSFをかける人が脚本を書いてくれると良いなあ(期待してんじゃねーか)。
5.えー何を今更と申されます向きもありましょうが、『猫泥棒と木曜日のキッチン』が面白かったもので、つい、衝動的に…。
6.発売されていることに気が付いていなかった…。昔々、僕がまだ小学生だった頃に読んだ『風の名はアムネジア』と『インベーダー・サマー』が一冊になっての再販です。色々思い出深い作品で、実は僕の思春期におけるバイブルの一つであった作品だったりします。そうか、この頃から”人外年上属性”が着いていたのか、自分…(逆にこれが原点かも)。

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2005.08.29

『ホーンテッド!(4) エンドレスラビリンス』読了

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ホーンテッド!(4) エンドレスラビリンス』(平坂読/MF文庫J)を読んだ。なんですかこのやけくそぶりは。

どうやら最終巻らしい。ああ、個人的には大変好きな作品であったのだが、本人の志向か嗜好かはわからんが、やたらと実験的なことをやろうとしては手綱を取りきれずに自爆すると言う、まさに”墓穴掘り”の二つ名を欲しいままにしている先鋭ぶり故かあんまり売れて無いみたいっすね。

まだまだ書きたいことが一杯あったのであろう中での最終巻ということらしく、作品のそこかしこに漂う”打ち切り”感はただ事ではない。まさにジャンプの突き抜けを思わせるトンデモぶりで、全員がやたらとハイテンションかつ視野狭窄を起こしていて、ここに至ってもやたらと伏線を張りまくったり、かと思えば十数行ですべての陰謀を解決させたりと作者の好き勝手ぶりが伝わってきます。黒幕の告白なんて数行だぜ?それで終わりかよ!と憤る前に展開についていけず呆然自失…にならない程度にはこの作者のことは理解しているつもりだ(意味不明)。

ただ、もう少し手加減して普通の話を書こうぜ!と苦言を呈したくなってしまうのは事実。作者もそれは自覚しているらしく、作品内作品に対して、登場人物の口から酷評をさせているのだけど(P81や145とか)、よく読めば読むほど平坂読自身に跳ね返ってくると言うか何もそこまで自虐を!?と思ってしまう。えーと…ねえ?

自分でも分かっているのなら何とかすれば良いものを、ついつい新機軸とかやってしまいたがるのは、きっと思いついたことはすべてやってみなくては気が済まない人なんだろうなあ…と思う。だからこそ、このシリーズは変てこ極まりない作品としか言いようが無く、ストーリーは本筋ではなく、ただひたすらに読者を驚かせようと言うために奉仕していると言う意味では実にストイックな作品になっているのは僕の好みなんですが…。

とは言え、正直万人にオススメし難い作品なので、読む時は覚悟した方がよろしいかと。少なくとも退屈とは無縁の時間が過ごせることは疑い無しである事は保障しますが、後で本を壁に投げつけるかどうかは保障出来ないですね。

西尾維新が好きな人や、小説には瞬間風速的なインパクトを求める人、後はバランスが悪くても、何か一点でも光るものがある作品を受け入れられる人にはオススメ致します。

まあ、今更いくら宣伝しても遅いわけですが…。あと、今さら気がついたけど全然褒めてませんね、自分。

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『ビートのディシプリン SIDE4』読了

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ビートのディシプリン SIDE4』(上遠野浩平/電撃文庫)を読んだ。うーん、面白いっす。

上遠野浩平のジョジョバトル小説の最終巻にして、ブギーポップシリーズへ直接繋がる第4巻。ビートの戦いには一段落付いたわけだが、世界に蠢く者達の暗躍は、どうやら最終局面に向かいつつあるように思う。オキンジョンもアルケスティスも自らの目的に向かって多くの人間も巻き込みながら何らかの目的を具現させようとしているようだ。
そんな超越者たちの思惑に巻き込まれてしまったビートは、降りかかるディシプリン(試練)の数々に対してひたすらに足掻き、乗り越え続ける。乗り越えたはしから新たな障害が立ち塞がる無限の牢獄の中から、しかし、彼が見出したものとは?という事実が明らかになる。

結局、ビートに降りかかったディシプリンには、ビートに起因するものは何一つ無く、単に「運が悪かった」とされるものでしかないと言う点にまず驚く。「選ばれしもの」としての苦難でも「聖痕」としてのものでもなく、単なる不条理の産物として、何の意味も必要も価値も無いそのディシプリンは、「選ばれたい」と願いながらも平凡な地獄を生きる現代そのものであるようにも思う。この世を生きる事はただそれだけで試練であり、そしてその試練には意味があるとは限らないと言う事を、上遠野浩平はその絶大なる不毛さを語っているように思った。

しかし、それは試練に対して無力であれと言う事ではなく、価値が無いといっているわけでもない。無意味で無価値な試練に対してもなお足掻き続ける事。無力な努力をのた打ち回りながら続ける事。それを受け入れ、なお足掻く事への尊さのようなものを愚直なまでに語り続けるのが上遠野浩平と言う作家なのだ、と思った。上遠野浩平の作品に共通するものは、すべての人間の尊いものを無化しようとする運命に対する怒りであり、いっそ青臭いとさえ言える主張を、一定の説得力を込めて歌い上げる事が出来るのは、まさにその愚直なまでのスタンスなのかも知れない。

作品の中でビートは、ついに地獄のような世界で、無意味な努力を積み重ねる事で、その苦闘に意味を持たせる事に成功する。最後の最後で自らの「カーメン」を見出す事で、自らの積み重ねてきた不毛の歴史を、現在この瞬間に意味あるものへを変容させる事が出来た。それは苦闘を続けていく理由を得たこと、そして自分自身の過去を取り戻した事。それにより、過去におけるすべての彷徨に決着をつけたのだった。

もっともビートの戦いが終わったわけではない。理由を得たビートは、理由を得ただけ重荷を背負う事になったわけで、またその理由さえ、未来において失わないと言う保障は無い。彼の苦闘はまだまだ続くのである。それは”生きる”事に付きまとう困難さであり、決して逃れ得ぬものなのであるが、それでも、その困難さえ今の彼には輝きに満ちているのだろうな。

これ作品は、生きる事への困難さとそれに意味をもたせようとする概念の物語であったのだなあ、と、感じさせてくれたところに、やはり上遠野浩平の偉大さがあると思うのだ。格好いいなあ。

くそったれな人生に意味を与えるファンタジー。これはそんな話であると思う。

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2005.08.28

『天国に涙はいらない(11) メイドの道の一里塚』読了

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天国に涙はいらない(11) メイドの道の一里塚』(佐藤ケイ/電撃文庫)を読みました。相変わらずソツが無い作家だなー。

過去、自分の力を制御することが出来ずに、無意識に流れ出した妖気によって10万人以上の被害者を出してしまった悪魔少女(別名、悪魔っ娘)たまは、自らの罪を償うため、高校生霊能者である賀茂とその守護天使アブデルとともに、自分の妖気を浄化することをその身に課していた。浄化のためやってきた所、奇妙な屋敷を見つけてしまう。そこにはなんと、からくり仕掛けの”メイド”さんがいのだたった…。

あらすじを書いていても思ったのだけど、すっかり主人公がたまちゃんになっておりますなあ。本来の主人公である賀茂は、成長して人格的に揺らぎが少ないらしくて葛藤があんまり無いからかな。一時期はたまちゃんについて悩んでいたけど、今ではたまを守るという決意を固めているし、もともと霊能力もあるし、しかもアブデルの力まで借りているから、強すぎてピンチになら無いんだな、基本的に。で、スポットが当たるのがたまちゃん。自分の強大すぎる力の意味に悩み、過去の罪に怯え、賀茂への思いに戸惑いながら一歩一歩成長していくと言う構図になる。まさに主人公に相応しい。ていうか、すでに主人公ですな。

大体、この作品の基本コンセプトであるハーレムラブコメ(っぽい)部分は早い内に崩壊してしまったし、そもそもラブコメというよりは人情噺の側面の強い作品であるので妥当な展開なんじゃないかと思った。

さて、内容についてですが、収まるべきところに収まったと言う印象かな。メイドさんの扱いとしては、彼女の思いから考えればこれ以外にあるまいなあ。萌え作品としてテコ入れの場合は、何とかアブデルの言うとおりになった方が良いのかもしれないが、キャラクターを色々捻じ曲げないといけなくなるしな。それはともかくとして、珍しく正統派なヒーローっぽいことをやっている賀茂と、なんとかその力になりたいたまちゃんのすれ違いや和解まで描いていて大変素晴らしかった。らぶーとかそう言うんじゃなくて、人間として信頼しあっている二人の描写が大変気持ちいいと思う。あと、みきの嫉妬とか、キャラクターの設定をきちんと生かしているあたり本当にソツが無い。

ただ、人情噺としての側面が強くなっていて、萌えとかラブとかコメディ的な要素は大分薄くなっている気はする。しかし、作者の本来の資質はまさにそれであると思うので、僕は問題だとは思わないけど。見た目に反して、凄くまっとうなお話なんだよなあ…。物語のお手本にしたいくらいだ、と思いました。

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2005.08.26

『ヴぁんぷ!Ⅲ』読了

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ヴぁんぷ!Ⅲ』(成田良悟/電撃文庫)を読んだ。全然終わってねえー!

