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2005.08.03

『サマー/タイム/トラベラー(2)』読了

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サマー/タイム/トラベラー(2)』(新城カズマ/ハヤカワ文庫JA)を読みました。おおおおおおおおおお、すっげー!

作者の言葉を借りるならば「宇宙人も、光線銃も、巨大怪物も、銀河帝国も、未来世界を闊歩する人造人間も」出てこない、それでありながら、紛れもなくSFジュブナイルでありました。現代を舞台にしておきながら、どこか懐かしい夏のある日。水準をはるかに越える賢さを持ちながら、不安定で未来に怯える高校生たちの一夏の出来事。その後の彼らを決定付ける出来事であり、同時にその後にいくらでもある出来事でもあった。輝かしく愚かだった日々への憧憬と、未来への勇気。そんな物語である。

この世ならぬ超常的な出来事に対して、無理矢理にでも理屈を構築するのがSFだと個人的には思っているのだけど、この作品はまさにそれ。時間跳躍と言う(SF的に)ありふれた現象を、宇宙的なスケールでもって理屈付け、理論を構築している。涼の時間跳躍理論や、響子が語る世界再構築論など、読んでいるだけでその緻密な理論には興奮させらてしまうのだけど、この作品のなによりも素晴らしいと思うのは、そんな高校生離れした主人公達による世界認識を巡る議論と同時に、不安定な少年少女たちの青春物語としても成立していると言う点だと思う。そして、それは単に平行しているだけではなくお互いが密接に結びついている。主人公の未来を確定させる事への恐れを、悠有のもつ時間跳躍という能力と対比させるさせる事でより切実ななにかを浮かび上がらせているように思った。

そしてラストシーンの美しさ。悠有と卓人の選んだ道とそれぞれの別れを描いたそのシーンは、冷静で知的でどこまでも感動的な場面だと思う。何よりも最後の最後、endの後に出てきた”地図”を見たときは、生まれた初めて地図を読んで涙が出た。なるほど、そのためにずっと地図を出していたんだな。脱帽だ。

実に良い本を読んだと思う。

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