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2005.08.25

『平井骸惚此中ニ有リ 其五』読了

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平井骸惚此中ニ有リ 其五』(田代裕彦/富士見ミステリー文庫)を読んだ。この作者はたいしたものだなあ…。

LOVEオンリーの富士ミスの中で、ミステリーのラブコメの両立と言う実に難しい命題に対して、真面目に取り組んだ挙句にきちんと成功している稀有な作品であるのだが(他はLOVE方面に特化したり、そもそもミステリーを放棄しているケースが多い。全部じゃないけど)、何より人気のあるこのシリーズを人気のあるうちに完結させたと言うのが偉いなあ。なかなか出来る事じゃないね。

今回の事件は骸惚先生と太一君が別々の場所で起きた首切り事件に遭遇すると言う話。これだけでミステリマニアにはネタが割れかねんのだが、まあ大した影響はあるまい。このシリーズはミステリとしてのみではなく、キャラクター小説としても確かなもので、ミステリ部分を楽しめ無い人でも太一君の成長物語として読んでもいいし、ラブコメとして読んでもかまわない懐の深さがありますからね。

しかし、僕がこのシリーズで気に入っているのは、作品全体を通じて語られるモラルなのだ。モラルと言うと妙にいかがわしく聞こえるが(僕だけか)、要するに誠実さとも言えるものだ。それは骸惚先生が口をすっぱくして言っている『探偵は人を救う事など出来ない』と言う言葉と、それでも『人を救いたい』と言う太一君の倫理の葛藤に表れているように思う。しかし、この二人はその思いとは裏腹に、謎を解くことに甘美を覚え、犯人を糾弾する事に酔いしれると言う暗黒面を備えており、それは探偵の傲慢さそのものである。だからこそ骸惚は自らを抑えることで一家庭人としての立場を崩すことは無く、太一は涼や撥子を守るためにこそ推理を行おうとする。その今にも謎を弄ぶ暗黒に囚われかねない二人の葛藤と、彼らを支える女性たちが配置されることで、決して無欠のヒーローではないバランス感覚がとても心地よいと思うのである。

しかし、倫理と探偵の暗黒面を巡る物語は全然解決していなくて、むしろこれからが本番であろうと言う気がするので(太一君なんてようやく自覚してきた所だってのに…)、正直これで終わりってのは辛すぎる。何とか別の形式でかまわないから続いてくれないものか。河上太一君のピンでかまわないからさあ…。

まあ、そう言う勿体無いところで終わるのがちょうど良いのかもしれないけど。何はともあれお疲れ様でした。新シリーズにも期待しております。

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