自分の存在に悩むヴァル、バルシュタインへの復讐に凝り固まったルーディ、復讐とともに自らの実験の成果を刈り取りに表れたメルヒルム、組織への忠誠を誓ったジグムント、そして己の欲望のままに行動するヴォッド。さらに多くの人間が(吸血鬼が)自らの目的のためにとある島に集い、そして知っちゃめっちゃかする話である。まープロットなんぞあって無きが如しというか、ひたすらにキャラクターを暴走させた挙句の大盤振る舞いである。つまりいつも通りの成田良悟であった。

かなり異色と言うか、他に真似を許さないと言うか出来ないと言うかの作風であって、良くこんな作品をきちんと一つのお話に出来るものだと相変わらず感心する。ひたすらに過剰極まりないキャラクターの立て方のみで作った話で、これでキャラクターが弱かったら絶対成立しない話だよなー(いつもの事だけど)。

結局、今回もキャラの暴走が終わらなくて、見事なまでに次回に続くとなってずっこけてしまう。特に唐突に出てきた吸血鬼の少女は、どうも苦し紛れに出したんじゃないかと言う疑いを覚える…。終わらなくて困った作者が無理矢理話にオチをつけようとした、みたいな。だって二巻の冒頭でしか出てきてないキャラが突然クライマックスをさらって行っちゃうんだぜ?

成田良悟の恐ろしさを改めて知ったような気がする。博打のような小説家だと思った(当たるも八卦、当たらぬも八卦)(それは占いだ)。

 
まあ、落ち着いた作風の成田良悟なんて想像できないけどな。

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2005.08.25

『平井骸惚此中ニ有リ 其五』読了

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平井骸惚此中ニ有リ 其五』(田代裕彦/富士見ミステリー文庫)を読んだ。この作者はたいしたものだなあ…。

LOVEオンリーの富士ミスの中で、ミステリーのラブコメの両立と言う実に難しい命題に対して、真面目に取り組んだ挙句にきちんと成功している稀有な作品であるのだが(他はLOVE方面に特化したり、そもそもミステリーを放棄しているケースが多い。全部じゃないけど)、何より人気のあるこのシリーズを人気のあるうちに完結させたと言うのが偉いなあ。なかなか出来る事じゃないね。

今回の事件は骸惚先生と太一君が別々の場所で起きた首切り事件に遭遇すると言う話。これだけでミステリマニアにはネタが割れかねんのだが、まあ大した影響はあるまい。このシリーズはミステリとしてのみではなく、キャラクター小説としても確かなもので、ミステリ部分を楽しめ無い人でも太一君の成長物語として読んでもいいし、ラブコメとして読んでもかまわない懐の深さがありますからね。

しかし、僕がこのシリーズで気に入っているのは、作品全体を通じて語られるモラルなのだ。モラルと言うと妙にいかがわしく聞こえるが(僕だけか)、要するに誠実さとも言えるものだ。それは骸惚先生が口をすっぱくして言っている『探偵は人を救う事など出来ない』と言う言葉と、それでも『人を救いたい』と言う太一君の倫理の葛藤に表れているように思う。しかし、この二人はその思いとは裏腹に、謎を解くことに甘美を覚え、犯人を糾弾する事に酔いしれると言う暗黒面を備えており、それは探偵の傲慢さそのものである。だからこそ骸惚は自らを抑えることで一家庭人としての立場を崩すことは無く、太一は涼や撥子を守るためにこそ推理を行おうとする。その今にも謎を弄ぶ暗黒に囚われかねない二人の葛藤と、彼らを支える女性たちが配置されることで、決して無欠のヒーローではないバランス感覚がとても心地よいと思うのである。

しかし、倫理と探偵の暗黒面を巡る物語は全然解決していなくて、むしろこれからが本番であろうと言う気がするので(太一君なんてようやく自覚してきた所だってのに…)、正直これで終わりってのは辛すぎる。何とか別の形式でかまわないから続いてくれないものか。河上太一君のピンでかまわないからさあ…。

まあ、そう言う勿体無いところで終わるのがちょうど良いのかもしれないけど。何はともあれお疲れ様でした。新シリーズにも期待しております。

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本日の購入物

最近、SFかライトノベルしか読んでねーなー。まあ、金庸とか柴田錬三郎とかは読んでいるけど、普段あんまり読まない作者の本になかなか手が出ない保守性にはわれながら呆れるばかりだ。なんか最近面白い本ないかなあ。僕が普段読まない本であればあるほど読みたいのだが…。

1.『ミステリオペラ(上)』 山田正紀 ハヤカワ文庫JA
2.『ミステリオペラ(下)』 山田正紀 ハヤカワ文庫JA
3.『鏡像の敵』 神林長平 ハヤカワ文庫JA
4.『死して咲く花、実のある夢』 神林長平 ハヤカワ文庫JA
5.『太陽の汗』 神林長平 ハヤカワ文庫JA

で、今日もSFばかり、と。
1、2.山田正紀の超力作が文庫化されました。文庫になってもその人を殴り殺せるんじゃないかと言わんばかりの威厳が立ち込めており、一筋縄ではいかなそうな雰囲気です(物理的に)。うらー読んじゃるー(何?)
3~5.は僕が今まで読んでいなかった神林長平。再販されていた物を含めて購入。つーか、まだまだ読んだ事の無い神林長平っていっぱいあるんだなあ…と感心してしまう。本当に書いて書いて書きまくっていたんだなー。

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2005.08.24

『座敷童にできるコト(2)』読了

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座敷童にできるコト(2)』(七飯宏隆/電撃文庫)を読んだ。おお、ちゃんと面白い。

前巻は、いかにも電撃文庫スタンダードを狙った感じがしたところが鼻についたりもしたけれど、今回はそういうライトノベル色が大分薄まってきている感じが良い感じ。キャラクターの過剰な部分はなりを潜め、前作ではいかにも過剰に記号化されたキャラクターたちのごく平凡な部分が現れてきたりと、過剰に過剰を重ねていくライトノベルの通例を逆走しているのが実に面白いと思った。結構、他に例を見ないような話のような気がする…。

また、やっぱりSF的な設定が背後に隠されている雰囲気が表れてきていて、もしかするとこれは宇宙スケールの大風呂敷が広げられるのだろうか?と、つい期待してしまう。なんかなー、現実と幻想の揺らぎというか、現時点での現実と呼ばれるものの認識を最後にひっくり返しそうな予感がするんだよなー。わくわく。(そもそも、『敵』に取り付かれた宿主の行動は、いかにもライトノベル的な奇天烈なものになると言う設定なんて、深読みしようと思えばいくらでも出来そうだ)。

まー相変わらずラブコメをしていたり、コメディっぽいところはあるんですが、キャラクターがみんなまともになっているおかげで、普通に面白く感じてしまったあたりに自分のいい加減さが良く分かるなあ…ってのは本の感想には関係ありませんね。

素直に面白いと思ったので続きをよろしくお願い申し上げます。

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本日の購入物

文明に依存した文明人は、いざ未曾有の大災害が起こり文明が崩壊したら、いさぎよく文明とともに滅びるべきなのではないか、何てことを『TVチャンピオン 無人島王選手権』のCMを身ながら思った。

別に意味は無いです。

1.『ホーンテッド!(4) エンドレスラビリンス』 平坂読 MF文庫J

今日はこれだけ。
1.読者をだまくらかそう、意表をつこうと言うただ一点だけを突き詰めたアグレッシブ過ぎる作風のシリーズ。そのあまりに先鋭的過ぎる作風が禍してか、今回で完結編とのことである。…やっぱり打ち切られたんだろうか…。

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2005.08.23

『奇蹟の表現Ⅱ 雨の役割』読了

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奇蹟の表現Ⅱ 雨の役割』(結城充孝/電撃文庫)を読了。着実に前巻より面白くなっているなあ。

元ヤクザで心に傷を抱え込んだ中年のシマが主人公と言う、電撃文庫では異色では無いかと思われる作品である。いやあ、実に面白い。お話自体も面白いのだけど、何より面白いのがこんな作品が電撃文庫から出てくるということだなあ。電撃文庫って懐が深いなあ、と思うのはそんなところなのだが、しかし、これは電撃文庫読者的にはうけるのかなあ、と言う疑問を感じないでも無いのですが。いいけど。

かつてすべてを失って絶望した男が、新たに守るべき存在を見出す事で再生する話であった前回から、お互いを信頼するに至ったシマとナツ。この関係がまずもって心地よい。シマはナツにかつての娘の面影を見て、ナツはただ一人信頼できる大人としてシマに接しているのだけど、そこには勿論恋愛感情なんてものは無く、人間と人間の関係があるだけであって、そう言うストイックさはいかにもハードボイルドの香りがする。というか、この作品は、言うなればハードボイルドのライトノベル版とでも言うべきもので、作品のあらゆるところにハードボイルド的な要素(うらぶれた中年の主人公、汚れた町の汚れたやつらなど)がつまっているのに、それでもシマにヒーロー性をわずかに付与する事で(しかし、ヒーローになり過ぎない絶妙なさじ加減で)ライトノベル的な範疇の収まらせているのは素直に上手いと言っておきたい。そこのところが独特な味にになっているように感じますね。

ただ、ハードボイルドに慣れていない人には、えらく地味な話に見えるんだろうなー…とは思う。世の中にはこう言う物語があるんだよ、という紹介の意味でも意義ある作品…のような気がしないでもない。

まあ、僕はとても気に入っているシリーズなので、素直に続きを楽しみにしたいと思います。

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2005.08.21

『われら九人の戦鬼(上)(下)』読了

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われら九人の戦鬼(上)(下)』(柴田錬三郎/集英社文庫)を読んだ。うむ、面白い。

タイトルから連想される通り、これは「七人の侍」の変奏曲ですね。と言っても共通するのは困窮する農民たちを見かねて立ち上がる武士達というモチーフだけなんですが。そのモチーフに柴田錬三郎的な虚無的な主人公を据えてしまったせいで、まずもって主人公を動かすのに苦労しているような気がする。何しろ話が全然進まなくて、いつまでたっても”戦鬼”が集まらないものだから、読んでいてどうなるのかと思ったよ。何しろラスト数十ページぐらいだもんなー…戦鬼たちが活躍するの…。その代わりに、戦鬼たちが集まるまでの過程がひたすら綴られている。そしてその部分こそがこの作品のもっとも面白いところだと思った。

