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2005.07.03

『塵骸魔京』雑感

『塵骸魔京』を読了(敢えてこう言う)。以下雑感。

・このゲームは、とても知的な作品だと思う。それは主人公の九門克綺が常に論理的思考を自己に課しているせいでもある。それと同時に、この物語全体通じて、決して一時の感情や思い込みだけで無理矢理話を進めようとしない”節度”のようなものが、僕に知的という印象を与えるのだと思う。ここで言う節度と言うのは、例えて言えばシナリオライターの羞恥心とか自尊心とでも言うべきものかも知れない。例えば主人公が街を護る事を決意する場面で、主人公はまず、自分の選択に対する徹底した意義討論を自己と行うあたりに表れているように思う。

・その知的さは、もしかするとファンが期待する「燃え」というものに対して相反しているものかもしれない、と思う(節度が生み出す物語は、いわゆるフィクションとしての荒唐無稽さを減ずる傾向があるのかも知れない)。正義と悪という対立項が存在しない世界で、愚かな正義と利己的な愛がぶつかり合う物語は決して爽快感があるとはいえないだろう。だが、僕が一番面白いと思うのはやっぱりそこになるわけで。特に、徹底した自分の行為への疑問、善も悪も混在したキャラクター達などにシナリオライターの誠実さが良く表れていると思った。ただその分、キャラクターの描き方には安易な記号化を許さない頑固さもあり、見た目に反していわゆる”萌え”も、まったくないとは言わないが、少ない(”風のうしろを歩むもの”なんかいい例だろう)。

・まあ、正直設定はあるけど消化し切れなかった部分もあって、ちょっと勿体ねえなあという所もないではないが、すべてを語り尽くされた物語ほど味気ないものはない。その部分は、きっと明かされないままで終わるのだろうが、それはそれでいいのかもしれないな…と言いたいところだが、さすがに牧本さんについてはひどいと思う。伏線までちゃんと張られているのに…。まあ、だからと言って『塵骸魔京 オルタナティブ』とかがでたら笑ってしまうが(だが多分出ないだろうなあ)。

・面白い物語が大好きな人にやってもらいたいゲーム。意外とSF好きな人には抵抗無く楽しめるのかもしれないな。逆に「萌え」も「燃え」もあまり無いので(そもそもそう言う話ではないと思う)、そう言うのを期待している人は注意が必要か。僕はニトロ作品の中では「Phantom of Inferno」の次ぐらいに面白いと思ったのだが。駄目か。

・あと、時々見かける感想に、”『あやかしびと』の方が文章力が上”と言うものがあるんですがそれはちょっと違うと思う。『あやかしびと』の文体は、いわゆるライトノベル的文体に準拠するものであり、デフォルメ表現や、砕けた文章を多用している。しかし、『塵骸魔京』の文章は、平易で奇をてらわない普通の小説の文体に近いものだと思う。そこには好みの差こそあれ、どちらが優れていると言うものではないのではないかなあ。ちなみに僕は『塵骸魔京』の文章の方が好きです。

・あ、書き忘れていたけど、このゲームのいわゆるエロスな場面の描き方には感心した。物語の流れを損なうことなく自然な導入であり、またその内容も単にヤっているだけじゃなくて(下品)、主人公とヒロインの関係の変化の過程を描いているのには感心した。まあつまり、そう言うシーンで、喧嘩したり仲直りしたり拗ねたり意外な一面が発見されたり臆病になったりする過程がちゃんと描かれている。いや、こう言うゲームでエロス場面をスキップしないゲームをやったのは久しぶり(エロゲーの存在意義を否定しているって?だって大抵のゲームで一番つまらないんだもん、エロシーン)。ゲラゲラ笑いながら楽しんでしまいました。

・萌えってよくわからねえなあ、という人。燃えってのもあからさまにやられる恥ずかしいよなあ、という人。面白い物語が好きな人(SF好きにも楽しめるかも)。エロゲーで一番いらないのはエロシーンだよなうん、という人。以上の方々にオススメです。

すいません。上の全部僕の事でした。

ちゃんちゃん(白亜紀時代のオチ)。

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