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2005.07.12

『折れた魔剣』読了

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折れた魔剣』(ポール・アンダースン/ハヤカワ文庫SF)を読んだ。おもしれー。

もう三十年も前の作品(実際に書かれたのはもっと前だが)ではあるが、まったく古びていないどころが普通に面白いと言う事実がまず驚愕。神話的でシンプルなキャラクター造型のために、当時の時代的な背景に囚われ難いというところが勝因かな。また、世界各国の神話体系を一つに纏め上げる荒業と、たった今、神話的と形容したキャラクター描写に人間的な側面を付与したバランス感覚が、未だに生き生きとした英雄譚として成立させているように思われる。というか、本当にすごい力技で、何しろエルフとオーディーンとトロールと鬼が同一世界に登場してくる世界だからなあ。どこかのサイトでも言っていたが、これは”スーパー神話対戦α”なんですよね。

取り替えっ子、憎しみ合う双生児、近親相姦、魔剣とまさに英雄的な物語でありながら、主人公達のどうしようもない人間臭さを見せているあたりが独特。まあ、このあたりは解説にも書かれているので割愛するとして、ただただ波乱万丈のファンタジーを楽しむことに徹するとしよう。僕が一番好きなのは、主人公スカフロクのライバルにして、宿命的に破壊と殺戮を行うヴァルガルドだったりする。様々な破壊をもたらすくせに、どこか心のどこかで破壊を嫌悪する彼は、運命と言う名の禍に翻弄されざるを得ない人間の悲しさが会って良いと思う。また、このあたりの描写は、全編を漂う神話的な雰囲気から外れてひどく人間臭い印象さえ与えられた。それが悪いわけではなく、むしろこの作品は、神話と人間の世界のまさに半ばの物語なのだと言う事が感じられるところだと思った。

僕の根っこの部分には、こう言う神話的なファンタジーを好む部分があって、それは小学生の時にそれらに触れてきた時間に由来する。それ以来、僕はこの世ならぬ幽世と現世の狭間に住まうものたちの物語に心引かれるようになっているのだなあ。この『折れた魔剣』を読んで、そんな事を思い出しました。

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