主人公の多門夜八郎を始めとして、夜八郎を付け狙う兵法者の九十九谷左近、夜八郎を慕い後を追う梨花、無私の精神で梨花の手助けをする柿丸、飄々とした中に凄絶な知略を隠し持つ天満坊など、数多くの人間が出会ったり別れたりしながら圧政を働く暴君を打ち倒すと言うのは、セオリーつーかパターンと言われようとも面白いものは面白いものだなあ。

問題は、先ほども書いたけれども、”われら九人の戦鬼”というくせに戦鬼が活躍するシーンがほとんどない上にすさまじい省略っぷりで、壮絶な死闘を繰り広げるわりに戦鬼たちがゴミのように殺されていってしまうのはなんとかして欲しいと思った。見せ場とかへったくれも無く、一行で死亡を明記されてしまったりするので不憫としか言いようがない。なんかジャンプの打ち切りみたいなダイジェストぶりなのが惜しまれます。なんかあったのかな…この辺。

まあ基本は勧善懲悪の、実に安心感のある物語ですので、面白いことは間違い無いんですけどね。

そんな感じです。

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『最果てのイマ』その3

相変わらず『最果てのイマ』(XESE)をやっていて、実を言うと既にクリアしたんだけど、そちらの感想については後回し。一応結論としては大変面白かったんだけど、色々思うところがあって、まとまるまで置いておくことにする。書かない可能性が高いが。

以下、とりあえずメモ書き。全然まとまってない上にネタバレなんで、ゲームをクリアした人、あるいは金輪際このゲームをやらないと言う人、人生を無駄にすることを恐れない人以外は読まないで下さい。

・このゲームをやっていて思う事は、非常に閉じた領域の話をしているな、と言う事だ。主人公たちの領域=「聖域」は、主人公達の関係だけに終始し、外へ広がることは決してない。主人公も積極的に停滞を望み、永遠なる現状維持を目指す事を最終的な目的としている。
しかし、僕はそれを批判するつもりはまったくない。と言うのは、この物語テーマの前提となるものとして、「人が自らの幸福を追求するのならば、それは絶対なる”個”の中にしかない。それは他者と共有することは不可能である」と言うものがあるからだ(少なくとも僕はそう思った)。この思想を、シナリオライターが肯定しているわけではない。むしろ、どうあっても”個”としてしか生きられない人間が、それでもなお共有する「何か」を持った”他者”を得ることが出来るのかという問い、つまり、決して他者とは共有出来ないまでに細分化された”個”人として存在する現代において、それでも”他”者を得たいという願いがテーマとなっているように思った(もっともシナリオライターがどこまでこのテーマを突き詰めているのかと言うところまでは分からないけれども)。”個”としての現実があり、それを”他”にまで持っていこうという理想がひしめき合って結果生まれたのが、この作品における”聖域”なのであろうと思う。あれは、主人公の理想と現実との妥協の結果なのであろう。
そうなるとさらに救われないのが、その主人公の必死の願いは、各ヒロインのシナリオを進めていくうちに、脆くも瓦解していくと言うところだろう。歪でつぎはぎだらけの”聖域”は、無常な現実の進入を容易く許し、主人公の努力をすべて無化していく。しかも、まるでループするかのように、同じ場面を何度も何度も見せ付けられる事になるのだ。ところが、不思議な事に、この物語においては決定的な場面に直面する前に途切れてしまう。まるですべての崩壊を拒むかのように、すべてを閉ざしてしまう。これは物語の最後に明かされるわけだけど、それでもなにか釈然としない。さて、どう解釈したものか…。

・『日常編』をクリアすると、突然『戦争編』が始まる。その唐突さは、もしかすると『日常編』と『戦争編』のテーマのギャップを、シナリオライターが完全に埋めることが出来なかったためではないかと思った。つまり、『日常編』においては、”聖域”と呼ばれる狭い世界の繋がりを得ようという試みであったのに対し、『戦争編』では人と人は繋がり合うことが出来るのか、と言うテーマレベルの桁が違ってしまっている事と無関係ではないのではないか。無論、どっちが高尚な問題か、なんてことを言うつもりは全然無くて、『日常編』のテーマですらまったく未解決のままだと言うのに、それを全人類規模まで発展させたテーマにいきなり飛躍させてしまった事の影響が出ているように思った。だが、これは『最果てのイマ』という作品を考えてみると仕方のない事であったのかもしれないと思う。と言うのは、主人公が、ごく狭い世界での”聖域”に拘り続け、人類や世界のことなんて知ったこっちゃないと言う態度をとり続けていたところが、自分が何のために存在するのかと言う意味を掴み取る過程、その決断をする事が出来たのは、それまで拘り続けた”聖域”での生活があったからこそ生み出されるものではなかったか、と思った。僕が凄いと思ったのは(と言うか感動したところは)それらの決断や”聖域”での生活の可否については結論をださず、ただそれらをあるがままに描いているところだ。このあたり、僕は厳密な判断は出来ていないのだけど(やや私情が入っている)。
 
 
・うーん、自分でも良く分からないことを難しげにハッタリかまして書くのって気持ちいいなあ。

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2005.08.20

『射雕英雄伝(1)~(3)』読了

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射雕英雄伝(1)~(3)』(金庸/徳間文庫)を読んだ…。他にも積読が貯まっているので、ちょっと冒頭を確認するだけのつもりで読み始めたら、読むのが止められないまま既刊分を読破してしまった。阿呆か。

阿呆でもいい!と言う事で作品紹介。
時は南宋。金の威勢はますます強く、南宋の運命は風前の灯火のようにも見えた頃。ある雪の一夜に事件によって、出会うまもなく引き離された二人の義兄弟があった。一人は雄大なる蒙古の草原で成長し、一人は金の貴族として育てられる。大いなる運命に導かれるように、二人は出会うのだったが…。

とにかく面白くてたまらん。奥義と絶技が飛び交う荒唐無稽なアクションシーンの爽快感もさることながら、不器用で才能ない主人公、郭靖が様々な武術を学び、いつしか達人達と伍するほどの実力を身につけていく過程なんざ、読者の超人願望を思う存分満たしてくれる。ある種、少年マンガ的な面白さがあって、なんにも考えずに読める部分なんですが、しかし、金庸御大は超人アクションに歴史小説のダイナミズムを取り込むことで、物語にさらなる広がりをもたらす事に成功している。中華正当たる南宋、女真族の国である金、そしてテムジン率いる蒙古。三者の思惑が絡みあい、主人公達はそれぞれの国の対立に巻き込まれて行くわけだ。

また金庸大先生の小説ではキャラクターがやたらと魅力的なのも忘れてはいけない。もうほとんどキャラクター小説と言っていいくらいに過剰なまでに立ちまくっています。特に女の子と爺さまが最高。つーか、一巻目に出てくるテムジンの娘、コジンなど”幼馴染””ツンデレ””主人公以外に婚約者””お姫様”とちょっと属性つけすぎなんじゃねーの…ってぐらいにすさまじい萌えっぷり。だけど、こう言うタイプの女の子は、金庸作品じゃメインヒロインになれないんだよな…哀れ。金庸先生が好きなタイプは、性格が悪くて我侭で善悪に縛られない女性らしくて、まさしく黄容と言うキャラクターがそれにあたる。これまたすさまじい破壊力で読んでて悶え狂います。
また、金庸世界(と言うか武侠小説の世界)では、武術家は年をとればとるほど内功を鍛えて強くなっていくので、とにかく爺さま連中が元気なこと極まりない。しかも、年をとって人格が練れているかといえばそんなことも無く、半ば仙人のようになってはいるものの、世俗に囚われないがゆえの好奇心でひたすら事態を引っ掻き回すばかり。このじじーどもがいなければもっと穏便にすんだんじゃねーのか…と呆然とすること仕切りであります。萌えー。

とにかく面白くて面白い本を読みたいと言うなら、金庸グレート御大を読むべし、だな。なーんか、ドラマ版の射雕英雄伝も見たくなってきたよ。知り合いに借りてこよう…。

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2005.08.18

『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』読了

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現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』(大森望/太田出版)を読んだ。やたら面白い。

要するに大森望が過去に書いたレビューやら目録やらの編集作品になっているわけだけど、この本に収録されているレビューの時代には、僕はまだ小学生前後だったわけで、しかもその頃はファンタジーとライトノベル(その事は呼び名は違ったけど)ばかり読んでいたので、この時代のSFは読んだ事は無いと言う事もあり、まっさらに気持ちで読めた。やっぱり年代の違いか、最初の方の大森望の口調が微妙に80年代っぽく、「ボクタチ」風だったけど、すぐに普通の文体になってよかったよ…。僕はああいう文体は好かん。

しかし、大森望ってのは凄い人だ。SFがろくに読まれなかった時代に、手を変え品を変えSFを紹介し続けたと言うのも偉いけど、そのやたら偏った(と言うと聞こえが悪いか。独特の、かな)視点からの紹介が無類に面白い。折れはこれが好きだー!っていう熱情と、冷静に作品を評論する部分があって、レビューってのはこうするんだよな、と感心する事しきりである。僕もこう言う短くも適切に書きたいのだが…いまだかなわず。くそー。

SFだけじゃなくて、ファンタジーやホラー、ライトノベル(キャラクター小説)まで視野に入れて紹介しているのは当時のSF評論の中では異質だったろうなあ。ナポレオン文庫まで紹介しているのには仰天したよ…。

あと目を離せないのがSF関係者にやたらと喧嘩を売りまくったその芸風。本当に喧嘩を売りまくりで貶しまくりなのがすげえ。まあSFマガジンに移ってからは大分おとなしくなったみたいだけど、奇想天外時代のあれは読んでいて異常に面白かった。

過去の名作への案内としても、当時のSF裏事情みたいなものを知るのにも大変役立つし面白い本だと思うので、SFを何を読んだらいいのか分からん、という人にもオススメできるかな。今だと過去の絶版作の中にも復刻しているのがあるし。

次は「1996-2005編」だそうです。楽しみだなー。

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2005.08.17

『最果てのイマ』その2

もはや信じがたい。これはもはや一体誰に向けて発信された作品なんだ…と愕然とするとともに、やっぱりこれの向けた先って…俺?ってな感じにスマッシュヒット。でもこれ絶対エロゲーとして売る気ないよ!

やればやるほどにこの作品の実験的な部分があらわになって来て、どこまでその凶悪な切れ味が明らかになるのか戦々恐々とする毎日だ。相変わらず矛盾のある場面に設定が繰り出されていて、ある一つのシーンに切り替わった瞬間に「今、重要な何かが場面転換の隙間にあった!」という直感が働き、何がなんだかわからないが背筋が粟立つ。一つの正しい道筋が見えそうで見えない感じがもどかしく、以前のシーンに戻ったり整合性のある情報を取捨選択したりで全然話がすすまねえ。ぬーまだソートが足りんか…。まず間違いなく作中時間で一年ぐらいのスパンがあるシーンがシャッフルされているのは間違い無いのだが…。情報が足りないのか、どの情報が正しいのかさっぱり分からん。もう少し進めるしかあるまいが、田中ロミオの術中に嵌ってるなあ…畜生。

くそ、ギャフンと言わせてやる!(死語です)

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『犬はどこだ』読了

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犬はどこだ』(米澤穂信 /東京創元社)を読んだ。うーん、また感想が書きにくいよー。

とは言え、相変わらず大変面白かった事は先に述べておく。正直に言うならば面白くて面白くて面白いと言うぐらい面白かったと言っても過言では無いくらい面白かった。思うに、米澤穂信の作品の面白さは、ハラハラドキドキと言うたぐいのものではなく、またミステリの常道であるそれまでの世界が反転する崩壊感を味わうものでも(少なくとも主軸では)無いと思う。米澤穂信がもつ作品の魅力と言うのは、時として地味とさえいえるほどに現実に密着した感情の流れにあると思う。例えばこの作品の主人公は、良い大学を卒業し良い銀行に就職したものの挫折し目標をすべて失ってしまった人間であり、その空虚さを抱え込んでいる。それだけならばごく普通の設定と言えるのかもしれないが、作者はそこに主人公の虚ろな感情を注ぎ込む。それは明確なキャラ立てとは程遠く、むしろ主人公のキャラクターを曖昧にしているのだけど、それはもともとキャラ立ての作法ではなくむしろ純文学の領域の曖昧で言葉に出来ない何かではないかと思う。それだけならば他にもあるのかもしれないが、純文学の領域である曖昧な自己言及的な主人公を設定を、ライトノベル的な作劇を処理していると感じるところが面白いと思った(考えてみたらこの作者の主人公像の空虚さが、単に僕の共感をそそるだけなのかも知れず、だとするとここまで書いたことが無意味になってしまうのだが、それはそれとしておこう)。

またこの作品のミステリ的な側面に目を向けてみると、単純な失踪人探しと土地の歴史言及がお互いに影響しあっているところが面白い。歴史ミステリというのはある程度メジャーなジャンルではあるけれど、それに主人公の空虚さを巡る葛藤とすら結びついていくあたりは素直に凄いと思った。

米村穂信の凄さは、ミステリ的な謎と登場人物たちの葛藤、そして舞台設定の意外な繋がりによってお互いが影響しあうと言う複雑な構成を、決して重厚長大にしないで、さらりと作り出せるところにあるのではないかと思ったのだが、きちんと考察したわけではないので単なる妄言です。すいません。

適当な感想で、正直すまぬ。

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『本日の購入物』

毎日毎日、ごくごく当たり前に生活しているとここに書くべきことが何も思いつかない。電車に乗っているときとか、ときどき凄い面白いネタを思いついたりしているのだが、家に帰ってた時には忘れているし。…なんとかせねば。

1.『魔法先生ネギま!(11)』 赤松健 講談社
2.『パンプキン・シザーズ(4)』 岩永亮太郎 講談社
3.『「平井骸惚此中ニ有リ 其五』 田代裕彦 富士見ミステリー文庫

1.赤松健の18番であるラブコメを封印してのバトル展開中心だけど、それでも面白いのはさすがとしか言いようが無いのだが、それでもなお、そこにパンチラや萌えをぶち込むあざとさに作者の凄みを感じた。
2.一巻を読んだ時にはごくごくまっとうに面白い作品だと思っていたのだけど、徐々に不公平な社会階級などの厳しい問題を雰囲気だけでなく真面目に取り扱い続けているところに作者の誠実さを感じるとともに、その中で精一杯より良き何かを追い求める人々の物語になっているのには感服するしかない。
3.随分前に買ったのをすっかり忘れていたと言う事を告白するとともに大変面白く、これで平井骸惚シリーズも完結かと思うと寂しさこの上ないが、どうも舞台を現代に移して新シリーズは始まりそうな雰囲気もあってなんだか複雑な気分だ。

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2005.08.16

『ブラック・ベルベット 緑を継ぐ者と海へ還る少女』読了

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ブラック・ベルベット 緑を継ぐ者と海へ還る少女』(須賀しのぶ/コバルト文庫)を読んだ。おーもーしーろーいー。

いやいや素晴らしい。帰宅途中に買って、電車の中で読みながら止まらず家に帰ってからも読んでしまった。正直、一巻を読んだ時はこんなに面白くなるなんて思わなかったなあ…。

本当に、巻を重ねるごとに面白くなっているのは驚くべきところであります。須賀しのぶの作品はどれもそうだけど、キャラクターを魅力的に見せることが巧みで、読んでいてぐいぐい感情移入させられてしまうのには降参させられるしかない。

と言うか、ぶっちゃけ主人公のキリに萌えた。ここしばらくかつて無かったほどにキリに萌えたのだけど、一体自分でもどのツボに入ったのかがわからず、最初はちょっと困惑してしまった。何でかなのかをつらつらと考えてみると、おそらくツンデレの変形であるキャラクターであるからなのだろうと言う結論に達した。というのは、このキリという主人公は、初登場時から男嫌い、老いや汚らしいものに嫌悪感を隠さず、高慢ちきで大変鼻持ちならない女性であったのだが、物語が進んでいくにつれて徐々に自分の誤りに気がついて成長していくと言う過程を辿っている。いわゆるツンデレは、特定の異性に対する関係の変化を指すのだけど、彼女の場合、もっと大きい範囲に対する認識の変化と言う違いはあるけれども、まさにツンデレの過程を経ているように思う。特にこの巻に入ってからの彼女のデレ部分の攻勢がすさまじく、弟子入りしたハル神父に対する懐き方が尋常でなかったり(「先生、先生!」と嬉しそう。…正直悶えた)、友達のために苦しみ涙を流したり(ええ子や…)と大変な事に。それまでのギャップがあるが故か、なんかじわじわと来るボディーブローを感じました。そのくせ彼女のツン部分がまた強烈で、キャラダイン司教に対するあまりに悪辣極まりない行為なんか読んでてひっくり返りましたよ!お、おまえ、かばうって知ってて止めを刺そうとしたのか!とか、その後のぶつけた理屈とか。容赦ねーなー…。
 
驚愕のラストもあって、続きが大変楽しみな作品であります。次は流血女神伝の続きらしいので楽しみだなあ。
 
 
ところで、今回はグラハムさんがあまり活躍しなかったのが残念無念である。まあ、最低限のグラハム萌えポイントはあったから別にいいけどな(だからなんだよそれは…)。

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本日の購入物

あーなんかやる気がでねー。自分でも良く分からないのだけど、とにかくテンションが下がり気味だ。うーん、きちんと睡眠をとっているはずなんだが…。どうも集中力と冷静さを欠いている。うーん。

1.『週刊 石川雅之』 石川雅之 講談社
2.『うしおととら(12)』 藤田和日郎 小学館
3.『ブラック・ベルベット 緑を継ぐものと海へ還る少女』 須賀しのぶ コバルト文庫
4.『猫泥棒と木曜日のキッチン』 橋本紡 メディアワークス
5.『射雕英雄伝(1)』 金庸 徳間文庫
6.『射雕英雄伝(2)』 金庸 徳間文庫
7.『射雕英雄伝(3)』 金庸 徳間文庫

1.『もやしもん』のおかげで再販が出た。めでたい。しかしこの人は絵が上手いし、ちょっととぼけたユーモアも楽しくて読んでいる最中の多幸感は何者にも代えがたいものがある。素晴らしい。
2.特に言う事は無いですが、中味にひどい落丁があったのには閉口する。取り替えてもらう…。
3.一巻より二巻、二巻より三巻が面白いと言う何気に凄いシリーズ。面白いなあ…。既に読み終えているので感想は近い内に。
4.この作者は泣かせの雰囲気の作り方が素晴らしく上手いと思う。その雰囲気作りの面白さは、あまりライトノベル的な設定と食い合わせが悪く、またアクション部分もさほど面白いとは思えないので、この路線で作品を出してくれるのは実に正しいのではないか、と思うのだけど一般的にはどうなのかは知らない。
5、6、7.グレートスーパー御大こと金庸大先生の代表作(の一つ)である『射雕英雄伝』の待望の文庫化であって、ちょうど単行本が見つからず読めなかった自分としては渡りに船と言うか待ちに待ったと言うかとにかく嬉しい。

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2005.08.15

『クドリャフカの順番 「十文字」事件』読了

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クドリャフカの順番 「十文字」事件』(米澤穂信/角川文庫)を読んだ…先月の話だけど。

はっきり言って大変面白かったのだけど、それなのに今まで感想を書いていなかったのは、感想を書くべき事がまったく思いつかなかったためである。面白かった…以外の感想が出てこないんだもんなあ。しかし、いつまでも後回しにするわけにもいかないのでここらで感想を書くことにする。

かつて、一瞬だけ存在した角川スニーカー系のミステリレーベルから出版された(…だったと思う)、通称”古典部シリーズ”の待望の第3弾。いやーまさか続きが出るとは嬉しい驚きです。穏やかで、そのくせ苦味を抱え込んだシリーズで、作者のデビュー作からのシリーズにも関わらず、少しも”青さ”や”粗さ”を持たない筆致が特徴的な作家だと思います。しかし、それはヌルさとはかけ離れた穏やかさであって、むしろ人間性というものに対する冷たく突き放した視線がどの作品にも通低しているように思う。作者もまだまだ若いのに、良くここまでキャラクターを突き放せるよなあ…。

物語は文化祭の前日から幕を開ける。折木奉太郎が所属する古典部において、問題が起こっていた。古典部が出展する文集の発注ミスにより、多く作りすぎてしまったのである。このままでは赤字は確定。何とかして文集を売りさばこうと、古典部の面々は文化祭のイベントにひた走り、宣伝活動に従事する(奉太郎を除いて)。そんな古典部をよそに、文化祭は順調に開催されるが、各部の小物が盗まれると言う事件が発生する。古典部部長の千反田えるを始めとする古典部の面々は、文集宣伝のためにこの事件を解決しようと試みるが…(奉太郎を除く)。

いわゆる殺人の起きないミステリの範疇に含まれるが、作者の過剰に流されない筆致にはよくあっている。むしろ、それによって犯人の動機を巡る苦くて痛い背景を過不足無く表現しているように感じられる。僕がこの作品を読んで凄いと思ったのは、3日間にわたる文化祭のお祭めいた楽しさを見事に描きつつ、その過程で生じる登場人物たちの葛藤、犯人の物悲しさまで含めて表現しているところだと思う。それは、まさに”青春”だなあと思うしかないものであって、文化祭では積極的な参加はしないで隅で眺めているのが常だった自分でさえも思わず懐かしさを覚えてしまうほどだ。本来の主人公である奉太郎だけでなく、古典部の面々からの視点を取ることで、猥雑とした雰囲気を上手く出していると思った。

ミステリ的な部分は、いわゆる”本格”と呼ばれる類の物ではない。あくまでも常識の範囲内の事件であり、またその解決への解法も理によって解き明かされているとは言えないように思われるが、そもそもこの作品は青春ミステリであるからして、少年少女たちのほろ苦い思いを十分に描ききっていると言う意味では大変素晴らしい作品である。僕は作者のファンなので、あまり客観的な読み方はできていないと思うけど、本当に面白い作品だと思うので、ライトノベル読者にこそ読んで欲しいと思いました。

(なんかまとまりが無い上にだらだらと書いているなあ…。まあいいか)

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2005.08.14

『疾走!千マイル急行(上)』読了

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疾走!千マイル急行(上)』(小川一水/ソノラマ文庫)を読んだ。面白ーい。

ひさびさにソノラマ文庫からの出版…でもないか。とにかく小川一水の新刊である。今回は鉄道冒険物だ!

贅を凝らした内装と強力無比な蒸気機関車によって大陸を横断する千マイル急行。それに乗り込む少年少女たち。彼らは夢と希望に胸を膨らませながら、これからの旅路に心を躍らせている。しかし、そんな彼らをよそに、きな臭い戦争の火花は大きく燃え広がろうとしていた…。

僕は鉄道についてはほとんど知識は無いのだけど、細部に拘る作者にるよる機関車の解説シーンなんかは実に面白く読める。多分、小川一水による作品は、技術に対する明確な信頼があって、その信頼が物語を支える(時には主役となって)重要な役割を果たしているためではないか、と思われるのだが一般的にはどうだか知らない。

まあそれはそれとして、小川一水も随分キャラクター小説としての水準の高さは驚くべき事で、相変わらず悪人と決定的な悲劇は書かない作風ながら、キャラクターの説得力が桁違いである。昔はあまりに善人たちが善人過ぎて、少しだけ居心地の悪さを感じてしまったものだが(ユートピアすぎる)、現在の小川一水を読んでいても、何故そこまで崇高な行為を行えるのかと言う、作者の答えに納得出来てしまう。不思議だなあ。

まあ、そんなことは『導きの星』を読んだ時から分かりきっていた事ではあるんですけどね。

今回は上巻と言う事なので、内容については後日。ただ、現時点では主人公のテオがまったく物語の駆動に関わっていなかったり、そもそも子供視点でありながら大人たちの話になっていたりするので、カタルシスがこれっぽっちも無い話になっている。それどころか、基本的に子供たちは無力を味わわされるばかりで、非常につらい話とさえいえる。ここで撓められたものが下巻で爆発するのか、あるいは重く苦しい展開のまま進むのかは分からないが、どちらにせよ楽しみにしていようと思う。

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『最果てのイマ』をやっている

さて、例によってゲームの話題である。当然の如く18禁だ。さあお子様は帰った帰った。

最果てのイマ』をやっている。やべー。これはやべー。何がやばいってすべてがやべー。あまりにエッジが効き過ぎでセンスが尖りまくっている。なんちゅー実験的な作品だ…。この物語と言うものを解体せんとするかのようなユーザーに対する意地悪ぶりはもはやロック魂炸裂!といった印象。これは反体制じゃ~お話に対する反体制じゃ~(大袈裟かな…)。

明らかに時系列がシャッフルされている場面の繋ぎ方(科白、状況の矛盾)、故意に読み手を誤解させようとするテキストなど読んでいて頭がぐらぐらしてくる。うおおおお……時系列の並び替えをさせてくれ…。明らかにお話が繋がっていなかったり、お話として重要なところが欠けたまま平然と繋がっていったり、断片的な場面を繋げていく展開は、一見、未完成品かと思わせるが、これはわざとやっているのは明らか。重要なところを省き、説明すべきところを説明しないその手法と言い、その断片を繋ぎ合わせ、本来の物語を推理していかなければ何一つ読者に理解出来ないところなど、まったく喧嘩を売っているとしか思えない。よーし、その喧嘩買った!
というわけで、もりもりテキストを噛み砕く日々である。

サティの音楽に乗せて奏でられる物語は、端整で、時にコミカルで、時に痛々しいまでに鋭く脆い。人間は一人では生きられず、他者を求めるという極めて現代的なテーマを、シナリオライターの田中ロミオを職人的な技法によって描いた怪作である…かどうかはクリアしてから考える事にする。


ところで、この田中ロミオと言うシナリオライターは、実に端整でそのくせやたら饒舌極まりない文章を書く作家なのであるが、その豪奢で軽薄とさえ言える文体に”認識”を巡る強烈なテーマ性を持ち合わせた、百鬼夜行を思わせるエロゲー業界にあって稀有な存在であると思う。小説、マンガを含めて僕のもっとも好きな作家の一人だ。凄く知的な作家だなあ。

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2005.08.12

『かえってきた、ぺとぺとさん(2) まっくらやみのピィ』読了

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かえってきた、ぺとぺとさん(2) まっくらやみのピィ』(木村航/ファミ通文庫)を読んだ。相変わらず最高だ。

今回も地味にスペクタクルな展開で素晴らしい。何が良いって、展開自体は派手さは無いのだけど、きちんと各キャラの葛藤を描いているからクライマックスでの困難を乗り越えるカタルシスを生み出すと言う手法を、ほとんどライトノベル的なお約束を踏まえないで描写しているのが素晴らしいよなあ。つまりそこにはドラマがある。その意味では映像化に向いている作品かも知れない。つまり、このあまりの説明しなささは、かえって映像と言う情報の基本量の異なる媒体になると効果を発揮するのではないか。
僕は欠点とは思っていないけど、木村航がメジャーになりきれない要素があるとすればこの説明をしないところであって、どこか幻想小説にも似た物事を直截に描かない文体は、読者に容易な映像化を脳内に許さないところがあって、そこが駄目な人は駄目だろうと思う。

まあ、脚本的な文体、という表現も出来ないことも無いが、要するに映像的な文体ではない。しかし、それが下手かといえば全然そう言うものではなく、どちらかと言えば”言葉”の意味に拘った、あるいは”表現”するということに拘った文体なのであり、文章そのものの美しさを僕は評価したいと思う。ライトノベル的でありながら表現が豊か、と言うと誤解を招くかな。まあ良いや。

とかなんとか言っていますが、実はまだアニメは見ていません。DVD出たら買おうかなあ。
 
 

前巻の感想はこちら

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2005.08.11

もう…だめ

久しぶりに気力体力の限界値に達した。もう駄目だ、体を立たせているだけでもしんどい現状、何とか感想を書こうと思ったがこりゃ無理だ。というわけで寝ます。おやすみなさい。

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2005.08.10

『たったひとつの冴えたやりかた』読了

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たったひとつの冴えたやりかた』(ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア/ハヤカワ文庫SF)を今更読んだ。どう言うわけかアマゾンで書影がなかったもので、bk1でリンクをしている。まあ、そんなことはどうでもいい。延々と名作と呼ばれ続ける作品だけあって、いやこれ本当に素晴らしい作品集でした。凄く面白いです。

実はディプトリーを読むのが初めてだったので、一番読みやすそうな作品から読んでみたらこれがすげーのなんの。ウェットでユーモアがあってセンチメンタルな筆致で見せるSFでありました。川原由美子の美しい表紙もよくあっていますね(と言うかライトノベルもかくやとばかりに挿絵までつけられているのにはびっくりした。本当にライトノベルみたい)。

収録された三作は、どれも甲乙つけがたいくらいに良かったのだけど、やっぱり表題作が一番判りやすいし素直に読める。ちょっと泣かせに入っているのは個人的には気に食わないのだが(女の子のかわいそうな話は嫌いだ)、主人公のコーティーが余りにも気高く可愛らしすぎるのでガード不能。お、おのれー。ラストの展開に至っては、分かっちゃいるのだけどグッと胸に迫るものがある…つーか泣いたよ。悪いか。
次の「グッドナイト、スイートハーツ」はディプトリーの上手さが光ります。一見普通のSF活劇に見えるのだけど、主人公の愛と目的に引き裂かれる葛藤の意地悪さ、そして決断後の描写の美しさには一読の価値あり。これも「たったひとつの~」と同様、決断し難い決断を迫られた人間の物語と言えるのだなあ。
で、最後の「衝突」だけど、これはいわゆるファーストコンタクトものなわけだが、それを地球人類と異星人類の双方からの視点、また、探索隊の描写と基地側の描写を交互に行う事で、単なるファーストコンタクトではない人間ドラマになっている。異星人(と言うのは本当は正しくはないわけだけど…)の生態の凝り様も楽しいが、人間の気高さを高らかに歌い上げていると言う意味で、大変にモラルの高いお話である。でも全然説教臭くねえんだなあ。素晴らしいです。

こんな良いお話を全然手をつけていなかったわが身を恥じるばかりだが、まあ物は考えよう。これからまだまだ読んだ事の無いディプトリーがあるかと思うと…ぐふふ(不気味)。
そんなわけで他の本も読むつもりです(ちょうど買ってきたことだし)。

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本日の購入物

1.『ジンキ・エクステンド(7)』 綱島志朗 マックガーデン
2.『日蝕』 平野啓一郎 新潮社
3.『ハルビン・カフェ』 打海文三 角川文庫
4.『故郷から10000光年』 ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア ハヤカワ文庫SF
5.『愛はさだめ、さだめは死』 ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア ハヤカワ文庫SF

1.大不評のうちに終わったアニメ版(結局一度も見れんかった…くそー)もなんのその、第7巻のお話です。前巻からミッシングリング編が進んでいるのだけど、回想シーンのさらに回想シーンが繋がったり、異様に難解な作品になってきている。これは人気が出てきたおかげて冒険が出来るようになったということなのかもしれないなあ。こう言う物語に耽溺したようなストーリーテリングは嫌いじゃないので、このまま作者には独自路線を突き進んでもらいたいと思う。
2.あんまり僕の好きな話ではなさそうな気がするのだけど、なんか本屋によるたびに目立つとことに置いてあって気になってしょうがない。その喧嘩、買ったぁ!とばかりに購入…って一体どう言う理由だ?もの凄い個人的な理由だのう…。
3.大森望が解説を書いていたから…と言うのが購入動機の8割を占める。いや、『現代SF1500冊』を読みふけっているもので…。
4と5.で、これまたその影響の最たるもの。まあ『たった一つの冴えたやり方』を読んだら異常に面白かったと言う事もあるが。

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2005.08.09

『福音の少年 歌う錬金術師』読了

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福音の少年 歌う錬金術師』(加地尚武/ぺんぎん書房)を読む。…タイトルにまったく意味が無い…。

前作である『図書館のキス』が中途半端な印象を受けていたので、やはり想定外の続編と言うのは難しいなあと思っていたのだけど、この話を読んでその考えは杞憂であったと思いなおした。一言で言えば三角関係ラブコメの皮を被った歴史改変ファンタジーと言える内容なのは変わらないが、むやみやたらと気宇壮大な大風呂敷の広げ方が素晴らしく、主人公の能力がいちいち地球レベルで影響を与えてしまうトンデモ具合が心地よい。

キャラクター造型は既存のライトノベルの典型から一歩も抜け出していないのだけど、それを補って余りあるのやたらと宗教知識に基いたハッタリズムであり、そのスケール感が、実は片思いの女の子との修羅場に帰結してしまう展開も含めて良い意味で先の展開を読ませない。正直、タイトルにもなっている”歌う”の部分が全然明らかになっていなかったり、相変わらず伏線だらけで次回に続いていたり、色々何とかしてくれと言いたいところもあるけど、大分ラブコメとして進展があったり、先ほども書いたけど当初のとてつもない大風呂敷のスケール感を感じさせてくれたので結構楽しかった。

しかし、このシリーズはちゃんと畳めるんだろうな…大風呂敷。まあ、一作目で驚天動地の決着を付けてくれた作者の事だから、そう言う意味では信頼が出来るかな(逆にどんなオチになるのか予想もつかないが)。
続きには普通に期待している。

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本日の購入物

ここ最近の感想の手抜きっぷりには自分でもどうかと思うのだけど、その癖やたらと長くなってしまうのは、きちんとテーマを決めて書いていないから。おかげでだらだらと書いてしまう。もう読んだ本をすべて感想を書くなんて止めるか、あるいは感想を短くするべきかと思うのだが(何しろ時間が足りない)、とにかく今宿題になっているのを終わらせてからのことかな(なんて言っているといつまでも先に進まない)。

1.『奇蹟の表現Ⅱ 雨の役割』 結城充孝 電撃文庫
2.『座敷童に出来る事(2)』 七飯宏隆 電撃文庫
3.『宇宙消失』 グレッグ・イーガン ハヤカワ文庫SF
4.『老ヴォールの惑星』 小川一水 ハヤカワ文庫JA

1.昨日に引き続き電撃文庫を少々。前巻がなかなか面白かったので今回も期待だ。主人公のおっさんがきちんとおっさんとして魅力的なのが良かったんだよなあ。
2.デビュー作はとても面白かったのだけど、果たしてこのシリーズはどんなものか。まだ判断がつけられる段階ではないので、この巻を試金石にとなるだろう…と勝手に思っている。
3.最近、『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』を読みふけっている影響で、SFが読みたくてしょうがない。僕はSF畑の出身ではないので、古典名作の類がすっぽりと抜け落ちているところがある。とゆーわけでグレック・イーガンを読んでみる。楽しみだなあ。
4.小川一水は絶好調ですね。内容については予備知識が全然ないものでコメントのしようもないのですが、表紙を見る限りだキャラクター小説としてより、SF的な要素が強そうな気がする。

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2005.08.08

『電波的な彼女~幸福ゲーム~』読了

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電波的な彼女~幸福ゲーム~』(片山憲太郎/スーパーダッシュ文庫)を読んだ…大分前に。本を読むスピードに感想が全然追いつかない…。別に読んだ本を全部感想を書くというのも無理な話なんだけど、今までやってきたことを変えるのもきっかけが無いとなあ。

閑話休題(いや、まだ本論に入ってすらいねえよ)。

巻数が明記されていないため現在何巻目なのかタイトルから判らないシリーズである『電波的な彼女』も三巻目。今回も凄く面白いです。

”前世からジュウに仕えている”と言う少女、堕花雨との関係に少しずつ安らぎを感じつつあるジュウ。相変わらず怠惰な日常を送りながらも、雨を通じて、その友人である斬島雪姫、円堂円と出会い、その日常にも変化が招じつつあるが、それなりに平穏な生活を送っていた。しかし、ある日、突然街中で起こる無差別イジメに巻き込まれてしまう。徐々にエスカレートしていくイジメに苛立ちながらも無視しようとするジュウだったが、雨の妹、光もまたイジメに巻き込まれた事を知り、雨たちを巻き込みながら行動を開始する。

いやいや、主人公であるジュウは前回の凄惨な経験によって格段なる成長を遂げておりますね。それは彼の無力さを認めると言う事であり、それでもなお何かをしたいと言う自分の感情の自覚。そして無意味なプライドを捨て、他者(=仲間)を信頼することをきちんと学んでいます。偉いなあ。途中で雪姫も言っていたけど、この主人公は自分自身の愚かさをきちんと認識していると言う長所がある。それは頭が良いとか運動神経が良いなどと言う事とは別次元の長所であり、本質的にジュウの頭の良さが伺えます。

自分の無力さをきちんと自覚しているジュウは、だから滅多なことでは動かない。自分が動く事で何かが出来るとはまったく思っていない。それは、彼の人生に対する絶望感にも似た諦めが底辺になるような気がするのだけど、まあそれは置いておこう(そのあたりは今後のテーマになってきそうではあるが…)。自分以外の誰かが傷ついた時だけ行動を起こすジュウは紛れもなくヒーローの資質を持っているように思います。
頭は良くないし優柔不断なところもあるし鈍感な男であるジュウは、しかし、やっぱり本当にかっこいい男だと思うのは、そう言う割り切れない思いを抱えながら、それを正義だとか良くわからない言葉でごまかさず、真っ直ぐに自分の信条に疑いが無いところにあるのだと思う。変にひねくれていないと言うか。

相変わらず物語については凄惨の一言。実は死人などはほとんど出ていないにも関わらず、不毛極まりない犯人の精神が描写されています。極限まで研ぎ澄まされたナイフのような狂気と言う表現がぴったり来る。毎回、よくもまあスケールの大きい狂気を描けるものだと作者には感嘆するしかないと言う感じです。そしてその狂気が弱さに裏打ちされたと言うあたりが作者のバランス感覚ですかね。単にインパクトを重視するだけではないクールさがありますな。ただ、今回はサスペンス分は少なめに感じてしまったのだけど、それは今回はジュウが素直だったので、雨たちの行動が制限されることが無かったためなんだろうな。雨たちが余りに有能すぎるため、並大抵の謎では根こそぎ解決してしまうのはなんともかんとも。次はどうなるのかなあ。

ああ、読み終わった端から続きが気になるよ。光とのフラグがたったようだが、彼女の今後の立ち位置はどうなるの?とか、円に対する株を随分上げたので、次は円がメインになるんじゃ無いかなあとか、妄想が止まりません。助けてくれ。マジで。

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本日の購入物

1.『ハヤテのごとく!(3)』 畑健二郎 小学館
2.『史上最強の弟子ケンイチ(17)』 松江名俊 小学館
3.『ビートのディシプリン SIDE4』 上遠野浩平 電撃文庫
4.『天国に涙はいらない(11) メイドの道の一里塚』 佐藤ケイ 電撃文庫
5.『ヴぁんぷ!Ⅲ』 成田良悟 電撃文庫
6.『実験小説 ぬ』 朝暮三文 光文社文庫

1.少年マンガとして普通に面白い執事萌えギャグマンガの三巻。打ち切られる事も無く好調なようで嬉しい限り。この作品の特徴は、いわゆるメイドマンガの逆を行く設定(駄目ご主人と有能な執事)によって、読者視点が執事側になっているのが新しいところなんじゃないかと思うわけですよ。ええ。
2.美羽さんのインナースーツの謎がついに明らかになると同時にお子様にはとても教えられない事実が明らかになっている。いやまったく…素晴らしいなあ(最悪だ)。
3.ブギーの出てこない統輪機構のお話の完結編。でも、もともとブギーポップは全面に出る事は少ないので、あんまり変わらないのであった。
4.久しぶりの新刊となる『天国に涙はいらない』である。まー見た目単なる萌え小説であり、中味もそのとおりなんだけど、作者がきちんと自覚的に記号を用い、それをギャグとして消化しているところが並大抵の萌え小説と異なるところだ。嫌いな人は嫌いだろうが。
5.前巻からわずか2ヶ月での刊行となる『ヴぁんぷ!』であります。大変素晴らしい。
6.前から探していたのだけど、買うタイミングを外してしまって全然見つからなかった作品。ようやく発見したので購入しました。凄いタイトルだよなあ。

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2005.08.07

『飛鳥井全死は間違えない』読了

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飛鳥井全死は間違えない』(元長柾木/角川書店)を読了。すげー…。

かつて美少女ゲームの名作、『Sence Off』によって極一部の熱狂的な支持を受けている元長柾木の初めての長編作品になる。と言っても『新現実』に掲載された短編に書下ろしを追加して一冊にまとめた連絡短編集という形式なので、厳密な意味での長編ではないけど。いつかちゃんとした長編も読みたいものですが…。

とは言え、十分に元長分を堪能出来たので大変に満足しているのは間違い無いところです。物語の中に居るキャラクター達が、自らの存在する世界についての考察を繰り返し繰り返し語るメタな部分のカオスっぷりが素晴らしく、読んでいて頭がくらくらしてくるのはさすがの元長。読んでいる内に読者の認識やら現実やらまで解体を目論んでいるかのような酩酊感までもたらしてくれる…とまでは行かないが、ああ、まったく楽しいなあ。

この楽しさは、キャラクターが…とか、物語が…とかそう言うものではなく、ガチャガチャにアニメやゲームから抽出された要素を用いた作者の思考実験とでも言うかのような所だと思う。そこでは過剰なまでにキャラクター達の存在意義は強化され、戯画化される(通常よりも一層緒戯画化されている)。戯画をさらに戯画するような歪さはいかにも美少女ゲームのシナリオライターらしい切れ味ではあるが、それだけに認識を留めてしまうのは危険であろう。その戯画はいわゆる萌えを誘発する事を目的としているのでなく、キャラクターの動きを固定化し、作者の望むテーマを繰り返させる事を目的としているように思える(つまりフラグを設置している)。その構造を理解している飛鳥井全死は、いわばゲームのキャラクターでありながらクリエイターの領域まで首を突っ込んでいるのだけど、しかし、彼女のそれらの行為ですら本来のシナリオライター(元長柾木)の掌中でしかない(それを彼女も気が付いている)。だからこそ彼女は間違い無いのだし、それから逃れようと画策する。

元長柾木は、ゲームのキャラクターである飛鳥井全死に人格を与え、彼の箱庭なかで遊ばせる。それは神の視点か別のものなのかは判らない。ただ、作者の生み出そうとしてる世界がひどく歪で狂ったものであり、それを飛鳥井全死を通じて生み出そうとしているのではないか、と感じられるのである。
 
 
 
 
 
 
すいません、自分でもなにを言っているのかよくわかりません。

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『狂乱家族日記 弐さつめ』読了

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狂乱家族日記 弐さつめ』(日日日/ファミ通文庫)を読んだ。『うそつき~』よりもはるか前に読んでいたのに感想を書くのを忘れていたよ。いかんなあ。

と言ってもいつも通りの日日日であったとしか言いようがありません。キャラクターも立っていてその会話と絡み方が大変に愉快で気持ちよい。しかし、キャラクターが持っている哲学のあまりの幼さ、あるいは青さに対してあまり冷静な判断が出来ず、隔意を感じてしまうのもいつも通りでありました。

まあ、日日日を読むのにこの居心地の悪さと言うのはどうしても付いて回るもので、逆にこの感覚を求めて日日日を読んでいる、と言ってもそれほど過言ではないと思いさえする。それは(勝手な言い方になってしまうけど)日日日が抱えている問題と言うのが、かつての自分にとっても他人事では無い問題であった、と感じてしまうと言う事と無関係ではないだろう(実際はわからないけれども。僕の単なる思い込みの可能性も高い)。自分でも趣味が悪いとは思うけど、それらの問題を日日日がどのように処理しようとするのかに興味がある、という気持ちがあると言う事は否定できない事だ。勿論単純にもっと凄いものを書いてくれそうだと言う期待感もあるのだけど。

我ながら度し難い事だなあ。

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2005.08.06

『SWAN SONG』について

まーた、例によって大人のゲームの話だがお願い引かないで!帰ってきておかーさーん!

心の底からどうでもいい導入でスイマセン。吉兆です。
現在『SWAN SONG』と言うゲームをやっているんですが、これがまた大変なゲームでして。矢も盾もたまらず筆を取った次第。

いやあ、このゲーム、マジですげえ。18禁ゲームの癖にエロくないっつーのはある意味凄いけど、そんなに珍しくも無いかもしれない。凄いのは作品の根本にあるのが『とてつもなく強大で理不尽な人間の計り知れない何か、あるいは運命と呼ばれるもの』に対する反抗と言うものがあり、人間性の脆さと醜さとともにそれに立ち向かう人々を描いていると言うどこがギャルゲーやねんという基本骨格が凄すぎます。

突然の災害を前に無力ながらもお互いを支える仲間たちの出会いと友情、誤解と裏切りまでを描き方が大変に丁寧ですんばらしーっす。人間はくだらなくてどうしようもないけどやっぱり最高だ!お前ら最高だ!畜生!

とくかくとてつもなく僕好みに地味で丁寧な作品。一応パニックものの範疇に含まれる、極限状況に置かれた若者達のドラマ。でも地味だなあ…ヒーローいないしなあ…ラブコメもないしなあ(屈折した愛はあるけど)。でも登場人物たちがどれも好きになってしまった僕にとっては本当に魅力的なゲームになった。文体とか癖は強いけど、非常に頭の良い物語ですので、読書にすれた人ほど楽しめるような気がする。逆にあんまり長い文章を読むと眠くなる、という人はオススメできない…ってこのゲームは一体どういう層に向けて作られているんだ?僕か?

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『うそつき~嘘をつくたびに眺めたくなる月~』

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うそつき~嘘をつくたびに眺めたくなる月~』(日日日/新風舎文庫)を読んだ。あいたたたたたたたた。あまり正視したくない過去が否応なしに思い浮かぶ…。

高橋葉介のイラストも美しい表紙が目印だが、あまり内容に即した表紙では無いような…。と言うよりも、高橋葉介を起用した意味が良くわからん。

内容の系統としては、『私の優しくない先輩』のような超自然的な要素の無い恋愛小説と言っても良いでしょう。恋愛をする、という行為が良く理解出来ない女子高生、輝夜が主人公で、全身をハリネズミのようにささくれ立たせて威嚇し、周囲を傷つけまくる不器用な心を持て余した毎日を送っている。そんな彼女が自分の好きな相手を見つけるまでを描いた作品…なんだろうが、なんとも変な話だなあ(日日日の作品はみんなそうだけど…)。

大体、恋愛が全然出て来ない。どっちかと言うと、どうしようもなく不器用で自己中心的で周りが見えてなくて自意識ばかりが肥大化した主人公のどうしようもない内面描写が痛すぎるのが特徴か。思い返したくも無い自分の過去が思い出されて胸が痛いわ恥ずかしいやら。青い青い。確かに、高校生の時はこんな感じだったよなあ…。

はっきり言って、主人公の行動はマジでむかつくので、あやうくとても不愉快な読書になりかねないところだったけど、過去の自分を振り返りつつ、考えれば許容出来なくも無い。この辺は読者の好みによるのだろうが、主人公の悩みに共感できるのであればとても面白く読めると思う。僕でさえ、高校生の時に読んでいたらよく言ってくれた!と信者になっている可能性が高いものなあ。

かように主人公の痛々しさの描写は大変よいと思ったのだけど、相変わらず変てこな展開には目が点の状態になった。太陽君の設定とか、秋葉先輩の終わり方とかあんまりにも適当な演出で、明らかに行き当たりばったりで書いているとしか思えない超展開である。特に秋葉先輩は単に物語を閉じさせるためにだけ出演した感がむんむんであり、輝夜が自分の心に気が付く過程も、かなりいい加減で強引に感じてしまった。はっきり言って小説としてよく出来てると思うかと問われれば、力強く「?」と答えられる自信がある位だが、しかし、輝夜の内面描写や、そこから生まれる彼女の行動などの描写は素晴らしかったと思うので、全体としては大変に面白かったと言っても良いのかなあ(自信無い)。

でも、個人的な問題だけど、この本の中で書かれている事は、まだ僕にとって生々しい過去であるので、あまり冷静には読めていないようにも思う。肯定出来るほどには現在の問題ではなく、否定できるほどに過去ではない。面白いと思うんだけど不愉快にもなる。そんな据わりの悪さを感じてしまった(勿論つまらないわけでは全然無い)。
 
 
と、考えていたら、日日日作品を読んだ感想は、全部そんな感じだったなという気もしてくる。日日日という作家を、自分の中にどう位置付けるべきか今まで悩んでいたんだけど、そう言うことなのかなあ(戯言ですが)。

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2005.08.04

『サーラの冒険(5) 幸せをつかみたい!』読了

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サーラの冒険(5) 幸せをつかみたい!』(山本弘/富士見ファンタジア文庫)を読んだ。……くっ……涙で前が見えねえ…。

『サーラの冒険』シリーズの、待望の、新刊で、あります。なんと前作である4巻が出てから9年ぶり!!いやー待った待った。もうとっくの昔に新刊は出る事はないと諦めてかけていたけど、いやいや待ち続けてよかったなあ。

今ではソードワールド小説と言うのもほとんど読まなくなってしまったけど、学生の時には好きで色々読んでいたものです。その中でも格段にお気に入りであったこのシリーズ。何しろ果てしなく地味だ。もともとヒーロー性が高いソードワールドRPG世界の物語でありながら、主人公のサーラは、何のスキルも持たない村の少年Aだった。そんな彼が冒険者に憧れて、その身にいっぱいの知恵と勇気で困難に立ち向かうと言う、清く正しい冒険小説である。勿論、単なる子供であるサーラは、大人の世界で繰り広げられる本物の悪党と対峙したとしてもあまりに無力な少年である。しかし、そんな彼が精一杯の勇気で立ち向かい、大人たちの決まりごとを覆すと言う、あまりに夢物語で、そして何よりも大切な物語ではないかと思うのである。

実を言うと、9年ぶりに読む段階になって、もしかしたら昔のようには楽しめないのではないか、捻くれた読み方をしてしまうのではないか、と心配になってしまった。そのあまりの理想主義的な物語を、それなりに擦り切れた自分が拒否してしまう可能性は無いとは言い切れない、と思った。結果的には杞憂に終わったのは、かつての自分にも、今の自分にも嬉しいことだと思う。夢を見る事、夢を叶える事ってのをいつまで経ってもみずみずしく描ける山本弘は偉いと思う。大人としてはどうなのかは判らないけどね(でた、ネガティブ発言)。

内容については、ついに『サーラの冒険』も次の巻で完結だそうだ。復活した途端に完結とは寂しいが、そもそも次がいつ出るのかわからんしな…。また何年も待たされたらどうしてくれよう。投書でもするか。
それはともかくとして、ついに今まで伏線が張られまくったサーラの”呪い”が明らかにされ、恋人であるデルとのあまりにもつらい別れを経験してしまう。それは、今までのサーラの冒険で肯定してきた夢や希望の敗北であるとも読める。おそらくはサーラの冒険における最大の山場であると思う。このまま夢の敗北を受け入れるのか、それともさらに足掻くのか、最終巻が実に待ち遠しい(まあ、このまま終わるなんて事があるわけ無いけどね。山本弘だし)。

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『本日の購入物』

1.『働きマン(1)』 安野モヨコ 講談社
2.『スティール・ボール・ラン(5)』 荒木飛呂彦 集英社
3.『NARUTO(29)』 岸本斉史 集英社
4.『銀魂(8)』 空知英秋 集英社
5.『うそつき~嘘をつくたびに眺めたくなる月~』 日日日 新風舎文庫

淡々と仕事をして淡々と帰宅する毎日。やべえ、僕、ルーティンで仕事をしている!?
1.と言う危機感に駆られて安野モヨコを読むことにする。現状打破のヒントを求めて漫画を読む20代後半の男。萌え。うぜえ。うるせえ。
2.…なにこの表紙…。それはそれで衝撃的ですが、内容はさらに衝撃的であった。えーと、手の平に聖痕のある聖人って…それは勿論あのお方でございますわねえ?世界最強の武闘派宗教を敵にまわしかねないこの所業、さすが荒木先生、俺達が出来ない事を平然とやってのけるぅ!
3.暁の二人が使う術は、さすがに便利すぎるじゃないかと思いました。まる。
4.すげー、切れ目ないほどのギャグを仕込ませながらストーリーは超ド級のシリアス展開だよ!なんて奴だ、空知英秋…洒落抜きで凄すぎる。
5.日日日の新刊がまた出た…すっかり月刊作家として定着しつつあるなあ。今は才能の赴くままに書き続けてくれればいいんじゃないかと思います。どんどん行け。生きろ。

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2005.08.03

『サマー/タイム/トラベラー(2)』読了

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サマー/タイム/トラベラー(2)』(新城カズマ/ハヤカワ文庫JA)を読みました。おおおおおおおおおお、すっげー!

作者の言葉を借りるならば「宇宙人も、光線銃も、巨大怪物も、銀河帝国も、未来世界を闊歩する人造人間も」出てこない、それでありながら、紛れもなくSFジュブナイルでありました。現代を舞台にしておきながら、どこか懐かしい夏のある日。水準をはるかに越える賢さを持ちながら、不安定で未来に怯える高校生たちの一夏の出来事。その後の彼らを決定付ける出来事であり、同時にその後にいくらでもある出来事でもあった。輝かしく愚かだった日々への憧憬と、未来への勇気。そんな物語である。

この世ならぬ超常的な出来事に対して、無理矢理にでも理屈を構築するのがSFだと個人的には思っているのだけど、この作品はまさにそれ。時間跳躍と言う(SF的に)ありふれた現象を、宇宙的なスケールでもって理屈付け、理論を構築している。涼の時間跳躍理論や、響子が語る世界再構築論など、読んでいるだけでその緻密な理論には興奮させらてしまうのだけど、この作品のなによりも素晴らしいと思うのは、そんな高校生離れした主人公達による世界認識を巡る議論と同時に、不安定な少年少女たちの青春物語としても成立していると言う点だと思う。そして、それは単に平行しているだけではなくお互いが密接に結びついている。主人公の未来を確定させる事への恐れを、悠有のもつ時間跳躍という能力と対比させるさせる事でより切実ななにかを浮かび上がらせているように思った。

そしてラストシーンの美しさ。悠有と卓人の選んだ道とそれぞれの別れを描いたそのシーンは、冷静で知的でどこまでも感動的な場面だと思う。何よりも最後の最後、endの後に出てきた”地図”を見たときは、生まれた初めて地図を読んで涙が出た。なるほど、そのためにずっと地図を出していたんだな。脱帽だ。

実に良い本を読んだと思う。

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本日の購入物

1.『医龍(9)』 乃木坂太郎 原案:永井明 小学館
2.『疾走!千マイル急行(上)』 小川一水 ソノラマ文庫

1.うーん、面白い。大学病院の腐敗ぶりとそれに対比される朝田のヒーローっぷりが漫画的エンターテインメントとリアリティのギリギリのバランスをとった表現が最高だ。ここぞと言うところで迸る強引なまでのハッタリズムに大興奮です。
2.小川一水の新刊であります。もうすぐハヤカワ文庫からも発売されるはずなので、いやはや楽しみです。キャラクター小説的でありながら、厳密なデータと鳥瞰した物語の視点が、小川一水を並のライトノベル作家の枠内に留まらないスケール感をもたらしているように思う。

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2005.08.02

『ゼロの使い魔 <トリスタニアの休日>』読了

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ゼロの使い魔 <トリスタニアの休日>』(ヤマグチノボル/MF文庫J)を読んだ。まあ、相変わらずですな。

今回は、連作短編集の形式をとっていて、主人公達を含めたキャラクター達の関係図の見直しのお話になっている。才人とルイズのラブラブぶりやら、お姫様の立ち位置、キュルケとタバサの繋がりの強さなど、それぞれのキャラクターが持つ背景と現状を改めて説明し、次巻以降の展開につなげていこうと言うのだろう。それは、作者が今後の展開の上で必要な情報をえり分けていると言った印象すら覚え、それをわざわざ一冊かけてやってしまうところに作者のクレバーな部分と身も蓋も無い部分が垣間見えると思う。そのあまりにも流暢な解説振りに、ヤマグチノボルよ、あなたは小説を書くつもりが全然ありませんね?とか思った。

と書くとさすがに言いすぎかなと言う気がしてきたが(小心者)、要するに、ヤマグチノボルは自分の書く小説が短期間で読み捨てられ、消費される類のものであると言う事に自覚的であるということなのだろうと思うのだ(つまり、長期的な記憶に残るような作品ではなく、読者の中には前巻の物語をうろ覚えのまま読んでいたりするような本である、と言う認識を持っているという事)。ただ読者を楽しませるためのツールとして小説を利用しているに過ぎないとでも言うような割り切り方(スタンス)が、僕にとってヤマグチノボルが凄いと思う部分であり、嫌いだと思う部分でもあるのだ。僕は小説と言う媒体を愛しているので(言っちゃったよ…あーあ)、小説を書く事で表現したい”何か”があるようには思えないヤマグチノボルと言う小説家そのものはあまり好きではないのだな…。

ま、こんな事はあくまでも僕がそう感じているだけであって、実際の作者のスタンスは全然違うかも知れないんだけどね。なんだかんだ言っても、本自体は面白いと思うし。単なる趣味の問題です。
 
 
 
(あ、また内容について書きそびれた…)

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2005.08.01

『鬼刻~二人舞~』読了

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鬼刻~二人舞~』(城崎火也/スーパーダッシュ文庫)を読んだ。まあ面白い。なんか前回読んでから随分時間が経ってたような気がするが気のせいか。

内容については大体期待通りの面白さだったと思う。主人公が能力に覚醒して主人公らしい振る舞いをするようになったり、三角関係フラグ突如浮かび上がってきたりとテコ入れがあからさまではあるのだが、これはこれで判りやすい面白さにはなったのでは無いかな。次巻以降の修羅場への布石としては十分で、まさか鬼刻でこう言う楽しみ方ができるようになるとは思いませなんだ。

ただ、今回は伏線を張るための回のようで、事件そのものは実に投げやりな感じになってしまっているので、単品としてはやや不満が残るか。事件へ導入部分の御都合主義的な展開も相変わらずだし(だって怪しいやつを探して道を歩いていたらいきなり悲鳴が…ってのは…。こう言う展開を平然とやるところは逆に凄いところなのかもしれないが)、もうちょっと(少なくとも、僕のような口うるさい読者のツッコミを封じるぐらいには)細かいところまで気をつけて書いてくれるともっと面白くなると思うんだがなあ…。

余計なお世話な発言でした。

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